ペットアレルギー(ネコアレルギー、イヌアレルギー)
動物アレルギーについて
猫アレルギー・犬アレルギーの症状
猫アレルギーとは、猫が出すたんぱく質に体が過剰に反応する状態のことです。犬アレルギー、うさぎアレルギーも同じで、これらをまとめて動物アレルギー(ペットアレルギー)と呼びます。猫(ネコ)・犬(イヌ)・うさぎ(ウサギ)などの動物が出すたんぱく質を吸い込んだり触れたりして症状が出ます。猫アレルギー、ネコアレルギー、ねこアレルギー、犬アレルギー、イヌアレルギー、犬猫アレルギー、猫犬アレルギーなど呼び方はいろいろですが、確かめることは同じです。
猫アレルギーの特徴として、もっとも多いのは鼻と目の症状です。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、目の充血。次に多いのが皮膚とのど(喉)の症状で、かゆい、痒みが出る、赤くなる、じんましん(蕁麻疹)が出る、のどがイガイガする、といった形で気づかれます。
見落とされやすいのが咳と頭痛です。猫や犬に近づくと咳が出る、ゼーゼーする、という場合は喘息が隠れていることがあります。猫アレルギーで頭痛が起きるという相談も多く、これは鼻づまりで副鼻腔の換気が悪くなることが主な理由と考えられています。鼻の症状を治療すると軽くなることがあります。
| 出る場所 | 主な症状 |
|---|---|
| 鼻 | くしゃみ、鼻水、鼻づまり、鼻がムズムズする、においが分かりにくい |
| 目 | 目のかゆみ、充血、涙目、まぶたの腫れ(目が腫れる)、ゴロゴロする |
| のど・口 | のど(喉)のイガイガ、喉のかゆみ、喉の腫れた感じ、声のかすれ、咳払いが増える |
| 皮膚 | かゆみ、痒い、赤み、じんましん、湿疹、アトピー性皮膚炎の悪化、まぶた・唇・顔が腫れる(はれる)、触れた場所が赤くなる |
| 呼吸器 | 咳、痰、ゼーゼー・ヒューヒュー、息苦しい・息苦しさ、呼吸困難、夜間や明け方の咳 |
| 全身 | 頭痛、頭が重い、だるさ、吐き気・気持ち悪い、寝つきが悪い、日中の集中力が落ちる |
猫に舐められた場所や、猫を触った手で口元を触ったあとに唇が腫れることがあります(接触じんましん)。猫アレルギーでニキビのようなブツブツが出るという相談もありますが、多くはニキビそのものではなく、かゆみで掻いたあとや接触による湿疹です。ニキビが続く場合は別の原因を考えます。
すぐに受診・救急要請が必要な症状
動物アレルギーで命にかかわる反応が起きることはまれですが、次のような症状があるときは様子をみず、ただちに救急要請(119番)をしてください。
原因は毛そのものではありません
「猫の毛アレルギー」「犬の毛アレルギー」という言い方をよくしますが、正確には毛そのものが原因ではありません。原因は、唾液・皮脂・尿・はがれ落ちた皮膚(皮屑=ひせつ、いわゆるフケ)に含まれるたんぱく質です。毛はそれを運ぶ乗り物にすぎません。毛皮アレルギー、動物の毛アレルギーと呼ばれるものも、しくみは同じです。
猫の主なアレルゲンは Fel d 1 というたんぱく質で、皮脂腺・唾液腺などで作られます。猫は毛づくろいで全身に唾液を塗り広げるため、Fel d 1 が毛やフケの表面に付いて部屋じゅうに広がります。犬の主なアレルゲンは Can f 1 で、こちらも唾液や皮膚に含まれます。
このしくみを知っておくと、あとで出てくる「短毛なら大丈夫か」「抜け毛が少ない犬種なら平気か」という疑問に、自分で答えを出せるようになります。毛の量ではなく、唾液と皮脂の量で決まるからです。
Fel d 1 の粒子はとても小さく軽いため、掃除機や人の動きで舞い上がったあと、長時間空気中に浮いたままになります。しかも静電気を帯びて衣類や壁にくっつきやすい性質があります。これが猫アレルギーの症状が「その場を離れてもしばらく続く」理由です。
猫アレルギーと犬アレルギーの違い(犬アレルギーと猫アレルギーの違い)
