カビアレルギー-アステルナリア・アスペルギルス
カビアレルギーと、原因になるカビの種類
はじめに、「カビのアレルギー」と「カビの感染症」は別のものです
カビアレルギーとは、カビ(かび)の胞子を吸い込んだことで起こるアレルギー反応のことです。カビは医学用語では真菌といい、真菌アレルギーとは同じものを指します。カビに関係する病気には、大きく分けて二つの系統があります。ひとつはカビの胞子を吸い込んだり触れたりして体がアレルギー反応を起こす「カビアレルギー(真菌アレルギー)」。もうひとつはカビそのものが皮膚や粘膜、肺に住みついて増える「真菌感染症」です。原因になるカビの名前が重なるため混同されやすいのですが、検査も治療もまったく違います。
このページで扱うのは前者、吸入アレルゲンとしてのカビです。水虫やいんきんたむし、爪水虫、カンジダ症といった真菌感染症をお探しの方は、下のリンク先のページをご覧ください。
| 観点 | カビアレルギー(真菌アレルギー) | 真菌感染症 |
|---|---|---|
| 起きていること | カビの胞子に対して体が過剰に反応する | カビが皮膚や粘膜、肺に住みついて増える |
| 主な症状 | くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ・咳・喘鳴・湿疹やかゆみ | 皮膚のじくじく・輪状の発疹・爪の白濁や肥厚・かゆみ・おりものの変化 |
| 調べかた | 血液検査(特異的IgE抗体)、皮膚プリックテスト | 皮膚や爪を少し採って顕微鏡で真菌を見る検査、培養 |
| 治療 | 原因を減らす、抗アレルギー薬、喘息や鼻炎の治療 | 抗真菌薬(塗り薬・飲み薬) |
抗真菌薬はカビの感染症を治す薬で、カビアレルギーの治療薬ではありません。「カビのアレルギーだから抗真菌薬を飲めばよい」ということにはなりません。
カビアレルギーではどんな症状が出ますか
カビの胞子は花粉よりも小さく、一年を通して空気中に浮いています。吸い込むことで鼻・目・気道にアレルギー症状が出るほか、皮膚に湿疹やかゆみとして出ることもあります。カビアレルギー症状は花粉症やダニアレルギーとよく似ているため、症状だけでカビが原因と決めることはできません。
特徴があるとすれば、梅雨から夏、そして秋にかけて悪くなる、掃除や換気扇の掃除・エアコンの使い始め・押し入れを開けたときに症状が出る、古い建物や地下、水回りに入ると鼻がむずむずする、といった出かたです。
| 部位 | カビアレルギーでみられる症状 |
|---|---|
| 鼻 | くしゃみ/さらさらした鼻水/鼻づまり/においがわかりにくい |
| 目 | 目のかゆみ/充血/涙が出る/まぶたの腫れ |
| 気道 | 咳が長引く/ゼーゼー、ヒューヒューという音(喘鳴)/息苦しい/気管支炎をくり返す |
| 皮膚 | かゆみ/湿疹・皮膚炎/発疹/肌荒れ/じんま疹(蕁麻疹) |
| そのほか | のどのイガイガ感/鼻がつまることによる頭重感や寝苦しさ |
すべてが出るわけではありません。鼻の症状だけの方、皮膚の症状だけの方もいます。カビアレルギーの症状が皮膚に出ているのか、別の皮膚の病気なのかは、実際に皮膚を診察して判断します。
アレルギーの原因となるカビの種類
日本は湿度が高く、住宅の気密性と断熱性も高いため、室内に多くの種類のカビが生息しています。アレルギーの原因として知られているカビを、生えている場所と関係しやすい症状で整理しました。俗称(クロカビ、アオカビ、ススカビ、コウジカビなど)は、同じカビを指していることが多いので併記しています。
屋外のカビと室内のカビでは、飛ぶ時期の性質が違います。屋外のカビには季節性があり、室内のカビは一年中います。両方に反応している方は、季節の波と家の中の状況の両方を見ていく必要があります。
| カビの名前(俗称) | どこにいるか | 関係しやすいこと |
|---|---|---|
