首のしこり
受診の目安
首のしこり・リンパの腫れの多くは、かぜやのどの炎症のあとに起こる一時的なものです。ただし次のような特徴があるときは、様子をみずに一度診察を受けてください。がんやリンパの病気かどうかは、見た目や触った感じだけでは判断できません。
このリストは受診のきっかけを整理したもので、診断ではありません。当てはまらない場合でも、気になる状態が続くときや、ご自身で確かめようがなくて不安なときは受診してください。逆に、当てはまる項目があっても、感染に伴う一時的な腫れであることは少なくありません。
首のしこりとは
首のしこりは「どの層のものか」で考えます
首にしこりが触れる、首が腫れる、喉のしこりが気になる。首の腫れという言い方も、首のリンパが腫れているという言い方も、指しているものはたいてい同じです。表現はさまざまですが、そのしこりは大きく3つの層のどれかにあります。どの層のものかで、原因も、必要な検査も、その後の進め方も変わります。
皮膚・皮下のしこりは、つまむと皮膚と一緒に動きます。粉瘤(表皮嚢腫)や脂肪腫、毛穴の感染などが代表です。リンパ節のしこりは、皮膚の下で指の腹からつるりと逃げるように動きます。首のしこりでもっとも多いのがこれです。首の奥の臓器のしこりは、甲状腺や唾液腺(耳下腺・顎下腺)が腫れているもので、のどぼとけの下や耳の下、顎の下という決まった位置に触れます。
首のしこりを「リンパ腺の腫れ」と呼ぶことがありますが、これはリンパ節の古い言い方で、同じものを指しています。医療機関の記録では、首のリンパ節が腫れている状態を頸部リンパ節腫脹(けいぶリンパせつしゅちょう)、炎症を起こしている状態を頸部リンパ節炎と書きます。
| どの層か | 触れ方の特徴 | 代表的なもの |
|---|---|---|
| 皮膚・皮下 | 皮膚をつまむと一緒に動く。中央に黒い点が見えることがある | 粉瘤(表皮嚢腫)、脂肪腫、毛包炎・せつ |
| リンパ節 | 皮膚とは別に、指の下でよく動く。コリコリ、グリグリと表現されます | 反応性リンパ節腫脹、急性リンパ節炎、悪性リンパ腫、転移性リンパ節 |
| 首の奥の臓器 | のどぼとけの下、耳の下、顎の下など決まった位置。飲み込むと動くものもある | 甲状腺の結節・腫大、唾液腺の腫れ(耳下腺・顎下腺) |
実際には触っただけで層を見分けられないことも多く、超音波(エコー)検査で確かめます。
首のリンパ節はどこにありますか(首リンパの位置)
首のリンパ節は一か所にまとまっているのではなく、顎の下から鎖骨の上まで、いくつかのグループに分かれて並んでいます。それぞれのグループは、体のどこからのリンパ液を受け取っているかが決まっています。だからこそ、触れる位置が原因を絞り込む手がかりになります。
健康な人でも、首のリンパ節が触れること自体はめずらしくありません。やわらかく、よく動き、1cmに満たない程度であれば、それだけで異常とは考えません。
「首の上のほう」「首の下のほう」「首筋に沿って」「首の付け根」など、感じ方は人によって違います。首のリンパが腫れているのか、首の奥の臓器が腫れているのかも、位置によって変わります。どの言い方でも構いませんので、触れる場所を指で示していただければ、そこがどのグループにあたるかは診察で確かめます。
触れる位置から考えられること
下の表は、しこりが触れる位置と、そこに関係しやすい原因の対応です。あくまで考える順番であって、位置だけで病気が決まるわけではありません。
| 触れる位置 | リンパの流れてくる場所 | よくある原因 |
|---|---|---|
| 顎の下(顎下リンパ節) | 口の中、歯ぐき、舌、唇 | 歯の感染、口内炎、扁桃やのどの炎症 |
| 耳の前(耳介前リンパ節)・耳の下 | 頭皮の前側、まぶた、耳 | 皮膚の感染、ネコひっかき病。耳の下の腫れは唾液腺(耳下腺)のこともあります |
| 首の横・首筋に沿って(前頸部リンパ節・上深頸リンパ節) | 喉(のど)、扁桃、上気道 | 風邪、咽頭炎、扁桃炎、伝染性単核球症。扁桃腺のそばに並ぶため扁桃リンパ節と呼ばれることもあります |
| 首の後ろ・髪の生え際(後頸部リンパ節・後頭リンパ節。後頚部リンパ節とも書きます) | 頭皮、うなじ | 頭皮の湿疹やかぶれ、しらみ、風疹、菊池病 |
| 首の付け根・鎖骨のすぐ上(鎖骨上窩リンパ節) | 胸のなか、おなかのなか | ここは首のなかでも注意が必要な位置です。触れるときは検査をおすすめします |
| のどぼとけの下(甲状腺) | 首の奥の臓器です | 甲状腺の結節、亜急性甲状腺炎、橋本病・バセドウ病による腫れ |
