不眠症(睡眠障害)
睡眠障害とは
不眠症は入眠障害(寝つくのに長く時間がかかる)、中途覚醒(一旦寝ても夜間に何度も目が覚める)、早朝覚醒(朝早く目が覚めてしまう)などの睡眠の障害から日中の眠気などの不調が出る病気です。3~5割程度の人が、これらの不眠症状を一過性に経験し、おおよそ1割の人が慢性的な不眠で悩むと言われています。
睡眠障害の原因は?
睡眠障害は1つの原因だけでなく、複数が重なって起こることも少なくありません。
- 身体の影響:痛み・かゆみ、呼吸器や循環器の病気、睡眠時無呼吸症候群など
- 心理の影響:うつ・不安障害・ストレス反応 など
- 薬剤・嗜好品:カフェイン、ニコチン、アルコール、ステロイド、交感神経刺激薬 ほか
睡眠障害の種類は?
❶ 不眠症
『夜になかなか寝つけない』、『途中に何度も目が覚める』、『朝早く目が覚めてしまう』といった不眠症状により日常生活に支障をきたします。
❷ 過眠症/過眠障害
夜は十分睡眠をとれていても日中に強い眠気が生じ目覚めている状態が困難が生じます。
❸ 概日リズム障害
体内時計のリズムがずれてしまうことで、1日の中で望む時間帯に眠れず不適切な時間帯に眠気が生じることで日常生活に支障を来します。
❹ 睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が止まってしまうことにより十分な睡眠をとることができず睡眠不足な状態となり、日中の眠気を生じます。
❺ むずむず脚症候群・レストレスレッグス症候群
脚が『ムズムズする』、『痛がゆい』などの間隔がありベッドのなかでじっとしていることができず睡眠不足となります。
❻ 睡眠時随伴障害
睡眠中に歩き回る、泣き叫ぶなどの体験を睡眠時随伴症と呼びます。
不眠症の特徴は?
不眠症状はストレスを契機に出現・増悪しやすく、入眠困難/中途覚醒/早朝覚醒が代表的です。放置すると抑うつや生活習慣病の悪化につながることもあるため、早めの評価と対処が大切です。
不眠症の治療は?
まずは問診や検査により他の病気が睡眠障害の原因となっていないか診断を行います。他の睡眠障害ではないと診断された場合には不眠症として治療を開始します。
不眠症の治療はまずは生活習慣の見直しを行います。
|
環境作り |
日中にできるだけ日光を浴びて体内時計を調整します |
|
運動や食事など |
適度な運動習慣を身に付け日中に体を動かすことは入眠を促進し睡眠時間を増やします。 |
|
嗜好品 |
カフェインの摂取は1日400mg(コーヒー700ml程度)を超えないようにします |
生活衛生のみで症状が改善しない場合は薬物療法を検討します。
睡眠薬で治療を行っている場合生活習慣や睡眠環境が保たれ不眠症に伴う症状がなくなったら徐々に薬の量を減らしていきます。
睡眠薬による治療は?