| クラドスポリウム(クロカビ、黒カビ、Cladosporium) | 浴室・トイレ・台所などの水回り、結露した窓やサッシ、エアコン内部。牧草地などの土のなかにもいて、6月と9〜10月に屋外で多く飛びます | もっとも検出されることが多い室内のカビ。アレルギー性鼻炎、気管支喘息 |
| アルテルナリア(ススカビ、Alternaria alternata) | おもに屋外。土や落ち葉、枯れた植物、農地。6月をピークに4月から10月にかけて飛びます。室内では水回りや観葉植物の土にも | 喘息、とくに小児喘息の重症化との関連が知られています。アレルギー性鼻炎 |
| アスペルギルス属(コウジカビ、Aspergillus) | 室内のほこり、エアコン、加湿器、布団や畳、押し入れ、土。発酵食品づくりにも使われる仲間です | 喘息、アレルギー性鼻炎、ABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症) |
| ペニシリウム(アオカビ、青カビ、Penicillium) | 果物や野菜、パン、餅の表面。壁紙の裏、押し入れ、暖房や換気の設備の内部 | アレルギー性鼻炎、気管支喘息 |
| マラセチア | 皮膚の常在菌。皮脂の多いところ(頭皮・顔・胸背部)にいます | アトピー性皮膚炎の悪化因子、脂漏性皮膚炎。環境中にはいないため鼻炎や喘息とは通常関係しません |
| カンジダ | 皮膚・口や消化管・腟の常在菌 | アトピー性皮膚炎の重症度との関連が報告されています |
| トリコフィトン(白癬菌) | 足の皮膚や爪。水虫、いんきんたむしの原因菌です | まれに喘息やじんま疹の原因になることがあります |
| ムコール | 果物などの食品、土 | 気管支喘息。免疫が落ちている方では感染症を起こすことがあります |
| ヘルミントスポリウム | オート麦、トウモロコシ、イネ科の草、サトウキビなどの植物 | 屋外性。アレルギー性鼻炎、気管支喘息 |
| ビール酵母(酵母菌) | パン、ビール、発酵食品 | 湿疹、アレルギー性鼻炎、気管支喘息の原因になることがあります |
「白カビ」「緑カビ」といった呼びかたは色による俗称で、複数の種類が含まれます。検査で調べるのは色ではなく、上のような菌の名前ごとの項目です。なお、このページのURLには「アステルナリア」という表記が残っていますが、これは以前の誤記です。正しくは「アルテルナリア」です。「アルテリナリア」「アルタナリア」「アルテナリア」「アルタネリア」「アルテルナリヤ」、ひらがなの「あるてるなりあ」も同じカビを指す書き間違いとしてよく見かけます。
アルテルナリア(ススカビ)とは
アルテルナリアとは、土や枯れた植物、農地などに広くいる屋外性のカビです。日本語ではススカビと呼ばれます。胞子がカビのなかでは大きいことが特徴で、大きい胞子は気管支の奥まで届きにくく鼻の粘膜に付きやすいため、まずアレルギー性鼻炎として症状が出やすいと考えられています。
アルテルナリアがどこにいるかというと、屋外では畑や芝生、落ち葉、園芸の土。室内では観葉植物の土、湿った窓枠、エアコン内部などです。飛ぶ時期は4月から10月で、6月ごろにピークがあり、秋にもう一度増えます。「梅雨と秋に鼻炎や咳が悪くなる」という方はアルテルナリアが候補になります。
臨床的にもっとも重要なのは喘息との関係です。アルテルナリアに感作されていることは、喘息の発症、そして喘息の重症化と関連することが知られており、とくに小児喘息で重視されています。お子さんの喘息がなかなか落ち着かないときには、調べておく価値のある項目です。
なぜアルテルナリアのアレルギーになるのかというと、屋外に大量にいて、日常的に胞子を吸い込んでいるためです。特別な環境にいなくても感作は起こります。
アルテルナリアの検査が陽性と出た場合、まずは症状があるかどうかを確認します。症状がなく陽性なだけであれば「感作されている」状態で、いますぐ治療する必要はありません。症状がある場合は、鼻炎や喘息の治療とあわせて、屋外の土ぼこりを避ける工夫や室内の湿度管理を行います。