首の付け根や鎖骨の上に触れるしこりは、胸やおなかの病気を反映していることがあるため、ほかの位置より慎重に扱います。首の付け根と一口に言っても、鎖骨の上なのか、首の横の下のほうなのかで意味が変わりますので、診察で確かめます。
押すと痛いしこりと、痛くないしこり
診察でもっとも多いご質問が「押すと痛いけれど大丈夫か」です。押すと痛いということは、しこりの中で炎症が起きていて、袋(被膜)が急に引き伸ばされていることを示します。急に腫れた、押すと痛い、数日前にのどが痛かった、という組み合わせは、感染に反応した腫れであることが多いパターンです。
反対に、痛くないのにはっきり触れて、硬くて動かず、少しずつ大きくなるものは、痛みがないぶん気づくのが遅れます。悪性リンパ腫や、ほかのがんが転移したリンパ節では、痛みを伴わないことがあります。
ただし、痛みの有無だけで良性か悪性かを決めることはできません。菊池病のように痛みを伴う良性の病気もあり、悪性リンパ腫でも大きくなる過程で痛みが出ることがあります。痛みは手がかりのひとつであって、決め手ではありません。
良性と悪性の見分け方の目安
首のしこりが良性か悪性かは、触った感じだけでは決められません。診察では次のような点をみて、様子をみてよいか、すぐに調べるべきかを判断します。ご自身で確認するときの目安としてご覧ください。
| みるところ | 反応性の腫れに多い | 精密検査をすすめることが多い |
|---|---|---|
| 大きさ | 1cm前後まで | 2cmを超える |
| 硬さ | 弾力がある、ゴムのよう | 石のように硬い |
| 動き | 指で押すとよく動く | 動かない、皮膚や奥とくっついている |
| 痛み | 押すと痛い | 痛くない |
| 経過 | 数日から2〜3週間で小さくなる | 変わらない、または大きくなる |
| 数と場所 | 片側に1個から数個 | 鎖骨の上、数珠のように連なる、両側に多発 |
| ほかの症状 | のどの痛みや発熱など感染の症状に伴う | 体重減少、寝汗、原因のはっきりしない発熱が続く |
この表は受診の目安であって、診断ではありません。実際には超音波検査でリンパ節の形と内部の構造をみて、必要に応じて血液検査を行い、それでもはっきりしないときは組織の検査ができる施設にご紹介します。表の右側に当てはまるからといって悪性と決まるわけではなく、左側だからといって安心してよいわけでもありません。
首のしこりを起こす主な病気
リンパ節が腫れるものが最も多く、次に皮膚・皮下のできもの、甲状腺や唾液腺の腫れと続きます。
触ってはいけない、というわけではありませんが
気になって何度も強く押したり、揉んだりすると、しこりの周りが腫れて痛みが強くなることがあります。粉瘤を自分でつぶすと、細菌が入って化膿し、治るまでの時間が長くなります。
大きさの変化を知りたいときは、日を決めて指で軽く触れる程度にしてください。同じ姿勢で、同じ指で、同じ時間帯に確かめると変化がわかりやすくなります。
市販の湿布や消炎鎮痛薬の外用で腫れが引くことを期待して長く様子をみるのは避けてください。2〜3週間を超えて残るしこりは、原因を確かめる段階に入っています。
検査でわかること
まず問診と診察で確かめること
いつから触れるか、大きさが変わっているか、痛みやかゆみがあるか、直前に風邪や喉の痛みがなかったか、動物にひっかかれていないか、体重の変化や寝汗がないかをうかがいます。
診察では、しこりの位置、大きさ、硬さ、動くかどうか、数、皮膚の変化を確かめます。あわせて、のどと扁桃、口の中と歯ぐき、頭皮、耳の周り、そして首以外のリンパ節(わきの下、脚のつけ根)も診ます。原因が首の外にあることがあるためです。
超音波(エコー)検査
当院にはベッドサイドに超音波の機器があり、首のしこりに当てて調べることができます。痛みも被曝もなく、その場で画像を見ながらご説明できます。
超音波では、しこりが皮膚のなかにあるのかリンパ節なのか、大きさと形はどうか、リンパ節の内部の構造が保たれているか、血流はどうかといった点をみます。粉瘤や脂肪腫のように、超音波の見え方でかなり見当がつくものもあります。
超音波でリンパ節の性質を推測することはできますが、良性か悪性かを確定できるわけではありません。確定には細胞や組織を調べる検査が必要です。
血液検査
白血球の数と種類、CRPで炎症の程度をみます。CRPは院内の機器で当日わかります。そのほかの項目は外部の検査機関に出すため、結果のご説明は後日となります。当日その場ではお伝えできません。
経過や診察所見によって、EBウイルスの抗体、肝機能、甲状腺のホルモンなどを追加することがあります。何を調べるかは、しこりの位置と経過を踏まえて診察で決めます。
