ニキビ(顔面尋常性ざ瘡)
ニキビは9割の人が経験するありふれた皮膚疾患で「青春のシンボル」といった考えられることもありますが、尋常性痤瘡という皮膚疾患です。スキンケアのみで対応で放置をしてしまうと痕に残ることもあるため、症状が軽微なうちから皮膚科で治療を行うことが大切です。
ニキビはなぜ出来るのですか?
ニキビの原因としてはホルモンバランス、皮脂の過剰な分泌、毛穴の角化異常、アクネ菌などの要因から炎症が起こることで発生します。
遺伝性因子や年齢、食事、ストレス、化粧品などの外的な要因が関わっています。
ニキビの種類と重症度は?
ニキビは重症度やニキビの種類(進行段階)に併せて治療薬を選択していきます。
ニキビの種類
毛穴がつまった状態であるコメド(面ぽう)からニキビは発生します。「白ニキビ」や「黒ニキビ」と呼ばれることもあります。触ると肌がざらざらした感じがします。コメドを放置すると炎症を起こした「赤ニキビ」や化膿した「黄ニキビ」へと悪化してしまいます。適切な治療をしないと「ニキビ痕」になってしまうこともあります。このためニキビ治療は毛穴の詰まりを改善するコメド治療が重要となります。
❶ 毛穴からの皮脂の分泌が増え、目に見えない毛穴のつまりが生じる(マイクロコメド)
❷ 皮脂が毛穴に詰まって非炎症性丘疹(白ニキビ)ができる
❸ アクネ菌などの細菌が白ニキビに感染し、痛みを伴う炎症性丘疹(赤ニキビ)となる
❹ 赤ニキビが悪化すると膿をもった膿疱性痤瘡となる
❺ そのまま放置すると瘢痕(ニキビ痕)になる
ニキビの重症度
炎症性皮疹(赤ニキビや黄ニキビ)の数から重症度を判断します。
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軽症 |
片顔に炎症性皮疹が5個以下 |
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中等症 |
片顔に炎症性皮疹が 6 個以上 20 個以下 |
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重症: |
片顔に炎症性皮疹が 21個以上50 個以下 |
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最重症 |
片顔に炎症性皮疹が51個以上 |
急性期治療と維持治療
炎症を起こした赤ニキビがある場合にはまず抗菌外用薬や抗生剤内服を含めた急性炎症期の治療を行います。赤ニキビの多くが平らになってきたら維持治療に以降します。
再度コメドが炎症を起こし次の目立つニキビになる可能性があるため、コメド治療を継続することが重要です。
にきび治療のPoint!!
❶ 毛穴のつまり(白ニキビ)の段階で炎症が生じる前にできるだけ早く治療を開始します
❷ 早期から毛穴の詰まりを改善し、白ニキビに効く外用薬(コメド治療薬)を使用します
❸ 炎症がひどいニキビでは外用・内服の抗菌薬を併用します
❹ 抗菌薬治療は 『急性炎症期のみ』『中等症以上』『最長3カ月』を原則とします
にきび治療薬にはどのような薬がありますか?