アスペルギルス(コウジカビ)とABPA
アスペルギルスとは、室内のほこり、エアコン、加湿器、布団、押し入れ、土などにごくふつうにいるカビの仲間です。アスペルギルス属(Aspergillus)のカビにはたくさんの種類が含まれ、日本語ではまとめてコウジカビと呼ばれます。味噌・醤油・日本酒・甘酒づくりに使われるニホンコウジカビ(アスペルギルス・オリゼー、Aspergillus oryzae)もこの仲間です。
アレルギーの立場から重要なのは、屋内のカビとして多いアスペルギルス・バーシカラー(Aspergillus versicolor)と、ABPAの原因になるアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)です。喘息の患者さんの一部でアスペルギルスに対する感作がみられます。
ABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性気管支肺真菌症とも呼びます)は、気管支のなかで増えたアスペルギルスに対して強いアレルギー反応が起こる病気です。喘息の治療をしているのに発作がおさまらない、粘り気の強い茶色や褐色の痰が出る、レントゲンで影が出たり消えたりする、といったときに疑います。喘息が難治のときに見つけておきたい病態で、当院では総IgEとアスペルギルス特異的IgEを測って手がかりを探します。
なお、肺アスペルギルス症(慢性肺アスペルギルス症、アスペルギルスによる肺炎など、肺にカビの塊ができたりカビが住みついたりする病気)は、アレルギーではなく感染症のグループです。名前が似ていますが別の病気で、診断と治療には胸部CTなどの精密検査が必要になるため、疑わしいときは連携している病院にご紹介します。
マラセチア・カンジダと皮膚の症状
マラセチアは皮膚の常在菌で、皮脂の多い頭皮・顔・胸や背中にいます。常在菌アレルギーという言いかたをされることもあります。だれの皮膚にもいるカビですが、これに対するアレルギー反応がアトピー性皮膚炎の悪化因子になることが知られています。とくに顔や首、頭皮の湿疹がなかなか良くならない成人のアトピー性皮膚炎で問題になります。脂漏性皮膚炎ともマラセチアが関係します。
よくいただくご質問に「マラセチアのアレルギーで鼻炎になりますか」というものがあります。マラセチアは皮膚の上にいて空気中には浮いていないため、吸い込むことによるアレルギー性鼻炎や気管支喘息の原因にはふつうなりません。マラセチアが関わるのは皮膚の症状です。
カンジダも皮膚・口のなか・腸・腟にいる常在菌です。カンジダに対する感作は、アトピー性皮膚炎が重い方で多いことが報告されています。ただし、検査が陽性であっても「カンジダ症になっている」という意味ではなく、常在菌に対する抗体があるということです。
皮膚にカビが原因の症状が出ているのか、アレルギーとして出ているのか、あるいはかぶれや別の湿疹なのかは、見た目だけでは区別がつかないことがあります。当院は皮膚科も併設していますので、皮膚の状態を実際に診察したうえで判断します。
季節と場所 ― いつ、どこで悪くなるか
カビは一年中いますが、増える時期には波があります。第一のピークは梅雨から夏で、湿度が上がり室内のカビが一気に増えます。第二のピークは秋で、屋外のアルテルナリアやクラドスポリウムが増えるほか、夏のあいだに増えた室内のカビが暖房や結露で舞い上がります。冬でも結露と加湿器のせいで症状が続く方がいます。
場所としては、浴室・洗面所・台所などの水回り、エアコンの内部、押し入れやクローゼット、加湿器のタンク、窓のサッシや壁の結露部分、布団やマットレスの裏、観葉植物の土、古い畳、地下や物置が代表的です。
観葉植物の土からカビのアレルギーが出ますかというご質問はよくあります。鉢の土の表面には白いカビが生えることがあり、水やりのときに胞子が舞います。症状との関係が疑われる場合は、鉢を寝室に置かない、土の表面を無機質の材料で覆う、受け皿に水をためないといった工夫をします。
