スタチン
スタチンについて
この記事の要点
このページの要点を先にまとめます。
筋肉の症状が出たときは、自己判断でやめずにご相談ください
スタチンでもっとも注意したい副作用は、筋肉の障害です。まれに横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)という重い状態に進むことがあり、次の症状がそろうときは早めの対応が必要です。
筋肉の症状が出たときの対応
軽い筋肉痛やだるさだけのときは、自己判断で中止せず、処方を受けている医療機関にご連絡ください。血液検査でCK(CPK)という筋肉の値を確かめれば、薬の影響かどうかを切り分けられます。運動のあとの筋肉痛や、かぜによる体の痛みと区別がつかないことも多いためです。
一方で、褐色尿をともなう強い筋肉痛や脱力があるときは、服用をいったん中止したうえで、その日のうちに受診してください。当院の診療時間外であれば、救急外来の受診もご検討ください。
中止すべきかどうか、別の薬に替えるか、量を減らすか、一日おきの服用にするかは、症状と血液検査をあわせて判断します。判断の材料をそろえるためにも、勝手にやめてしまう前にご連絡いただけると助かります。
スタチンとはどんな薬ですか
スタチンは、脂質異常症(高脂血症)の治療に使われる飲み薬のグループです。「スタチン系の薬」「スタチン系薬剤」とも呼ばれます。
スタチンの内服によって何が起きるのかを説明します。からだの中のコレステロールは、食事から取り込まれる分よりも、肝臓でつくられる分のほうが多いことが知られています。スタチンは、その合成の途中ではたらくHMG-CoA還元酵素という酵素をじゃますることで、肝臓でのコレステロールづくりを抑えます。その結果、肝臓は血液中からLDLコレステロールを多く取り込むようになり、血液中のLDLコレステロールが下がります。
英語ではstatin(複数形でstatins)と書き、正式にはHMG-CoA還元酵素阻害薬といいます。カルテや説明書でこの名前が出てきたら、同じ薬のことだと考えてください。「コレステロールを下げる薬」と説明されている場合、その多くはこのスタチンを指しています。
何のために飲む薬ですか(一次予防と二次予防)
スタチンはコレステロールの数値そのものを治す薬ではなく、動脈硬化が進んで起こる病気、つまり心筋梗塞・狭心症・脳梗塞などを起こりにくくすることを目的に使われます。数値は、その目的に近づいているかを見るための目印です。
「一次予防」と「二次予防」では、同じスタチンでも意味あいが変わります。
スタチンの種類と強さ(一覧)
スタチンの種類は、LDLコレステロールを下げる力がマイルドな「スタンダードスタチン」(マイルドスタチンと呼ばれることもあります)と、より強力な「ストロングスタチン」に分けられます。ストロングスタチンとは、少ない量でしっかり下げられるタイプのことです。国内で使われている主なものは次のとおりです。
| 分類 | 一般名(成分名) | 主な商品名 | 国内で販売されている錠剤の規格 |
|---|---|---|---|
| ストロング | ロスバスタチン | クレストール | 2.5mg・5mg(後発医薬品には10mgもあります) |
| ストロング | アトルバスタチン | リピトール | 5mg・10mg |
| ストロング | ピタバスタチン | リバロ | 1mg・2mg・4mg |
| スタンダード | シンバスタチン | リポバス | 5mg・10mg・20mg |
| スタンダード | プラバスタチン | メバロチン | 5mg・10mg |
| スタンダード | フルバスタチン | ローコール | 10mg・20mg・30mg |
規格は厚生労働省の医薬品マスタ(2026年8月版)に収載されている錠剤をもとにしています。実際に飲む量は規格とは別に決まり、1回に2錠飲むこともあります。ロバスタチンという成分名を見かけることがありますが、国内では販売されていません。
スタチンの効果はいつから出ますか
