甲状線機能亢進症
甲状腺機能亢進症とは?
甲状腺機能亢進症とは、甲状腺が活発に活動し、血中に甲状腺ホルモンが多く分泌される病気です。
甲状腺機能亢進症の症状は?
甲状腺ホルモンが多くなることで代謝が上がり、交感神経が刺激されるため動悸や暑がり、発汗などの症状が出ます。子どもやご高齢のかたは典型的な症状が出ないこともよくあります。
☑︎ 動悸、息切れ
☑︎ 発汗、あつがり
☑︎ 食欲亢進、下痢、腹痛
☑︎ 体重減少
☑︎ イライラ、不安、不眠
☑︎ 微熱
※小児や高齢者では典型的でないこと(無気力・成績低下のみなど)もあります。
甲状腺機能亢進症の原因は?
❶ バセドウ病
バセドウ病は甲状腺機能亢進症のもっともよくある原因で約65%を占めます。1000人中2~6人いると言われており、女性患者が男性患者より5倍と多いのも特徴としてあげられます。
❷ 無痛性甲状腺炎(16%程度)
無痛性甲状腺炎は何らかの原因によって甲状腺の細胞が壊れ、甲状腺に貯められていた甲状腺ホルモンが血中に漏れでます。
❸ 亜急性甲状腺炎(8%程度)
甲状腺に炎症が起きることで発熱や痛みの症状がでます。炎症により甲状腺に貯められていた甲状腺ホルモンが血中に漏れでてくるため、一時的に血液中の甲状腺ホルモンが増加します。
❹ 甲状腺機能性結節(プランマー病)
甲状腺腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌している病気です。
❺ 薬剤
バセドウ病はどのように診断しますか?
❶ 診察
甲状腺が全体的に大きくなっているのか、押して痛みはないか、結節、腫瘍はないか等を確認します。
❷ 甲状腺ホルモン(fT4)と甲状腺ホルモン刺激ホルモン(TSH)の測定
甲状腺ホルモンにはT3(トリヨードサイロニン)とT3(ヨードサイロニン)に分けられます。甲状腺ホルモンの分泌量は脳からのTSH(甲状腺刺激ホルモン)によって分泌量が一定に保たれるように調整を受けています。
甲状腺機能亢進症では、fT4が高くなり、分泌を抑制するためにTSHが低くなります。
fT4は正常にも関わらずTSHが低下している状態を潜在性甲状腺機亢進症といいます。
❸ TSH受容体抗体(TRAb)の測定
自己抗体が陽性となることでバセドウ病と診断できます。
❹ 超音波検査
バセドウ病では甲状腺が大きく全体的に腫れ、甲状腺内の血流が全体的に活発になります。
また、甲状腺の内部に結節(しこり)がないかどうかを検査します。
バセドウ病はどのように治療しますか?
❶ 内服治療
抗甲状腺薬を内服します。
メルカゾール(チアマゾール:MMI)
プロパジール(プロピルチオウラシル:PTU)
一般的には効果が強く、副作用が少ないメルカゾールを第一選択として使用します。妊娠初期(16週未満)ではプロパジールを検討します。
|
|
メルカゾール |
プロパジール |
|
効果 |
強い |
弱い |
|
半減期 |
長い(約6時間) |
短い(75分) |
|
投与回数 |
原則1日1回 |
1日2回 |
|
副作用の頻度 |
低い |
高い |
|
妊娠初期の服用 |
奇形発生のリスクあり |
使用可能 |
副作用や効果の確認のため治療開始後に2ヶ月程度は2週間ごとに採血が必要となります。甲状腺機能が正常範囲となれば4-6週間ごとに徐々に減量を行っていきます。
1年半から2年程度内服し、その後中止しバセドウ病が再発しないことが確認されたら治癒となります。
メルカゾールの副作用としては皮膚のかゆみや蕁麻疹、肝機能障害などの症状が見られることがあります。皮膚の症状は開始後2-3週間後に見られることが多く10%程度で診られますが、多くは抗アレルギー薬で改善します。
もっとも注意が必要な副作用は無顆粒球症と白血球という細菌と戦う細胞が減ることにより高熱やのどの痛みがあればすぐに薬の服用をやめてご来院ください。
❷ アイソトープ治療
❸ 手術治療
内服薬でコントロールが出来ない場合や、薬の副作用のために治療が困難である場合に実施します。アイソトープ治療や手術が必要となる方は高度医療機関をご紹介させていただきます。
不妊との関連と妊娠中の治療は?
バセドウ病で甲状腺機能亢進症の症状がでていると、排卵障害を起こす場合があるなど不妊症との関係が指摘されています。また、治療が不十分なまま妊娠をすると胎児の発育に影響し早産や流産の確率が高まったり妊娠高血圧症候群や心不全の危険が高まります。
治療により甲状腺機能をコントロールすることで症状を抑えることができ、安全に妊娠出産することが可能です。
チウラジールとプロパジールについては、母乳へと移行することがありません。一方でメルカゾールについては、内服量によっては母乳への移行が懸念されるため、授乳間隔を長めにしたり、人工栄養と併用したりといった対策が必要になることがあります。
生活上の注意点は?
❶ ストレスを避けて十分な睡眠をとり規則正しい生活をしましょう
精神的なストレスがバセドウ病の発症や再発に関連することが報告されています。
❷ 禁煙を心がけましょう
喫煙により、バセドウ病の発症や再発に危険性が高まり、抗甲状腺薬による治療効果が悪くなる可能性があることが報告されています。
❸ 昆布食品、わかめ、ひじきなどの海藻類の過剰摂取には注意しましょう
ヨウ素欠乏地域ではヨウ素過剰摂取によりヨウ素誘発性機能亢進症を発症することが報告され、バセドウ病の方はヨウ素過剰摂取を避ける必要があります。通常の摂取量では気にしすぎる必要はありません。
よくある質問
バセドウ病は完治しますか?
内服を1.5〜2年続けて30〜50%程度が寛解するとされます。再発する方や内服が合わない方は、放射性ヨウ素や手術で根治的にコントロールできます。
コーヒー(カフェイン)はだめですか?
ホルモン分泌を直接増やす根拠は乏しいですが、カフェインは動悸・手のふるえを強めるため、症状が強い時期は控えめが無難です。
※レボチロキシン(甲状腺ホルモン薬)を内服中の方は服薬後30〜60分はコーヒーを避けると吸収が安定します(バセドウ病の抗甲状腺薬では原則不要)。
ストレスで悪化しますか?
直接の原因ではありませんが、発症や再発の引き金になることが知られています。睡眠・休息・セルフケアを“治療の一部”と考えましょう。
どのくらいの頻度で起こる病気ですか?
バセドウ病は女性に多く、生涯で数百人に数人程度みられる比較的ありふれた疾患です。