ニキビ治療には毛穴の詰まりを改善する薬、ニキビ菌を殺菌する抗生物質、ビタミン剤、漢方薬、抗ホルモン剤などがあります。炎症性ニキビの原因となる白ニキビをできづらくするアダパレンや過酸化ベンゾイルを中心に根本治療薬を中心に治療を行います。
ニキビの塗り薬
毛穴の詰まりを改善する薬(白ニキビに対して行う治療)
毛穴の詰まりを改善する薬は4種類ありますが、成分としてはアダパレンと過酸化ベンゾイルの2種類のみです。
❶ ディフェリンゲル(アダパレン)
皮膚のターンオーバーを促進し、皮膚が厚くなる作用を調整することにより毛穴の詰まりを改善させ、コメド(白ニキビ)をできにくくする塗り薬です。毛穴に皮脂が詰まった状態である白ニキビの効果が特に高いことが特徴で、赤ニキビへの悪化の予防に繋がります。
現在あるニキビを改善する急性炎症期の治療のみではなく、ニキビが改善した後の良い状態を維持するためにも推奨される薬です。
❷ ベピオゲル・ベピオローション・ベピオウォッシュゲル(過酸化ベンゾイル)
皮膚表面の古い角層を取り除き、毛穴の詰まりを改善することにより白ニキビを減少する作用があります。また、ニキビの原因となるアクネ菌や黄色ブドウ球菌への抗菌作用や抗炎症作用があるため赤ニキビに対しても効果を発揮します。
現在あるニキビを改善する急性炎症期の治療のみではなく、ニキビが改善した後の良い状態を維持するためにも推奨される薬です。
❸ デュアック配合ゲル
過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンという抗菌薬が有効成分の塗り薬です。
抗菌薬が含まれているため赤ニキビを主体とした急性炎症期に適しています。抗菌薬を漫然と使用すると耐性菌が出現する可能性があるため、漫然と使用せず概ね12週までの仕様が望ましく、維持期にはベピオ(過酸化ベンゾイル)に変更します。
❹ エピデュオゲル
過酸化ベンゾイルとアダパレンが有効成分の塗り薬です。過酸化ベンゾイルとアダパレンの効果によろい毛穴の詰まりを改善し白ニキビを減少サせる作用があります。過酸化ベンゾイルの抗菌、抗炎症作用により赤ニキビにたいしても効果を発揮します。
中等症から最重症の炎症がひどく生じた赤ニキビによい適応があります。また、萎縮性瘢痕(凹んだニキビ跡)を予防するエビデンスがあるため維持期での使用にも適しています。
赤ニキビに対して行う治療
ニキビ菌を殺菌するための抗生物質の塗り薬で、炎症性のにきびに対して使用します。
急性炎症期でも抗生物質外用薬のみを使用するのは望ましくなく、毛穴の詰まりを改善する薬と併用します。
❶ ダラシン(クリンダマイシン)
- 1日2回タイプの抗生物質
❷ アクアチム(ナジフロキサシン)
- 1日2回タイプの抗生物質です。
- ローション、クリーム、軟膏と剤形が豊富です。
❸ ゼビアックス(オゼノキサシン)
- 1日1回であることが特徴です。
- 1日2回タイプのアクアチムと同等の効果があり、刺激感などの副作用が少ないことが特徴です。
- ローションは指先にとって塗ることができ、塗ったあとも垂れにくい特徴があります。
保湿目的に使用する薬
にきび薬により皮膚が乾燥することがあり、ヒルドイドローション、ビーソフテンクリームなどを使用します。
ニキビの飲み薬
内服抗菌薬
赤ニキビ、黄ニキビなどの炎症性ニキビには抗菌薬の内服が強く推奨されています。ニキビの炎症の現任となるアクネ菌を殺菌するのみでなく、炎症を抑える効果を併せ持つ抗菌薬を使用します。ただし、耐性菌を防ぐために1.5-2ヶ月で効果と継続の必要性を判断し、投与は3ヶ月以内とすることが推奨されています。
❶ ビブラマイシン(ドキシサイクリン)
日本皮膚科学会のガイドラインで炎症性のにきびに強く推奨されている抗菌薬です。
❷ ミノマイシン(ミノサイクリン)
抗菌作用だけではなく炎症を抑える効果があり、ビブラマイシンと同等の効果があります。めまいや色素沈着などの副作用に注意が必要です。
❸ ルリッド(ロキシスロマイシン)
マクロライド系の抗菌薬です。ビブラマイシンやミノマイシンなどのテトラサイクリン系とは系統の異なるお薬です。
ミノマイシンやファロムなどと同等の効果があります。
マクロライドは肺炎など皮膚以外の感染症でも鍵となる抗菌薬であるため耐性菌をつくらないためにも医師の指示をしっかり守ることが重要です。
❹ ファロム(ファロペネム)
漢方薬
漢方薬はニキビ治療で補助的な役割をもっており、日本皮膚科学会のガイドラインでは推奨度C1(他の治療が無効であれば推奨する)となっています。
難治性ニキビでできる限りの治療を行いたい方、既存のにきび薬のみでコントロールが不十分な方におすすめです。