犬アレルギーと猫アレルギーの違いを知りたい、というご相談がもっとも多い項目です。猫アレルギーと犬アレルギーは、原因になるたんぱく質が別のものです。ですから「猫アレルギーだけど犬は大丈夫」「犬アレルギーだけど猫は大丈夫」ということは、めずらしくありません。逆に、犬アレルギーの人は猫アレルギーにもなるのか、猫アレルギーだと犬もダメなのかというと、両方とも症状が出る方もいます。どちらか一方だけの方も、両方の方もいます。
違いがもっともはっきり出るのは、症状の強さと、症状が出る場所です。猫のアレルゲンのほうが小さく軽く、付着しやすいため、同じ量でも猫のほうが強く症状が出やすいこと、そして猫のいない場所でも症状が出やすいことが知られています。
| 項目 | 猫(ネコ) | 犬(イヌ) |
|---|---|---|
| 主なアレルゲン | Fel d 1(皮脂腺・唾液腺で作られる)ほか Fel d 2・Fel d 4 など | Can f 1(唾液・皮膚)ほか Can f 2〜Can f 6 など複数 |
| どこに含まれるか | 唾液、皮脂、フケ(皮屑)。毛づくろいで全身に広がる | 唾液、フケ(皮屑)、尿。犬種による差ははっきりしない |
| 粒子の性質 | 小さく軽く、静電気で付着しやすい。長く空気中に浮遊する | 猫より重く沈みやすいが、やはり浮遊して吸い込まれる |
| 症状の出やすさ | 一般に犬より強く出やすいと報告されている | 猫より弱いことが多いが、個人差が大きい |
| 飼っていない人への影響 | 飼い主の衣服に付いて運ばれ、猫のいない家・学校・職場からも検出される | 猫ほど広がりにくいが、同じことが起こりうる |
| 片方だけ症状が出るか | 主なアレルゲンが別なので、猫だけ・犬だけということは普通にある | 同上。ただし血清アルブミン(Fel d 2 と Can f 3)を介して両方に反応することもある |
猫アレルギーと犬アレルギーの違いを一言でいえば「猫のほうが、より遠くまで届き、より少ない量で症状を起こしやすい」ということです。どちらか一方だけに反応しているのか、両方なのかは、症状の出かたと血液検査を合わせて判断します。
猫アレルギーと犬アレルギー、どっちが多いですか(割合)
犬アレルギーと猫アレルギーはどっちが多いのか。猫アレルギーのほうが多いと報告されています。動物アレルギーのなかで猫がもっとも多く、次いで犬という順番は、国内外の報告でおおむね共通しています。吸入アレルゲン全体では、花粉とダニ・ハウスダストに次いで多い原因です。
割合を数字で示すと、海外の一般人口を対象とした調査では、成人のおよそ10〜20%が猫または犬に感作している(血液検査で抗体を持っている)と報告されています。ただし日本人だけを対象にした正確な割合を示した統計は限られており、何人に1人という言い方ができるほど確かな国内データはありません。
大切なのは、感作していること(検査が陽性であること)と、実際に症状が出ることは別だという点です。検査が陽性でも猫と暮らして何ともない方はいますし、逆に検査の数値が低くても強い症状が出る方もいます。割合の数字よりも、ご自身に症状が出ているかどうかで判断します。
猫を飼っていないのに猫アレルギーになるのはなぜですか
猫アレルギーの特徴として、猫を飼ったことがない方でも発症することがあります。Fel d 1 は衣類にくっつきやすいため、猫を飼っている人の服や荷物に付いたまま運ばれ、電車・職場・学校・飲食店など、猫のいない場所にも持ち込まれるからです。
実際に、猫を飼っていない家庭やまったく猫のいない建物からも Fel d 1 が検出されることが報告されています。「うちには猫がいないのに猫アレルギーと言われた」というのは、検査の誤りではありません。
同じ理由で、猫カフェや友人宅に行ったあと、帰宅してから症状が出ることもあります。服に付いたアレルゲンを持ち帰っているためです。
猫アレルギーに突然なるのはなぜですか