| 時期 | 起きやすいこと |
|---|---|
| 4〜6月(梅雨) | 屋外でアルテルナリアが増え始め、室内でも湿度上昇でカビが急増。エアコンの使い始めに症状が出やすい |
| 7〜8月(夏) | 冷房による結露と室内外の温度差。浴室や台所のカビが最も増える時期 |
| 9〜10月(秋) | 屋外のアルテルナリア・クラドスポリウムが再び増加。ブタクサなどの花粉と重なり原因がわかりにくい |
| 11〜3月(冬) | 結露と加湿器。窓際・押し入れ・寝具まわりのカビ |
花粉症と時期が重なるため、秋の鼻炎がカビによるものか花粉によるものかは症状だけでは区別できません。血液検査で両方を同時に調べると整理がつきます。
カビアレルギーがあると、食べ物を避ける必要がありますか
よくいただくご質問です。結論からお伝えすると、吸い込むカビのアレルギーがあるからといって、発酵食品やきのこを避ける必要は基本的にありません。
アスペルギルス(コウジカビ)の仲間は味噌・醤油・日本酒・甘酒に、ペニシリウム(アオカビ)はブルーチーズなどの青カビチーズに使われています。ただし、吸入によるアレルギーと、食べたときに症状が出る食物アレルギーは別のしくみで起こります。これまで普通に食べられているものを、検査結果だけを理由にやめる必要はありません。
一方で、実際にブルーチーズや発酵食品、きのこを食べたあとに、口のかゆみ・じんま疹・腹痛・息苦しさが出たことがある方は別です。その場合は食物アレルギーとして改めて調べます。食べたもの、食べてから症状までの時間、そのときの状況をメモしてお持ちください。
なお、カビが生えてしまった食品(パンや餅の青カビ、水筒のパッキンの黒カビなど)は、アレルギーの有無にかかわらず口に入れないでください。カビの種類によっては毒素をつくるものがあります。
すぐに受診・救急要請が必要な症状
カビのアレルギーで全身のアナフィラキシーを起こすことはまれですが、喘息の発作は起こりえます。次のような症状があるときは、様子を見ずにすぐに医療機関を受診してください。呼吸が苦しい、意識がはっきりしない場合は救急要請をしてください。
検査と、数値の見かた
血液検査で調べられるカビの項目
何が原因かを確かめるには、アレルゲンごとの抗体(特異的IgE抗体)を血液検査で調べます。カビについては、アルテルナリア、アスペルギルス、カンジダ、マラセチア、クラドスポリウムといった項目が一般に測定できます。ペニシリウム、ムコール、トリコフィトン、ヘルミントスポリウム、ビール酵母も項目として用意されています。
健康診断などで使われるMASTのようなまとめて調べる検査には、アルテルナリアとアスペルギルスが含まれています。個別に調べたい場合は項目を選んで測定します。喘息をお持ちの方には、悪化要因になりうるカビをまとめた成人喘息セットのような組み合わせをお勧めすることがあります。
一度に多くの項目を調べられますが、健康保険で算定できるのは13項目までと決められています。カビだけで13項目を使い切るのではなく、症状の出かたと生活環境をうかがったうえで、ダニ・花粉・ペットなども含めて必要な項目を選びます。
血液検査の結果は後日のご説明になります。採血したその日に結果をお伝えすることはできません。
| 検査項目 | どんなカビか |
|---|---|
| アルテルナリア | ススカビ。屋外性。喘息との関連が強い項目です |
| アスペルギルス | コウジカビ。ABPAを疑うときの中心となる項目です |
| クラドスポリウム | クロカビ。室内でもっとも多く検出されるカビです |
| ペニシリウム | アオカビ。室内、食品の表面 |
| カンジダ | 皮膚や粘膜の常在菌 |
| マラセチア(癜風菌) | 皮膚の常在菌。アトピー性皮膚炎の悪化因子 |
