酒さ
酒さは原因不明の顔面に生じる慢性の炎症性皮膚疾患です。鼻や頬、額などにニキビのような赤い盛り上がりや赤み、細い血管が出現するのが特徴です。
酒さの原因は?
酒さは遺伝的・環境の要因、アレルギー素因が関係すると推測されていますが明らかにはなっていません。
人によって悪化する環境要因は異なりますが、治療には悪化要因を除去することが重要でありどのような時に症状が悪化するか把握することが重要です。
日光(81%)や精神的なストレス(79%)、寒暖(75%)、運動(57%)やアルコール摂取(56%)がきっかけとなることが多いようです。
酒さの症状は?
❶ 顔のあかみ:毛穴のまわりの炎症から発生し、皮膚の赤みが生じます
❷ 赤い盛り上がり:炎症が進行すると毛穴が赤く盛り上がります
❸ 膿を持ったぶつぶつ:炎症が更に進行し膿のたまった膿疱となります
❹ 毛細血管の拡張:毛細血管が広がることで皮膚の上から血管の赤みが目立つようになります
ほてり、つっぱり、灼熱感、皮膚の乾燥、ピリピリ感、熱感などは特に患者さんの生活に影響が大きい症状です。
酒さにはどのような種類がありますか?
❶ 紅斑毛細血管拡張型酒さ
顔が赤くなり、毛細血管の拡張が認められます。ほてりやかゆみを伴います。
❷ 丘疹膿疱型酒さ
毛穴に赤い盛り上がりや膿を溜まった膿疱を認めます。ニキビに認められるような毛穴のつまり(コメド)は認められません。
❸ 瘤瘤腫型酒さ・鼻瘤
真皮が繊維化することで皮膚が厚くなりこぶのようになります。
酒さはどのように診断しますか?
酒さの診断は問診と診察から行います。皮疹の分布や皮疹の特徴、顔面以外の併存する皮膚疾患の有無などを参考に診断を勧めます。
❶ ダーモスコピー
皮膚表面、真皮内の血管拡張、コメド(面皰)の有無などを確認します。
❷ アレルギー検査
酒さの患者さんではスギやヒノキなどの花粉やハウスダスト、ダニなどにアレルギー反応を示す方が多く、アレルギー素因があるか、悪化因子の確認のために実施します。
❸ パッチテスト
接触性皮膚炎(かぶれ)が合併していることはまれではないため、接触性皮膚炎による酒さの悪化を防ぐために必要に応じてパッチテストを実施します。
酒さはどのように治療しますか?
悪化因子の回避
❶日光、紫外線を避ける
- 直射日光をさけ、日焼け止め、サングラスを着用する
- 刺激やかぶれをおこさないようにする
❷血管拡張に繋がる食品の摂取をさける
- アルコール、辛い食べ物、非常に熱い食べ物や飲み物などは避ける
❸スキンケア
- 酒さのかたは乾燥肌でバリア機能がやや低下していることが多いため肌質を踏まえたスキンケアが重要です
- 1日2回ぬるま湯でやさしく洗顔します。皮膚をこする、刺激物質などは避けましょう
外用治療
❶ロゼックスゲル(メトロニダゾール外用薬)
ガイドラインにおいて丘疹膿疱型酒さに対して『行うよう強く推奨する(A)』と記載されている薬です。
- 1日2回、12週間塗布することで炎症性の丘疹が76.4%減少したとの報告があります
- 8週間塗布することにより赤みも改善することが報告されています。
❷ディーアールエックスAZAクリア(20%アゼライン酸外用薬)【保険適応外】
アゼライン酸は炎症と角化を抑える効果があるため、丘疹膿疱型酒さの炎症性の丘疹や赤みが改善させる効果が報告されています。
ロゼックスゲルが無効な例、ロゼックスゲルでかぶれなどが生じる例ロゼックスゲルで症状が改善したあとに症状を維持するためにも用いられます。
塗り始めは刺激感出ることがあります。 十分保湿を行ってから使用し、1日1回1部位から徐々に塗布する範囲を広げ1日2回に増やしていきます。
❸プロトピック(タクロリムス外用薬)
ステロイド酒さに対してステロイドからの離脱を予防するために切り替えて使用することがあります。
❹ミルバソゲル(ブリモニジン)
アドレナリンα2受容体アゴニストで血管収縮作用があるため、ブリモニジンを外用することによりあかみを抑えることが出来ます。
❺イベルメクチン
イベルメクチンは寄生虫治療薬であり、疥癬治療にも使用されます。
抗炎症作用と毛包虫(ニキビダニ)を減少させることで酒さが改善することが報告されています。
内服治療
❶ビブラマイシン錠(ドキシサイクリン) /ミノマイシン錠(ミノサイクリン)
丘疹膿疱型酒さに対してロゼックスゲルと併用して3ヶ月程度を目処に使用されます。
紅斑毛細血管拡張型酒さ対しては有効性は確立されていません。
❷イソトレチノイン
イソトレチノインは酒さに伴う赤み、膿疱、あかみが大幅に改善されます。1日10-20mgと低容量で治療を行います。
レーザー治療
毛細血管拡張に対しては595mパルス色素レーザー(Vbeam)と1,064nm Nd: YAGレーザーが使用されます。紅斑に対してはIPLなどの光治療が有効なことがあります。
よくある質問
酒さとニキビはどのような違いがありますか?
年齢や分布、コメド(白ニキビ)の有無などから判断を行っていきます。
|
|
酒さ |
にきび |
|
発生年齢 |
40歳代以降 |
思春期前後 |
|
良くできる場所 |
顔の中央部 |
顔面のみではなく背中や胸部の中央部 |
|
コメド(白ニキビ) |
なし |
認めることが診断のひとつ |
|
毛細血管の拡張やほてり |
あり |
なし |
|
アダパレンや抗菌薬での改善 |
しない |
する |