飲みはじめて2週間ほどでLDLコレステロールは下がりはじめ、4〜6週間ほどで下がり幅がほぼ落ち着くとされています。そのため、効果の判定は飲みはじめてしばらくたってからの血液検査で行います。
効果が出ていても自覚できる変化はありません。血圧の薬や痛み止めと違い、飲んで体調がよくなる薬ではないため、「効いている実感がない」ことは薬が効いていないことを意味しません。
スタチンの副作用について
「スタチンは危ない」「飲み続けて大丈夫なのか」といった情報を目にして不安になり、受診される方がいらっしゃいます。スタチンは長く使われてきた薬で、多くの方は問題なく続けられます。一方で、副作用のために飲み続けることがむずかしくなる状態があり、これをスタチン不耐といいます。スタチン不耐とは、効果がないという意味ではなく、副作用のせいで必要な量を続けられない状態のことです。
起こりうるものとして知られているのは、次の3つです。
筋肉の症状(筋障害)
もっとも多い相談が、筋肉の痛み・だるさ・こわばりです。副作用がいつから出るかについては、飲みはじめてから数週間のうちに出ることが多いとされますが、長期服用中に出ることもあります。
特徴として、左右そろって出ること、太ももや肩など体幹に近い大きな筋肉に出やすいこと、運動のあとの筋肉痛と違って休んでも引かないことが挙げられます。「足がつる」「こむら返りが増えた」という形で気づかれることもあります。
こうした症状があるときは、CK(CPK)という血液検査の値を確かめます。CKが上がっていなければ薬以外の原因を考え、上がっていれば量や種類の見直しを検討します。症状の多くは、薬を中止または変更すると数週間で軽くなっていきます。
まれに横紋筋融解症という重い状態に進むことがあります。頻度はきわめて低いものの、褐色尿をともなう強い筋肉痛や脱力があるときは急いで対応が必要です。上の「筋肉の症状が出たときは」の項目をご確認ください。
肝機能障害(肝障害)
スタチンによる肝機能障害は、飲みはじめて数か月のあいだに、AST・ALT・γ-GTといった肝臓の値が軽く上がるという形で見つかります。多くは症状がなく一過性で、飲み続けていても自然に落ち着いていきます。
なぜ肝臓の値が動くのかというと、スタチンが主に肝臓ではたらき、肝臓で分解される薬だからです。肝臓に負担がかかっていることを示すというより、薬が作用している場所の反応と考えられています。
値の上がり方が大きいときや、だるさ・食欲不振・白目や皮膚が黄色くなる(黄疸)といった症状をともなうときは、中止や変更を検討します。症状がない段階で見つけるために、定期的な血液検査を行います。
血糖への影響(糖尿病の発症リスク)
スタチンを飲んでいる方では、新たに糖尿病と診断される方がわずかに増えることが報告されています。もともと血糖が境界域にあった方が、診断の基準を超えるという形で現れることが多いと考えられています。
「スタチンを飲むと糖尿病になる」という言い方は正確ではありませんが、隠すべき話でもありません。心筋梗塞や脳梗塞を減らすという目的から見ると、その利益のほうが大きいと考えられており、現在も標準的な治療として使われています。
気になる方には、定期の血液検査で血糖やHbA1cもあわせて確認します。血糖が上がってきた場合も、スタチンをやめるのではなく、食事・運動や糖尿病側の治療で対応するのが基本です。
飲み合わせに注意が必要なもの
スタチンは、いっしょに飲む薬によって血液中の濃度が上がり、筋肉の副作用が出やすくなることがあります。次のものを使うとき、また新しく処方されるときは、スタチンを飲んでいることを必ずお伝えください。市販薬やサプリメントも同じです。
グレープフルーツは、薬の種類によって影響が違います
グレープフルーツは、腸や肝臓で薬を分解する酵素(CYP3A4)のはたらきをじゃまします。この酵素で分解されるスタチンでは、血液中の濃度が上がり、筋肉の副作用が出やすくなることがあります。
影響が大きいとされるのは、シンバスタチン(リポバス)とアトルバスタチン(リピトール)です。これらを飲んでいる方は、グレープフルーツやそのジュースを控えてください。ジュースを飲んでから時間をあければよい、という考え方は当てはまりません。