| トリコフィトン | 白癬菌。水虫の原因菌 |
| ムコール | 食品や土に生えるカビ |
| ヘルミントスポリウム | イネ科植物につく屋外性のカビ |
| ビール酵母 | 酵母菌。パンやビール |
いくつかのカビをまとめて1項目として測る「カビミックス」のような項目もあります。1項目として数えられるため項目数の節約になりますが、陽性のときにどのカビが原因かがわからないという弱点があります。当院では、症状から見当がついているときは個別の項目で調べることが多いです。実際にどの項目が測定できるかは検査会社の取り扱いによって変わることがあります。
数値とクラスの見かた ― 陽性と言われたら
特異的IgE抗体の結果は、測定値(UA/mL)と、それを7段階に区分したクラス0〜6で報告されます。クラスが上がるほど、そのカビに対する抗体が多いことを示します。
「アスペルギルスの数値が高いと言われました」「アルテルナリアが陽性でした」というご相談は多いのですが、大切な点をお伝えすると、クラスの数字は体がそのカビをどれだけ強く認識しているかを表すもので、症状の重さとそのまま比例するわけではありません。クラス6でもほとんど症状のない方がいますし、クラス2でも生活に困る方がいます。
判断のしかたは単純です。症状が出ていて、かつその項目が陽性であれば、そのカビが原因である可能性が高いと考えます。症状がないのに陽性なだけであれば「感作されている」状態で、いま何かをする必要はありません。逆に検査が陰性でも、症状の出かたが典型的であればカビアレルギーとして治療を始めることがあります。
ただし、アスペルギルスの数値が高いときだけは別の見かたをします。喘息をお持ちの方でアスペルギルスの値が高い場合は、ABPAの可能性を考えて総IgEもあわせて確認します。
| クラス | 測定値(UA/mL) | 判定 |
|---|---|---|
| クラス0 | 0.34 以下 | 陰性 |
| クラス1 | 0.35 〜 0.69 | 疑陽性 |
| クラス2 | 0.70 〜 3.49 | 陽性 |
| クラス3 | 3.50 〜 17.4 | 陽性 |
| クラス4 | 17.5 〜 49.9 | 陽性 |
| クラス5 | 50.0 〜 99.9 | 陽性 |
| クラス6 | 100 以上 | 陽性 |
検査機関や測定法によって区分の呼びかたが異なることがあります。お手元の結果用紙の基準値もあわせてご確認ください。
皮膚プリックテスト
当院では皮膚プリックテストを実施しています。腕の皮膚にアレルゲンの液を1滴たらし、専用の細い針で軽く刺して、15分後に皮膚の反応(膨疹)の大きさを見る検査です。
血液検査と違い、その日のうちに結果をご説明できます。痛みはごく軽く、お子さんでも受けられます。血液検査が陰性なのに症状が続く場合や、結果を早く知りたい場合の選択肢になります。
どのアレルゲン液を使えるかは在庫の状況によりますので、カビの項目で実施できるかどうかは診察のときにご相談ください。
喘息が隠れていないかを院内で確かめます
カビアレルギーで当院がもっとも重視しているのが、喘息の合併の確認です。カビは喘息の原因および悪化因子として知られており、鼻の症状だけだと思っていた方に軽い喘息が隠れていることがあります。カビで喘息になりますかというご質問への答えは、なりうる、です。
見つけずに放置すると、発作を起こしてから救急を受診することになります。逆に見つけて治療を始めれば、日常生活のなかで症状を抑えられることが多くなります。当院では次の二つの検査を院内で実施できます。どちらも息を吸って吐くだけで、痛みはありません。
| 検査 | 何がわかるか | 所要時間 |
|---|---|---|
| 呼吸機能検査(スパイロメトリー) | 息の吐きやすさを測り、気道が狭くなっていないかを調べます。気管支拡張薬の前後で比較することもあります | 5〜10分 |
