日常生活に困るほどの汗が出てしまう病気です。全身に汗が増加する全身性多汗症とワキなどの体の一部に汗が増える局所多汗症があります。多くは10代頃(平均発症年齢13.8歳)に症状が現れはじめ、学校生活にも支障をきたしていることもあります。

この疾患による症状に悩んでいても病気として認識されていないことも多いのが特徴ですが、多汗症は皮膚科で健康保険を使った治療が可能な病気です。

多汗症の原因は？

《部位による違い》

❶ 全身性多汗症：からだ全身に症状が出現する

❷ 局所性多汗症：体の一部のみに汗が増える

手掌多汗症	足底多汗症	頭部・顔面多汗症	腋窩多汗症
約493.1万人	約258.1万人	約434.8万人	約531.9万人
13.8歳	15.9歳	21.2歳	19.5歳
• 紙が汗でにじんでしまう • 握手ができない • 汗でスマートフォンやパソコン の操作がしにくい • スポーツや楽器などが制限され てしまう	• 靴下がびしょびしょになる • 靴の替えが必要 • 友達の家にあがれない、靴を脱ぐ 飲食店に行けない • 夏でもサンダルは履けない	• 隠すことができないのがつらい • 人と会うのが苦手になり避けてしまう • 美容院に行きにくい • いつもタオルを持ち歩かないといけ ない	• 洋服の色、素材が限定される • 夏場でも薄着になれない • 手を挙げにくい • 臭いが気になる

病気や薬により多汗が生じる病気を続発性多汗症と言います。

 

全身性	薬剤性，薬物乱用，循環器疾患，呼吸不全，感染症，悪性腫瘍，内分泌・代謝疾患（甲状腺機能亢進症，低血糖，褐色細胞腫， 末端肥大症，カルチノイド腫瘍），神経学的疾患（パーキンソン病）
局所性	脳梗塞，末梢神経障害，中枢または末梢神経障害による無汗からおこる他部位での代償性発汗（脳梗塞，脊椎損傷，神経障害，Ross syndrome） Frey 症候群，味覚性発汗，エクリン母斑，不安障害，片側性局所性多汗（例：神経障害，腫瘍）

多汗症はどのように診断しますか?

局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6ヵ月以上認められ、以下の2項目以上があてはまる場合を多汗症と診断します。

❶ 発症が25歳以下である

❷ 左右対称性に発汗がみられる

❸ 睡眠中は発汗が止まっている

❹ 週1回以上の多汗のエピソードがある

❺ 家族歴がみられる

❻ それらによって日常生活に支障をきたす

多汗症の重症度

スコア	自覚症状
1	発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
2	発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
3	発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
4	発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある

問診と既往症などから続発性多汗症が疑われる場合はそれぞれの疾患を診断するための検査を行います。

原発性腋窩多汗症はどのように治療しますか？

原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版ではまず、塩化アルミニウム液の外用もしくは抗コリン薬の外用薬を行い、改善効果に乏しい場合ボツリヌス毒素局所療法を実施することが勧められています。

抗コリン薬外用薬としては2020年にエクロックゲル、2022年にラピフォートワイプが発売となり保険診療での治療の幅が広がりました。
ラピフォートワイプもエクロックゲルも神経からの汗をだす指令をブロックすることで過剰な脇汗を抑える薬です。

マルホホームページより引用

エクロックゲル

無色からやや黄色みかかったゲル状の製剤の塗り薬で、皮膚から吸収されることで発汗を促す物質をブロックすることで過剰な発汗を抑えます。

投与6週間後には半数以上の患者さんが発汗量は約半減し、約2/3の方が多汗症の重症度の改善が認められています。

ラピフォートワイプ

皮膚から吸収されることで発汗を促す物質をブロックすることで過剰な発汗を抑えます。1回使い捨てのワイプ製剤のため簡便にかつ衛生的に使用することができます。

投与4週間後には9割程度の患者さんが発汗量は50％以上減少し、約40%の方が多汗症の重症度の改善が認められています。

ラピフォートワイプの使い方

マルホより引用

エクロックゲルとラピフォートワイプの違いを教えてください

エクロックゲル、ラピフォートワイプともに汗を促す物質をブロックすることにより発汗を抑制します。使用方法だけではなく適応となる年齢や薬価も異なります。どちらのタイプが適しているか、またご自身のご希望のタイプが使用可能かなど、ぜひ医師とご相談ください。

	エクロックゲル	ラピフォートワイプ
	ソフピロニウム臭化物	グリコピロニウムトシル酸塩水和物
使用方法	ゲルを塗る	薬液を含んだ不織布で拭く
容器	ボトル	ワイプ
手洗い	不要	必要
価格  (2週間分)	20gボトル 9,704円（3割負担：約2,900円)	14包 7,336円（3割負担：約2,200円）
適用年齢	12歳以上	9歳以上

副作用

• 口の渇き
• 接触性皮膚炎（かぶれ）
• 尿が出にくい、尿の勢いが弱い、尿が近い
• 体温調整の異常

原発性手掌多汗症の治療は？

アポハイドローション

 

アポハイド®ローション20%は手のひらの皮膚から吸収され、皮膚の下にある交感神経から 出される発汗を促す物質をブロックすることで、過剰な発汗を抑えることが期待されます。

アポハイドローションの使い方

久光製薬より引用

その他の多汗症の治療薬

❶ 塩化アルミニウム製剤：皮膚表面にある汗の出口を塞ぐことで発汗を抑えます。重症度が高い場合は、お薬を塗った後にフィルムで覆い密封することがあります。

❷ プロ・バンサイン：飲んで多汗症に作用するお薬です。

主な副作用として、口の渇きや便秘、目のかすみなどがあります。

❸ グランダキシン(トキソファム)：多汗症への保険適用はありませんが、自律神経症状に対して保険適用。

❹ボトックス治療：多汗症の部位に複数カ所、注射します。

ボツリヌス菌が作るボツリヌス毒素が神経細胞内で作用し、発汗指令物質のアセチルコリンが神経の外に出られないようにします。

❺ その他：水道水イオントフォレーシスや手術治療　などがあります。

よくある質問