尋常性乾癬
乾癬とは?
乾癬は免疫システムが過剰に反応することで皮膚の炎症(皮疹)や爪の異常、関節の痛み等が見られます。
乾癬の症状は?
☑︎ 紅斑
皮膚があかくなる
☑︎ 肥厚・浸潤
皮膚が盛り上がる
☑︎ 鱗屑
表面が銀白色のふけのようなものに覆われ、ポロポロとはがれ落ちる
乾癬の原因は?
乾癬の発症原因は今のところ明確になっていませんが、遺伝的要因に外的な因子と内的な因子といった環境要因の相互作⽤により、からだの免疫システムに異常が⽣じることで発症すると考えられています。
遺伝的要因
免疫に異常を来しやすい体質に環境要因が加わることで発症します。
外的な因子
タバコやアルコール、薬剤など
内的な因子
肥満や糖尿病や脂質異常症などにより炎症反応を引き起こすことで乾癬の発症や悪化の引きがねとなることがあります。
乾癬の種類は?
❶ 尋常性乾癬
乾癬のなかでもっとも多く全体の9割を占めます。
髪の生え際やひじ、ひざ、ふともも、おしりなど刺激を受けやすい部分によくみられます。乾癬患者さんの40〜80%は爪にも乾癬の症状がみられ、爪が先端から浮き上がって白くみえたり、爪の表面にポツポツとした凹凸ができたりします。
❷ 乾癬性関節炎
手足の関節や、首から背骨、アキレス腱、足の裏などに痛みや、腫れ、こわばりが出現します。感染患者さんの約15%に合併します。
関節の破壊を防ぐためにも早期に発見し、早期に治療を行うことが重要です。
❸ 滴状乾癬
直径0.5〜2cm程度の小さな発疹が全身に現れます。小児や若年者に多く、風邪などの感染症がきっかけで起こることがあり、特に扁桃腺炎(へんとうせんえん)が誘因となることが多いといわれています。
❹ 乾癬性紅皮症
尋常性乾癬が全身に広がって、全身の90%以上の皮膚が赤みを帯び、細かい鱗屑がはがれ落ちる状態です。
❺ 膿胞性乾癬
発熱や皮膚の発赤とともに、膿の入った球状の袋(膿疱)が多数現れます。
尋常性乾癬はどのように診断しますか?
❶ 診察による確認
典型的な乾癬は特徴的な皮膚所見から診断が可能です。
❷ 生検
皮疹がある場所を麻酔して一部切り取り、皮膚に起きている異常を顕微鏡で確認する病理組織検査を行う場合があります。
❸ 血液検査
生活習慣病を合併することがあるため血液検査を行います。
乾癬の重症度
尋常性乾癬どのように治療しますか?
乾癬の治療方法は大きく分けて外用療法、光線療法、内服療法、バイオ製剤の4種類あります。乾癬の種類や患者さんの症状や生活スタイルに合わせて、これらの中から治療法を選択していきます。
外用薬
外用薬は感染治療の基本で炎症を抑えるステロイド薬と表皮細胞の増殖を抑えるビタミンD3製剤があります。
ステロイド外用薬
皮膚の炎症をおさえる薬剤です。特に赤みを改善するのに有効で比較的効果が早く現れる特徴があります。
ビタミンD3製剤
フケのように剥がれ落ちる鱗屑や、皮膚の盛り上がり(浸潤・肥厚)の改善に効果的です。ステロイドに比べて効果がゆっくり現れますが、一旦改善した症状を維持することが出来ると言われています。
シークエンシャル療法
ステロイド外用薬をビタミンD3外用薬を併用することで治療を開始し、長期的な副作用を最小限に良い状態を維持するための方法です。
ステロイド外用薬と活性型ビタミンD外用薬を朝晩、塗り分けることから治療を開始し、週末のみの同様治療(平日はビタミンD3のみ)を経て、最終的にビタミンD3外用薬単独の治療をめざします。
ステロイド・ビタミンD3配合剤製剤
ステロイドとビタミンD3の2つの成分を配合しています。1日1回塗ることで、ステロイド外用薬やビタミンD3外用薬を単独で使うより高い効果が認められます。
ステロイドがビタミンD3による刺激感を、ビタミンD3がステロイドによる皮膚萎縮を抑えます。
ブイタマークリー厶(タピナロフ)
タピナロフは、芳香族炭化水素受容体(AhR)を活性化することにより、さまざまな遺伝子に働きかけ、皮膚の炎症を抑制します。
1日1回でよいこと、クリームのため軟膏と比べて塗り拡げ安く使用感がよいのが特徴です。
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内容 |
自己負担 |
1本あたり 15gの場合 |
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ブイタマークリーム |
3割 |
1354円 |
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2割 |
902円 |
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1割 |
451円 |
光線療法
光線療法とは皮疹に紫外線を照射し、免疫の働きを抑えることで乾癬の症状を改善する治療方法です。紫外線のなかでも皮膚に悪影響を与えにくく、皮膚の細胞増殖や炎症を抑制する作用をもつUVA(長波長紫外線)、UVB(中波長紫外線)が用いられます。
UVAを使用する「PUVA(プーバ)療法」、UVBを使用する「UVB療法」「ナローバンドUVB療法」「エキシマライト」などに分けられます。一般的には入院では週4〜5回、外来では週2〜3回(1回5〜7分)で、20回を1クールとして治療が行われます。
全身療法
塗り薬で十分な効果が得られない患者さんや、関節症状がある患者さんに対して内服治療や注射薬による全身療法を行います。
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全身療法の適応患者 |
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全身療法を検討すべきである (Strong consensus) 1. 特別な部位、 治療困難な部位に病変がある 2. 精神的な苦痛が生じている 3. 社会生活に影響を及ぼす症状が生じている 4. 鱗屑、 出血、 そう痒、 不眠など 5. 局所療法による治療効果が十分ではない |
内服薬
❶ PDE4阻害薬
オテズラ錠(アプレミラスト)
炎症を引き起こす物質に係るPDE4の働きを抑えることで免疫バランスを整え、炎症を抑えることで乾癬の症状を改善します。
オテズラは皮膚の症状のみではなく、通常の塗り薬では治療効果に乏しい頭皮や爪の症状、かゆみや関節の症状も改善が期待できます。
オテズラ錠による症状の改善時期には個人差があります。患者さんによっては、飲み始めから24週と、ゆっくり症状が改善してくる場合があります。
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内容 |
自己負担 |
1ヶ月あたりの負担額 |
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オテズラ錠の費用 |
3割 |
16,632円 |
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2割 |
4,554円 |
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1割 |
2,277円 |
❷ JAK阻害薬
リンヴォック錠(ウパタシチニブ)
関節性関節炎に対して投与します。
❸ チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬
ソーティクツ錠(デュークラバシチブ)
❹ 抗リウマチ薬
❺ 免疫抑制剤
注射薬(生物学的製剤)
外用療法や内服療法で十分な効果がみられない患者さんには生物学的製剤による治療が行われます。生物学的製剤は、乾癬の症状が出ている部位に大量に存在する炎症性サイトカインに直接働きかけ、過剰な免疫反応を抑えることで乾癬の症状を改善します。
乾癬があるとかかりいやすい病気は?
乾癬(かんせん)の患者さんは、皮膚症状以外にも関連する病気(合併症)や発症リスクが高くなる疾患がいくつか知られています。
- 乾癬性関節炎
- メタボリックシンドローム
(高血圧・糖尿病。心臓血管疾患・非アルコール性脂肪性肝疾患など》 - うつ・不安障害などのメンタル疾患
- 炎症性腸疾患(IBD)