| 呼気NO検査(FeNO) | 吐く息に含まれる一酸化窒素の濃度から、気道にアレルギーの炎症が起きているかを調べます | 数分 |
掃除やエアコンをつけると咳が出る、梅雨や秋に咳が長引く、夜中や明け方に咳で目が覚める、かぜのあと咳だけが残る、階段や坂道で息が切れるようになった。ひとつでも当てはまる方は、鼻の症状だけのつもりでもこの二つを受けておく価値があります。
喘息が難治のとき ― ABPAを疑う検査
吸入ステロイドをきちんと使っているのに喘息が落ち着かない、粘り気の強い茶色い痰が出る、たびたび肺炎のような影を指摘される。こうしたときにはABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)を考えます。
手がかりになるのは、総IgE(非特異的IgE)が非常に高いこと、アスペルギルス特異的IgEが陽性であること、末梢血の好酸球が増えていることです。当院ではこの三つを採血で確認できます。総IgEは特異的IgEとは別の項目で、13項目の上限とは別に測定します。
ここで手がかりが得られた場合は、胸部CTや喀痰の検査、アスペルギルス沈降抗体などの精密検査が必要になります。その段階で連携している病院にご紹介します。当院の役割は、喘息が難治な方のなかからABPAを疑うべき方を採血で拾い上げ、適切な段階でつなぐことです。
調べられないもの
誤解の多いところなので、はっきりお伝えします。ご自宅の空気やエアコンにどれくらいカビがいるかを測る検査は、医療機関で行う検査ではありません。住環境のカビの測定は専門の事業者が行うもので、保険診療の対象にもなりません。当院で調べられるのは、あくまで患者さんの体がどのカビに反応しているかです。
また、血液検査で調べられるのはカビの種類ごとの抗体で、そのカビをどこで吸ったかまではわかりません。どこで悪くなるかを知るには、いつ・どこで・何をしているときに症状が出たかというご本人の記録がいちばんの手がかりになります。受診前に数日分でもメモしてお持ちいただくと、検査の選びかたも結果の解釈も精度が上がります。
治療と、室内のカビ対策
カビアレルギーは治りますか ― 治療の考えかた
カビアレルギーの治療は、原因となるカビを減らすこと、薬で症状をおさえること、合併している鼻炎や喘息、皮膚炎をきちんと治療すること、の三つを組み合わせて考えます。
大事な点を先にお伝えします。カビに対する舌下免疫療法は、日本国内には存在しません。当院はダニとスギ花粉の舌下免疫療法を行っていますが、カビについては同じ治療を行うことができません。カビアレルギーの治し方について、体質そのものを変える治療は現時点で選択肢にありません。自然に治るかというご質問もいただきますが、環境を整えることと症状をおさえる治療が中心になります。
そのぶん、環境の見直しの効きめが大きくなります。カビは湿度を下げれば増えないという性質があり、対策の効果が症状に返ってきやすいアレルゲンです。
お薬による治療
症状をおさえるためには、アレルギー性鼻炎や気管支喘息の標準的な治療を行います。カビアレルギー専用の薬というものはなく、他のアレルゲンによる鼻炎や喘息と治療の中身は同じです。
鼻の症状には抗ヒスタミン薬の飲み薬と鼻噴霧用ステロイド薬、鼻づまりが強い場合はロイコトリエン受容体拮抗薬を用います。目のかゆみには点眼薬を使います。咳や喘鳴がある場合は吸入ステロイド薬を中心とした喘息の治療を行います。皮膚の症状には塗り薬を中心に、かゆみに対して飲み薬を併用します。
市販薬でも一時的に症状はやわらぎますが、原因を確かめないまま使い続けると、喘息が隠れていることや別の病気を見逃すことがあります。症状が毎年くり返す場合は一度検査を受けてください。
お薬は症状が出ているあいだおさえる治療で、体質を変えるものではありません。
室内のカビを減らす具体的な方法
カビ対策の原則はひとつだけです。湿度を下げること。カビは湿度が60パーセントを超えると増え始め、70パーセントを超えると一気に増えます。逆にいえば、湿度を50パーセント前後に保つだけで多くの場所のカビは抑えられます。