胸のレントゲンとダーモスコピー
胸部レントゲンは当院で撮影できます。結核や胸のなかの病変が疑われるとき、あるいは鎖骨の上のリンパ節が腫れているときに確認します。
皮膚のできものが疑われるときは、ダーモスコピーという拡大鏡で皮膚の表面から浅い層を拡大して観察します。
当院ではできない検査と、そのときの流れ
次の検査は当院では行っていません。必要と判断した場合は、対応できる医療機関にご紹介します。
原因別の対応と経過のみかた
感染に反応した腫れのとき
扁桃炎による首の腫れのように、風邪や咽頭炎のあとに首が腫れる場合、もとの炎症が治まるとともに小さくなっていきます。多くは数日から2〜3週間です。痛みが強いときは解熱鎮痛薬を使います。
細菌による感染が考えられるときには抗菌薬を使うことがあります。皮膚が赤く腫れて強く痛み、膿がたまっていると考えられるときは、切開して膿を出す処置が必要になることがあり、その場合は対応できる医療機関にご紹介することがあります。
期間を決めて確かめる、という進め方
明らかな感染に伴う腫れで、受診の目安に挙げた特徴がない場合には、期間を決めて経過をみることがあります。目安は2〜3週間です。
この期間を過ぎても小さくならない、あるいは大きくなる場合には、そこから先は様子をみる段階ではなく、原因を確かめる段階になります。超音波と血液検査を行い、必要に応じて次の検査ができる施設にご紹介します。
「かぜは治ったのにしこりだけ残っている」というご相談はよくあります。腫れたリンパ節がもとの大きさに戻るまでには、炎症が治まってからさらに数週間かかることがあります。ただし、残っているものが小さくなっているのか、変わらないのかは、ご自身の感覚だけでは判断しづらいところです。大きさを測って記録するために受診していただいて構いません。
甲状腺・唾液腺・皮膚のしこりのとき
甲状腺にしこりが見つかったときは、超音波で大きさと内部の性状を確かめ、甲状腺のホルモンを調べます。細胞を調べる必要があると判断した場合は、専門の施設にご紹介します。
唾液腺の腫れは、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)のようにうつる病気のこともあれば、唾石といって石が詰まって食事のたびに腫れることもあります。腫瘍が疑われる場合は耳鼻咽喉科にご紹介します。
粉瘤や脂肪腫のように皮膚・皮下のできものであれば、皮膚科として対応します。炎症を起こしている粉瘤は、まず炎症を落ち着かせることを優先します。
悪性が疑われるとき
悪性リンパ腫やがんの転移が疑われる所見があるときは、当院で確定診断をつけることはできません。診断を確定するには、リンパ節の組織を取り出して調べる検査が必要になります。
この段階では、待つことのほうが不利になります。超音波と血液検査の結果を添えて、速やかに連携する医療機関にご紹介します。どこにご紹介するかは、疑っている病気と、しこりの位置によって変わります。
費用の目安
健康保険3割負担の場合の目安です。実際の金額は、行った検査の項目数や処置の内容によって変わります。
2026年8月時点の診療報酬にもとづく目安です。超音波検査(断層撮影法・その他)は350点、血液検査の内訳は末梢血液一般検査21点・末梢血液像(自動機械法)15点・CRP16点に血液学的検査判断料125点と免疫学的検査判断料144点を加えた321点として計算しています。採血の手技料や、甲状腺のホルモン・ウイルス抗体などの追加項目は別にかかります。お薬代も別途必要です。
よくある質問
首のリンパ節はどこにありますか?+
押すと痛いしこりがあります。大丈夫でしょうか?+
痛くないしこりのほうが心配ですか?+
何日くらいで小さくなりますか。2週間以上続いています。+
花粉症やアレルギーで首のリンパは腫れますか?+
首の後ろ・髪の生え際のしこりは何ですか?+
鎖骨のすぐ上にしこりが触れます。+
何科を受診すればよいですか?+
子どものリンパ節が腫れています。+
しこりがかゆいのですが、関係ありますか?+
コリコリした感じがずっとあるのですが、何もないこともありますか?+
触れる位置と経過をうかがい、その場で超音波を当てて確かめます。押すと痛いのか、痛くないのか、いつからか。それだけでも進め方が変わります。様子をみてよいのか、いま調べたほうがよいのかを、一緒に整理しましょう。
本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、診断を行うものではありません。首のしこりの原因は、触れる位置・経過・全身の症状を組み合わせて判断します。記載は2026年8月時点の情報です。