❶ 十味敗毒湯
- ニキビに対して漢方治療を行う際にまず使われる漢方薬です。
- 初期の炎症性のニキビに効果があるとされています。
- 十味敗毒湯を使用することで、ニキビの塗り薬(ベピオやディフェリン)のかゆみや赤みなどの刺激作用を抑える可能性が報告されています。
❷ 荊芥連翹湯
- 赤ニキビが多数認める場合や、十味敗毒湯で効果が不十分な場合に使用します。
❸ 清上防風湯
- 炎症が強い場合は使用します。
- 男性で皮脂が多いかたにも適しています。
❹ 桂枝茯苓丸薏苡仁
- 月経周期に伴い増悪するニキビによく使用されます。月経不順にも保険適応をもつ漢方薬です。
ビタミン剤
ビタミン剤のニキビへの効果は明確にはなっていませんが、体質改善やニキビ予防、ニキビ治療の補助的な位置づけで処方されることがあります。
難治性にきびに対する自由診療のお薬
イソトレチノイン
イソトレチノインは重度のニキビの切り札といえる内服薬です。中等度以上の繰り返すニキビや難治性のニキビ、ニキビ跡が残りやすい方などによい適応があります。
スピロノラクトン
スピロノラクトンはアンドロゲンを抑えることで皮脂の分泌を抑えにきびを改善します。
低用量ピル
低用量ピルはアンドロゲンを抑えて皮脂の分泌を抑えます。
ホルモンの変動をおさえることもにきびの改善に繋がると考えられています。
アゼライン酸
妊娠中や授乳中であっても安心して使える外用薬です。
にきびでお困りの方のスキンケアの注意点
ノンコメドジェニック製品を選ぶことで、うまくニキビと付き合っていきましょう。
わたしにはどのニキビ薬があっていますか?
軽症の方(顔全体で赤ニキビが10個以下)
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《治療例》 |
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ディフェリンゲル白ニキビに改善効果が高いディフェリンゲルを使用します。白ニキビに対しては抗生物質の塗り薬や内服は効果がなく原則使用しません。 |
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《治療例》 (効果が不十分な場合)ビブラマイシン錠 1週間程度内服 |
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炎症性ニキビのある方には抗菌薬配合のデュアック配合ゲルが有効です。短期間抗菌薬内服を併用することもあります。 |
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《治療例》 (効果が不十分な場合)ビブラマイシン錠 1週間程度内服 |
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炎症性ニキビのある方には抗菌薬配合のデュアック配合ゲルが有効です。短期間抗菌薬内服を併用することもあります。 |
中等症の方(顔に炎症性皮疹が 10 個以上 40 個以下)
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《治療例》 (効果が不十分な場合)ビブラマイシン錠 2週間程度内服 十味敗毒湯 |
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炎症性ニキビのある方には抗菌薬配合のデュアック配合ゲルが有効です。短期間抗菌薬内服を併用することもあります。ニキビ痕の予防に維持期にはエピデュオを検討します。 |
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《治療例》 ベピオウォッシュゲル ビブラマイシン錠 |
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体に使用可能なベピオを基本にします。背中には十分に塗り薬を使用できないこともあるため抗菌薬内服も併用します。 |
重症(お顔全体で赤ニキビが40個以上)の方
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《治療例》 ビブラマイシン錠4週間程度内服 |
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保険診療のみでは改善が困難な事例も多く、ケミカルピーリングやホルモン療法(低用量ピルやスピロノラクトン)、イソトレチノイン内服などの自費診療も考慮する必要があります。 |