場所ごとにやることが違います。すべてを完璧に行う必要はありませんので、症状が出やすい場所から手をつけてください。多くの方にとっては、寝室とエアコン、浴室の三か所が優先度の高い場所になります。
また、カビは乾燥・日光・熱に弱い性質があります。台所や浴室の小物は時々日光にあて、煮沸できるものは煮沸しましょう。
| 場所 | やること |
|---|---|
| 浴室 | 入浴後に冷水をかけて温度を下げ、水気をふき取る。使用後は換気扇を回し続ける。ボトルや椅子は床から浮かせる |
| エアコン | シーズンの始めと終わりにフィルターを掃除する。使用中も2週間に1度を目安に。冷房のあとは送風運転で内部を乾かす。内部の洗浄は専門業者に依頼する |
| 加湿器 | タンクの水は毎日入れ替え、内部を洗う。加湿しすぎない。設定は50パーセント前後に |
| 押し入れ・クローゼット | ときどき開けて風を通す。すのこを敷いて床から浮かせる。詰め込みすぎない |
| 寝具 | 布団を敷きっぱなしにしない。ふとん乾燥機や天日干しで湿気を抜き、掃除機をかける |
| 窓・壁の結露 | 結露をふき取る。カーテンや家具を壁から少し離す。断熱シートを使う |
| 台所・冷蔵庫 | 排水口とゴミ受けをこまめに洗う。冷蔵庫の中は定期的に整理する |
| 観葉植物・水槽 | 寝室には置かない。受け皿に水をためない。土の表面に白いカビが出たら取り除く |
| 生えてしまったカビ | 放置せず速やかに取り除く。掃除のときはマスクと手袋を着け、換気しながら行う |
カビ取り剤を使うときは、必ず換気をして、塩素系と酸性の製品を混ぜないでください。カビ取り剤そのものでかぶれや喘息発作を起こす方がいます。掃除のあいだに症状が出る場合は、ご家族に代わってもらうか、マスクを着けて短時間で行ってください。
空気清浄機は効果がありますか
よくいただくご質問です。空気清浄機は、空気中に浮いているカビの胞子をある程度は減らせます。HEPAフィルターを備えた機種を、症状が出る部屋(多くは寝室)で連続して使うことが前提です。
ただし、空気清浄機だけでカビアレルギーの症状がなくなるわけではありません。カビが生えている場所そのものをそのままにしていては、胞子が供給され続けます。あくまで湿度管理と掃除が主役で、空気清浄機はそれを補うものと考えてください。
また、空気清浄機や加湿機能付きの機種そのものの内部にカビが生えることがあります。フィルターとタンクの手入れを説明書のとおりに行ってください。手入れをしていない機種は、かえってカビをまき散らすことになります。
症状が重いとき・喘息を合併しているとき
吸入薬をきちんと使っても喘息の症状がおさまらない重症の方には、生物学的製剤という注射の治療があります。当院ではゾレアやデュピクセントなどの生物学的製剤を扱っており、重症の喘息に使うことができます。
対象になるかどうかは、症状の程度、これまでの治療内容、血液検査の結果などから判断します。適応がある場合には、費用や通院の頻度も含めてご説明します。
また、アトピー性皮膚炎が重く、マラセチアなどの悪化因子が絡んでいる場合にも、外用薬に加えて選択肢があります。診察でご相談ください。
お薬の副作用と注意点
抗ヒスタミン薬では眠気、口の渇き、まれに倦怠感がみられることがあります。運転や機械の操作をされる方は、種類によって注意が必要ですので必ずお申し出ください。
鼻噴霧用ステロイド薬では鼻の中の刺激感や乾燥、まれに鼻血がみられることがあります。ロイコトリエン受容体拮抗薬では頭痛や腹部の不快感、まれに気分の変化が報告されています。
吸入ステロイド薬では、うがいをしないと口の中にカンジダ(口腔カンジダ症)が出ることがあります。吸入後は必ずうがいをしてください。口の中が白くなる、しみる、味がおかしいといったときはご相談ください。