一方、ロスバスタチン(クレストール)、ピタバスタチン(リバロ)、プラバスタチン(メバロチン)は、この酵素での分解をあまり受けないため、影響は小さいとされています。ご自身がどれを飲んでいるかで対応が変わりますので、お薬手帳を確認するか、診察時にお尋ねください。
妊娠中・妊娠を希望される方は使えません
スタチンは、妊娠している方、妊娠している可能性のある方には使えません(禁忌)。コレステロールは胎児の発育に必要な材料であり、その合成を抑える薬だからです。授乳中も避けます。
妊娠を希望される方は、妊娠する前の段階でご相談ください。多くの場合は計画的に中止し、妊娠・授乳の期間は生活習慣による管理に切り替えます。中止しても、その期間の心筋梗塞や脳梗塞のリスクが急に高まるわけではありません。
妊娠に気づいたときにスタチンを飲んでいた場合は、自己判断で悩まず、すぐに医療機関にご連絡ください。
自己判断でやめないでください
スタチンをやめると、LDLコレステロールはおおむね数週間で服用前の値に戻ります。「数値が下がったから、もう飲まなくてよい」と考えて中止すると、下がった状態を保つことができません。下がったのは薬の効果が続いているからであって、体質が変わったわけではないためです。
とくに、心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがある方が自己判断で中止すると、再発のリスクが高まると考えられています。飲み忘れが続いたとき、副作用が心配になったとき、費用が負担に感じるときは、やめてしまう前にご相談ください。量を減らす、種類を変える、一日おきにする、ほかの薬と組み合わせるなど、続けるための方法があります。
効果が十分でないときは
スタチンには、量を2倍にしても下がり幅の上乗せがわずかにとどまるという性質があり、「6%ルール」と呼ばれています。肝臓での合成を抑えると、そのぶん腸からの吸収が増えるためと考えられています。そのため、量を増やし続けるのではなく、別のしくみではたらく薬を足すという考え方をとります。
よく用いられるのが、腸からのコレステロールの吸収を抑えるエゼチミブ(ゼチーア)です。しくみが違うため、組み合わせると下がり幅が大きくなります。1錠にまとめた合剤として、ロスーゼット(ロスバスタチン+エゼチミブ)、アトーゼット(アトルバスタチン+エゼチミブ)、リバゼブ(ピタバスタチン+エゼチミブ)があります。
中性脂肪が高い場合はフィブラート系やEPA製剤、家族性高コレステロール血症などでさらに強い治療が必要な場合はPCSK9阻害薬という注射薬が使われることがあります。これらは適応が限られるため、必要と判断した場合は専門の医療機関へご紹介します。
こんなときは早めに受診してください
次のような症状があるときは、次の受診を待たずにご相談ください。当院の診療時間外の場合は、救急外来の受診もご検討ください。
血液検査で確かめること
何を測るのか
スタチンを飲んでいる方の血液検査では、効果を見る項目と、副作用を見る項目の両方を確認します。
どのくらいの間隔で検査しますか
飲みはじめたあと、効果と副作用の両方を確かめるために一度採血を行い、その後は状態が落ち着いていれば間隔をあけていきます。実際の時期と項目は、飲んでいる薬、量、ほかの持病によって変わりますので、診察時にご説明します。
症状が出たときは、予定の検査を待たずに採血します。とくに筋肉の症状があるときは、CKを測ることで薬の影響かどうかを切り分けられます。
健診でコレステロールを指摘された方へ
健診でLDLコレステロールや中性脂肪の高値を指摘された段階では、すぐに薬が必要とはかぎりません。まず、どのくらいのリスクがあるのかを確かめ、食事や運動でどこまで変えられるかを見てから判断します。
脂質異常症そのものの説明や、健診で指摘されたときの進め方は、次のページにまとめています。
治療と当院の役割
当院での進め方