何年も一緒に暮らしてきた猫や犬で、大人になってから急に症状が出ることがあります。これは体の反応が変わったわけではなく、アレルギーが成立するまでには一定の期間の接触が必要だからです。抗体ができてから(感作が成立してから)症状が出るまでには、時間差があります。
引っ越しや転職で室内の環境が変わった、ペットが増えた、花粉症を発症した、といったきっかけで、それまで抑えられていた症状が表面化することもあります。
「昔は平気だったから動物ではない」とは言えません。飼い始めた時期と症状が出はじめた時期がずれていても、動物アレルギーは十分に考えます。
「アレルギー対応の犬種」「短毛なら大丈夫」は成り立ちません
抜け毛が少ない犬種や、いわゆる低アレルギー犬種(ハイポアレルゲニック)なら大丈夫、という説明を目にすることがあります。しかし、犬種ごとに家庭内の Can f 1 の量を測定した研究では、低アレルギー犬種とされる犬種のほうがアレルゲンが少ないという結果は得られていません。
猫も同じです。短毛か長毛か、毛が抜けやすいかどうかで Fel d 1 の量は決まりません。原因は毛ではなく唾液と皮脂だからです。個体差(同じ猫種でも猫ごとに違う)のほうが、品種の差よりも大きいと考えられています。
つまり、犬種や猫種を選べば動物アレルギーを避けられるという方法は、現時点では確立していません。すでに飼っている方は、品種のせいだと考える必要はありませんし、これから飼う方は品種選びよりもあとで説明する環境の整えかたのほうが確実です。
うさぎアレルギー
うさぎ(ウサギ)を飼う方が増えるとともに、うさぎアレルギーのご相談も増えています。症状は猫アレルギー・犬アレルギーと同じで、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、咳、じんましん、湿疹などです。
うさぎの主なアレルゲンは Ory c 1 で、主に唾液に含まれ、毛やフケ、尿にも含まれます。もうひとつの Ory c 3 は、猫の Fel d 1 と同じセクレトグロビンという仲間のたんぱく質で、猫アレルギーの方がうさぎでも症状が出やすい理由のひとつとして指摘されています。「猫アレルギーだけど、うさぎは大丈夫ですか」というご質問には、大丈夫とは言い切れません、というのが正直な答えです。
もうひとつ、うさぎの飼い主さんで見落とされやすいのが牧草です。主食のチモシー(オオアワガエリ)やカモガヤはイネ科の植物で、乾草を扱うときに大量の花粉やほこりを吸い込みます。うさぎ本体の検査が陰性なのに症状が続く場合、原因が牧草のことがあります。牧草を替える、屋外で袋詰めする、扱うときにマスクをする、といった対応で変わることがあります。
うさぎアレルギーの検査では、うさぎ(ウサギ上皮)の特異的IgEに加えて、必要に応じてイネ科の牧草も一緒に調べます。どちらが原因かで対策がまったく変わるためです。
花粉症との関係と見分けかた
「花粉症と猫アレルギーは関係ありますか」というご質問をよくいただきます。原因は別のものですが、症状は重なります。見分けかたでいちばん役に立つのは、症状が出る時期です。
花粉症は毎年決まった時期にだけ症状が出ます。動物アレルギーは通年性で、一年じゅう症状があり、その動物に近づくと悪化します。実家に帰ると悪くなる、ペットのいる部屋で寝ると朝がつらい、という形で気づかれます。
やっかいなのは両方を持っている場合です。花粉が飛ぶ時期は鼻や目の反応が起きやすい状態になっているため、ふだんは平気な量のペットのアレルゲンでも症状が出ることがあります。「春だけ猫がつらい」という訴えは、花粉症の合併を疑う手がかりです。
通年で症状があるのか、季節性なのか、両方なのかは、血液検査で花粉とペットのアレルゲンを同時に調べれば整理できます。
動物アレルギーではないこともあります
ペットのいる部屋で症状が出るからといって、原因が動物とは限りません。次のようなものも一緒に考えます。
検査と結果の見かた
皮屑とは何ですか(ネコ皮屑とは・イヌ皮屑とは)