塗り薬のステロイドは、部位と期間を守って使えば安全に使えますが、自己判断で長く続けると皮膚が薄くなることがあります。処方時に使う場所と期間をご説明します。
お薬を始めてから、発疹が出た、顔が腫れた、息が苦しくなったといった場合は、服用を中止してすぐにご連絡ください。
費用の目安
健康保険3割負担の場合の目安です。実際の費用は検査する項目数や処方する内容によって変わります。
初診料291点、再診料76点で計算しています。アレルギー血液検査は特異的IgE抗体1項目110点で、健康保険で算定できるのは13項目までです。13項目分1,430点に免疫学的検査判断料144点を加えた1,574点が3割負担で約4,720円になります。総IgE(非特異的IgE定量)は100点で、特異的IgEと同じ日に採血する場合は判断料が重複しないため追加分は約300円です。皮膚プリックテスト(皮内反応検査)は21箇所以内で1箇所16点、22箇所以上は1箇所12点で、これに使用するアレルゲン試薬の薬剤料が加わります。呼吸機能検査(スパイロメトリー)は判断料を含めて335点、呼気NO検査は判断料を含めて295点として計算しています。お薬の欄は薬剤料のみの目安で、診察料・調剤料は別にかかります。症状がない状態でご希望による検査は自費診療となります。2026年8月時点の診療報酬・薬価にもとづく目安です。
よくある質問
アルテルナリアとは何ですか。どこにいますか。+
アルテルナリアが飛ぶ時期はいつですか。+
検査でアルテルナリアが陽性、アスペルギルスの数値が高いと言われました。どうすればよいですか。+
カビのアレルギー検査は何項目まで測れますか。どの項目が測れますか。+
カビアレルギーは治りますか。舌下免疫療法はありますか。+
カビで喘息になりますか。咳が続くのはカビのせいですか。+
空気清浄機を買えばカビアレルギーは良くなりますか。+
エアコンをつけると症状が出ます。何をすればよいですか。+
観葉植物の土や、鉢に生えた白いカビはアレルギーの原因になりますか。+
カビアレルギーがあると、ブルーチーズや甘酒、味噌、きのこは食べられませんか。+
アルテルナリアやカビのアレルギーでニキビのようなブツブツが出ますか。+
カビアレルギーで皮膚に湿疹やかゆみが出ますか。マラセチアやカンジダとの関係は。+
皮膚に生えるカビ(水虫)と、カビアレルギーは同じものですか。+
子どもの喘息が落ち着きません。カビの検査をしたほうがよいですか。+
カビアレルギーは何科を受診すればよいですか。+
梅雨や秋に鼻炎と咳がひどくなる、掃除やエアコンで症状が出る、検査でアルテルナリアやアスペルギルスが陽性と言われた。どの段階でもご相談ください。何に反応しているのかを血液検査や皮膚プリックテストで確かめ、喘息が隠れていないかを呼吸機能検査とFeNOで院内で確認したうえで、家の中の対策とお薬をご提案します。豊洲駅から徒歩3分、土日も診療しています。
本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断と治療の方針は、症状・年齢・生活環境・検査結果をふまえて診察のうえで判断します。記載は2026年8月時点の情報です。強い症状が出たときは、記載にかかわらず救急要請をしてください。
監修医師 石川 浩雅(豊洲イーウェルクリニック)
本ページの内容は、上記の医師が監修しています。
2006年 国立国際医療センター 初期研修、2008年 同センター 後期研修。2011年 東京医科歯科大学 医療経営政策学。第一生命保険株式会社、株式会社Linc'well/クリニックフォア、医療法人社団シンシアエージェンシーを経て、2025年11月 東京都江東区豊洲に「豊洲イーウェルクリニック」開院。内科・皮膚科・アレルギー科を中心に、小児から泌尿器科領域まで幅広く診療しています。渡航ワクチンの接種にも対応しています。日本渡航医学会、日本旅行医学会、日本内科学会、日本アレルギー学会、日本産業衛生学会 所属。