豊洲イーウェルクリニックでは、次のように診療しています。ご不安な点は診察時にお聞かせください。
すでに他院でスタチンを処方されている方へ
すでに他の医療機関でスタチンを処方されていて、通院先を変えたい方、通いやすさのために近くで続けたい方もご相談いただけます。お薬手帳と、直近の血液検査の結果をお持ちください。
現在の治療内容によっては、専門の医療機関での継続をおすすめすることがあります。とくに、心筋梗塞や狭心症の治療を受けたあとの方、家族性高コレステロール血症と診断されている方は、循環器や専門外来との併診が望ましい場合があります。
通院の負担を減らしたい方へ
状態が落ち着いている方については、オンライン診療で経過を確認し、処方を継続できる場合があります。血液検査が必要なタイミングでは来院いただき、それ以外の月はオンラインで、という組み合わせも可能です。適応の可否は診察のうえで判断します。
費用の目安
健康保険3割負担の場合の目安です。診療報酬点数と薬価から算出しています。診察の内容や検査の項目、お薬の種類によって変わります。
血液検査の費用には、月に1回だけ算定される判断料(生化学的検査の判断料)が含まれています。そのため、同じ月に2回目の採血を行う場合は判断料がかからず、費用は下がります。お薬代は1日1錠を30日分として計算した目安です。たとえばロスバスタチン錠2.5mg(後発医薬品)で約90円、クレストール錠5mg(先発医薬品)で約180円、リバロ錠2mgで約270円、エゼチミブとの合剤(ロスーゼット配合錠LDなど)で約450円です。このほかに処方箋料(約180円)と、調剤薬局でのお薬の受け取りにかかる費用が別に必要です。脂質異常症を主な病名として継続的に管理する場合には、月に1回、管理料が加わることがあります。実際の負担額は診察時にご確認ください。
よくある質問
スタチンはどれくらいで効果が出ますか+
筋肉痛が出ました。どんな痛みだと薬の副作用を疑いますか+
副作用はいつごろ出ますか。いつまで続きますか+
スタチンを長期服用しても大丈夫ですか。危険性はありませんか+
数値が下がりました。もうやめてよいですか+
スタチンで糖尿病になりやすくなるというのは本当ですか+
グレープフルーツは食べてはいけませんか+
妊娠を考えています。飲み続けてよいですか+
ストロングスタチンとスタンダードスタチンは何が違いますか+
ジェネリック(後発医薬品)に変えても効果は同じですか+
目標のLDLコレステロール値まで下がりません+
他院でスタチンを処方されています。こちらで続けられますか+
筋肉の痛みや肝臓の値が気になって、やめようか迷っている方が少なくありません。薬の影響かどうかは、症状の出かたと血液検査で切り分けられます。やめてしまう前に、一度ご相談ください。豊洲駅から徒歩3分、土日も診療しています。オンライン診療にも対応しています。
本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断と治療方針は診察のうえで判断します。記載している薬の種類や規格は厚生労働省の診療報酬・医薬品マスタ(2026年8月版)にもとづいており、実際に処方される薬や量は一人ひとり異なります。症状が強いときや長引くときは、記載にかかわらず受診してください。
監修医師 石川 浩雅(豊洲イーウェルクリニック)
本ページの内容は、上記の医師が監修しています。
2006年 国立国際医療センター 初期研修、2008年 同センター 後期研修。2011年 東京医科歯科大学 医療経営政策学。第一生命保険株式会社、株式会社Linc'well/クリニックフォア、医療法人社団シンシアエージェンシーを経て、2025年11月 東京都江東区豊洲に「豊洲イーウェルクリニック」開院。内科・皮膚科・アレルギー科を中心に、小児から泌尿器科領域まで幅広く診療しています。渡航ワクチンの接種にも対応しています。日本渡航医学会、日本旅行医学会、日本内科学会、日本アレルギー学会、日本産業衛生学会 所属。
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