健康診断や他院のアレルギー検査の結果に、ネコ皮屑、イヌ皮屑、犬皮屑、猫皮屑と書かれていて、意味が分からないというご相談をよくいただきます。皮屑とは何か、猫皮屑とは何か、イヌ皮屑とは何かを説明します。
皮屑は「ひせつ」と読み、はがれ落ちた皮膚のかけら、いわゆるフケのことです。ネコ皮屑は猫のフケ、イヌ皮屑は犬のフケを材料にした検査項目の名前で、そのままアレルギー検査の項目名として使われています。動物上皮アレルギーと呼ばれることもあります。
「犬猫皮屑ミックス」という項目は、犬と猫をまとめて一度に調べるためのものです。まとめて陽性と出た場合、どちらが原因かまでは分かりませんので、必要に応じて犬と猫を別々に調べ直します。
つまり「ネコ皮屑が陽性」とは「猫アレルギーの抗体を持っている」という意味です。ただし、これがそのまま「猫と暮らせない」という意味ではありません。次の項目で説明します。
血液検査(特異的IgE)で何を調べるか
動物アレルギーの検査は、血液検査(特異的IgE抗体検査)が中心です。採血は数分で終わり、結果は後日のご説明になります。当日その場でお伝えすることはできません。
保険診療で調べられるのは13項目までです。何を選ぶかが結果の役立ちかたを決めるため、飼っている動物、症状が出る場所と時期、住まいの状況をうかがったうえで診察で決めます。
| 状況 | 調べることが多い項目 | 何のために調べるか |
|---|---|---|
| 猫を飼っている・猫で症状が出る | ネコ皮屑、イヌ皮屑、ヤケヒョウヒダニ、ハウスダスト | 猫への感作を確認し、同時にダニの合併がないかを見る。ダニは治療の選択肢が変わるため必ず一緒に調べる |
| 犬を飼っている・犬で症状が出る | イヌ皮屑、ネコ皮屑、ヤケヒョウヒダニ、ハウスダスト | 犬だけなのか猫にも反応しているのかを分ける |
| うさぎを飼っている | ウサギ上皮、オオアワガエリ(チモシー)、カモガヤ、ネコ皮屑 | うさぎ本体が原因か、主食の牧草が原因かを分ける |
| 季節でも悪化する | スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなどの花粉 | 通年性の動物アレルギーに花粉症が重なっていないかを確認する |
| 咳やゼーゼーがある | 上記に加えて非特異的IgE、末梢血好酸球数 | 喘息が隠れていないかを評価する材料にする |
猫や犬の毛そのものを調べる検査はありません。検査に使われるのは皮屑(フケ)です。また「犬猫皮屑ミックス」は1項目として数えられますが、陽性のときにどちらが原因か分からないため、当院では最初から犬と猫を分けて調べることが多いです。
検査結果の見かたと、猫アレルギーの調べ方
特異的IgEの結果はクラス0から6の7段階と、数値(UA/mL)で示されます。クラスが高いほど抗体の量が多いことを意味しますが、クラスの高さがそのまま症状の重さを表すわけではありません。
判断のしかたは単純です。「症状が出ている」かつ「その項目が陽性」であれば、その動物が原因である可能性が高いと考えます。症状がないのに陽性なだけ(感作のみ)であれば、いま何かをする必要はありません。逆に、検査が陰性でも症状の出かたが典型的であれば、動物アレルギーとして治療を始めることがあります。
猫アレルギーの調べ方を整理すると、①症状の記録、②血液検査(特異的IgE)、③皮膚プリックテスト、の3つです。「猫アレルギーの検査は無駄ですか」というご質問がありますが、無駄ではありません。ただし、検査だけで結論を出すためのものではなく、症状の記録と組み合わせて初めて意味を持ちます。いつ、どこで、何をしているときに症状が出たかをメモしてお持ちいただくと、検査の選びかたも解釈も精度が上がります。
皮膚プリックテスト
当院では皮膚プリックテストを実施しています。腕の皮膚にアレルゲンの液を1滴たらし、専用の細い針で軽く刺して、15分後に皮膚の反応(膨疹)の大きさを見る検査です。