睡眠薬に対して怖いイメージがあるかもしれませんが、医師と相談しながら治療を行うことで適切な治療を行えます。万が一副作用が出てもすぐにご相談をいただければ症状にあったお薬を提案させていただきます。
薬の種類による違い
睡眠薬には脳の活動を抑えて睡眠を促す薬(非ベンゾジアゼピン系、ジアゼピン系)と自然な眠気を強める薬(オレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬)に分類されます。
|
種類 |
薬剤名 |
効果 |
|
オレキシン受容体拮抗薬 |
デエビゴ |
脳の覚醒に寛容するオレキシンというホルモンを阻害し自然な眠気を誘導します |
|
メラトニン受容体作動薬 |
ロゼレム |
睡眠と覚醒のリズムを整え、睡眠を促します |
|
非ベンゾジアゼピン系 |
アモバン |
依存性耐性の少ない睡眠薬です |
|
ベンゾジアゼピン系 |
レンドルミン |
脳の興奮を抑え、不安・緊張を和らげることで、不眠の改善を図ります |
効果の時間による違い
|
作用時間 |
薬剤名 |
|
超短時間型 |
ゾルピデム ゾピクロン エスゾピクロン |
|
短時間型 |
ブロチゾラム ロルメタゼパム リルマザホン |
|
中時間型 |
フルニトラゼパム 二トラゼパム エスタゾラム 二メタゼパム |
|
長時間型 |
クアゼパム フルラゼパム ハロキサゾラム |
不眠症のタイプによる処方例
- 入眠障害:超短時間型~短時間型・オレキシン受容体拮抗薬
- 中途覚醒:短時間型~長時間型・オレキシン受容体拮抗薬
- 早朝覚醒:中間型~長時間型・オレキシン受容体拮抗薬
睡眠の質のタイプによる処方例
- 熟眠障害:ロゼレム・ベルソムラ・グービビック・鎮静系抗うつ薬・抗精神病薬
- 悪夢:三環系抗うつ薬
- 睡眠覚醒リズム障害:ロゼレム
- 慢性的な不眠では、依存を防ぐために作用時間が長い睡眠薬やオレキシン受容体拮抗薬を中心に使用します。一時的な不眠では、非ベンゾなど作用が短く効果の実感しやすいものを使用します。
当院の睡眠障害に対する治療方針
まず初診ではしっかりとお話を伺い、寝られなくなったきっかけや具体的な症状について睡眠障害の評価を行います。
依存性や転倒などのリスクが非常に少ない睡眠薬が処方できるようになりました。睡眠障害のタイプやお困り事やご要望に応えながらよりよい睡眠治療をご提案させていただきます。
ナルコレプシー(過眠症)や睡眠時随伴症などにより専門的な検査治療が必要と考えられる場合は専門医療機関をご紹介いたします。
よくある質問
睡眠薬にはどのような副作用がありますか?
眠気やふらつき、頭痛、倦怠感、精神・運動機能の低下などが挙げられます。特に高齢者の場合、眠気やふらつきは転倒や骨折につながることがあるので注意が必要です。
薬は毎日飲んだほうが良いですか?
慢性不眠症の場合には眠れないままでいると、睡眠薬を服用すれば良いかどうかで悩んでしまい、かえって覚醒度が高くなり眠れなくなる原因ともなります。不眠症状や服薬の頻度によっては連日内服をする
今飲んでいるお薬との飲み合わせが心配です
睡眠薬は種類によって、生活習慣病のお薬や風邪薬(抗生物質)や抗うつ薬と一緒に服用すると、効果が強まる、あるいは弱まる、また、副作用が出現する可能性もあります。
お薬の飲み合わせを考慮し、適切な処方を行いますので受診の際は現在服用されているお薬をお伝えください。
睡眠薬をやめられなくなってしまわないか心配です
まずは睡眠衛生や睡眠薬により睡眠のリズムを整え、不眠症状を改善を目指します。睡眠薬には依存が非常に少ない薬もあるためご希望を伺いながらお薬を処方いたします。
効果が不十分と感じて、ご自身の判断でお薬の量を増やすと、不眠症状が悪化したり、服用をやめにくくなる可能性があります。
翌日に眠気が残ることが心配です
翌日に眠気が残る場合には、睡眠薬の種類や量、睡眠のとり方を確認します。
睡眠時間に合わせた睡眠薬の種類や、適した量を処方いたしますので万が一翌日の眠気がある場合はご相談ください。
睡眠薬はいつやめることができますか?
夜の不眠症状ならびに日中の心身の調子が改善し一定期間安定していれば減薬および休薬を試みます。十分な改善しないうちにお薬をやめてしまうと再発や悪化することもあります。
睡眠薬は急激に中止すると反跳性不眠といって逆に不眠症状が悪化することがあるため時間をかけて段階的に薬を減らしていきます。
