アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は慢性的に痒みを伴う皮膚炎(湿疹)症状が左右対称に出現し、慢性的によくなったり、悪くなったりを繰り返すのが特徴の疾患です。患者さんの多くはアトピー素因(家族歴や喘息、アレルギー性鼻炎など)を持っています。
アトピー性皮膚炎はどのような病気ですか?
アトピー性皮膚炎は以下の3つの特徴から診断を行います。
❶ かゆみがある
❷ 皮膚症状や発症部位がアトピー性皮膚炎に特徴的
❸ 慢性で繰り返し起こっている
アトピー性皮膚炎は「皮膚バリア機能異常」と、免疫の異常によって起こる「アレルギー炎症」、「かゆみ」の3つの要素が互いに関連しながら発症することがわかってきました。そのため、治療も三位一体で考えていくことが重要となってきました。
アトピー性皮膚炎の重症度とコントロールの程度は?
アトピー性皮膚炎では以下のような状態を目指すことを目標にしています。
- 症状がない状態、あるいはあっても日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態
- 軽い症状はあっても、急に悪化することはなく、悪化してもそれが続かない状態
単に湿疹がよくなっているかのみではなく、痒みや睡眠の妨げなどの日常生活への影響、血液検査による客観的な評価も併せて総合的に判断することで治療方法を選択し、効果の評価を行っていきます。
❶湿疹が落ち着いているかの評価(EASI)
皮疹の範囲・赤み・浮腫/ブツブツ・掻破痕/苔癬化・落屑を部位ごとに点数化します。
❷患者さん自体の治療の評価(ADCT)
かゆみ・睡眠・日常生活・治療満足度など、直近1〜2週間の自己評価でコントロールを点検します。
❸ 血液検査による評価(TARC)
血中TARC(CCL17)はTh2炎症の指標。病勢の客観的指標として用います
アトピー性皮膚炎はどのように治療しますか?
アトピー性皮膚炎では炎症を抑えために『寛解導入』のための治療を行い、その後に炎症を抑えた状態を維持する『寛解維持』の治療を継続していくことが重要です。
- STEP 1
- かゆみや湿疹、炎症を速やかに抑えるための治療
- STEP 2
- かゆみや湿疹、炎症を再燃させないための段階的治療
- STEP 3
- 皮膚をよい状態に保つためのスキンケアを中心とした治療
アトピー性皮膚炎の治療は「薬での治療」「スキンケア」「悪化させる原因の対策」の3つを組み合わせて行います。
アトピー性皮膚炎の外用薬
ステロイド外用薬
ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎の基本となる薬剤です。症状の強さや部位を考え、適切な強さの薬を、十分な量、適切な範囲、適切な期間塗ることにより安全に使用していただくことができます。
ステロイド以外の外用薬
ステロイド外用薬は炎症を押さえる作用があり、皮膚炎が改善することでかゆみも改善します。
❶ プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)
プロトピック軟膏はTh2細胞活性化を抑えるなどアレルギー反応を抑えることによりアトピー性皮膚炎によるかゆみや赤みなどの湿疹を抑える薬です。
❷ コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)
JAK阻害薬という塗り薬でIL-4やIL-13 、IL-31といった炎症やかゆみを引き起こすサイトカイン産生のために信号を送るJAK/STAT経路に働きかけ症状を改善します。
❸ モイゼルト軟膏(ジファミラスト)
ホスホジエステラーゼ4(PDE4)の活性を阻害し細胞で炎症および抗炎症に関与する物質の発現を調節することにより、皮膚の炎症を抑えてアトピー性皮膚炎の症状を改善します。
❹ ブイタマークリーム(タピナロフ)
芳香族炭化水素受容体(AhR)を活性化することにより、さまざまな遺伝子に働きかけ、皮膚の炎症を抑制し皮膚バリア機能を改善します。
アトピー性皮膚炎の全身療法
生物学的製剤
生物学的製剤は中等度以上の方に使用します。2-4週間に1回の注射で良いため治療継続がしやすい、副作用が非常に少なく安全に治療を行えることが特徴です。
❶ デュピクセント(デュピルマブ)
IL-4とIL-13をブロックすることでアトピー性皮膚炎に伴う炎症の引きがねとなる信号をブロックします。
慢性じんま疹、気管支喘息や鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎にも適応があるためこれらの合併症がある方に特に選択されます。
❷ イブグリース(レブリキズマブ)
IL-13をブロックすることでアトピー性皮膚炎に伴う炎症の引きがねとなる信号をブロックします。4週間に1回の投与も可能であることが特徴です。
❸ ミチーガ(ネモリズマブ)
アトピー性皮膚炎に伴うかゆみが強い方に対する薬です。
JAK(ジャック)阻害薬
JAK阻害薬はかゆみや湿疹の改善の効果が早いこと、さまざまなポイントに作用ができること、内服用量の調整が可能なことが特徴です。連日内服が必要で治療開始前や治療中に定期的な検査を行う必要があります。
❶ オルミエント(パリシチニブ)
❷ リンヴォック(ウバダシチニブ)
❸ サイバインコ(アプロシチニブ)
アトピー性皮膚炎 全身療法の比較
保湿剤
アトピー性皮膚炎では皮膚がドライスキンになっているため、湿疹がない部位に対しても保湿剤を使用してスキンケアを行うことが重要です。
アトピー性皮膚炎の悪化要因と対策
アトピー性皮膚炎は汗や洋服の刺激、紫外線など複数の外的な刺激によって悪化するケースがあります。また、ダニやハウスダストなどのアレルゲンが炎症の原因となっていることもあります。
このため、アトピー性皮膚炎の悪化の原因となっている外的な刺激やアレルゲンを正しく把握して対策をすることが重要です。
よくある質問
アトピー性皮膚炎は治りますか?
アトピーの経過にはいくかのパターンがあることが分かっています。
自然寛解(症状が落ち着いて安定した状態)に関しては2、3歳頃からみられ、8~9歳頃で50%、16歳には全体の約90%が自然寛解したとの報告があります。
小児のアトピー性皮膚炎の治療は?
小児でも基本は大人と同じく「①炎症を素早く抑える」「②寛解を維持する」「③スキンケアと悪化因子対策」を組み合わせます。年齢・部位に合わせて薬の強さと適応を慎重に選びます。
成人と同様に複数のステロイド以外の塗り薬や注射薬が使えるようになりました。