血液検査と違い、その日のうちに結果をご説明できます。痛みはごく軽く、お子さんでも受けられます。血液検査が陰性なのに症状が続く場合や、結果を早く知りたい場合に選択肢になります。
当院では実物を使うプリック・プリックテストも行えます。ご自宅のペットの毛やフケを持参いただいて調べる方法についても、診察でご相談ください。
喘息が隠れていないかを確かめます
動物アレルギーで当院がもっとも重視しているのが、喘息の合併の確認です。猫アレルギーや犬アレルギーは、成人喘息の原因および悪化因子として知られています。鼻の症状だけだと思っていた方に、実は軽い喘息が隠れていることがあります。
見つけずに放置すると、発作を起こしてから救急受診することになります。逆に見つけて治療を始めれば、ペットと暮らしながら症状を抑えられることが多く、暮らしかたの選択肢が広がります。
当院では次の2つの検査を院内で実施できます。どちらも息を吸って吐くだけで、痛みはありません。
| 検査 | 何がわかるか | 所要時間 |
|---|---|---|
| 呼吸機能検査(スパイロメトリー) | 息の吐きやすさを測り、気道が狭くなっていないかを調べます。気管支拡張薬の前後で比較することもあります | 5〜10分 |
| 呼気NO検査(FeNO) | 吐く息に含まれる一酸化窒素の濃度から、気道にアレルギーの炎症が起きているかを調べます | 数分 |
猫や犬に近づくと咳が出る、夜中や明け方に咳で目が覚める、風邪のあと咳だけが長引く、階段や坂道で息が切れるようになった。ひとつでも当てはまる方は、鼻の症状だけのつもりでもこの2つを受けておく価値があります。
調べられないものもあります
誤解の多いところなので、はっきりお伝えします。Fel d 1、Can f 1、Can f 5、Ory c 3 といった個々のたんぱく質(コンポーネント)を1つずつ測る検査は、日本の一般的な検査会社で受託されておらず、当院にかぎらずどの医療機関でも保険診療では行えません。自費なら測れる、大きな病院なら測れる、というものでもありません。
たとえば Can f 5 はオスの犬にだけ含まれるたんぱく質で、これだけに反応している方はメスの犬なら症状が出ないことがあります。理屈のうえでは知りたい情報ですが、日常の診療で測る手段がないため、実際には症状の出かたから推測します。
保険で調べられるのは「ネコ皮屑」「イヌ皮屑」「ウサギ上皮」といったアレルゲン全体に対する抗体です。ここで測れるものと測れないものを整理しておくと、余計な検査を探して回らずに済みます。
治療とペットと暮らす工夫
治療の考えかた
動物アレルギーの治療は、①アレルゲンを減らす環境の工夫、②症状を抑えるお薬、③喘息が隠れていればその管理、の3本立てです。この3つは、どれかひとつだけでは足りません。
当院では「ペットを手放してください」とは申し上げません。ペットとの暮らしは生活の一部であり、症状だけを見て決められるものではないからです。まず環境の工夫と薬でどこまで抑えられるかを一緒に見きわめ、それでも喘息の発作をくり返すなど健康上の不利益が大きい場合に、はじめて暮らしかたそのものを一緒に考えます。
大切なのは、我慢して悪化させないことです。動物アレルギーを放置すると、鼻炎から喘息へ進むことがあります。早く手を打つほど、ペットと暮らし続けられる可能性は高くなります。
ペットと暮らし続けるための工夫
もっとも効果が大きいのは寝室からの隔離です。人は1日の3分の1近くを寝室で過ごし、その間ずっと同じ空気を吸っています。ここを守れるかどうかで、日中の症状の重さが変わります。順番に取り組めるよう、効果の大きいものから並べました。
ペットを飼っていない方の対策
猫アレルギーの方は、猫を飼っていなくても症状が出ます。友人宅、実家、猫カフェ、職場に猫を飼っている同僚がいる、といった場面で困る方が少なくありません。
お薬による治療
環境の工夫だけでは足りない部分をお薬で補います。症状が出ている場所によって、使う薬が変わります。
| 症状 | 主な治療 | 特徴 |
|---|---|---|
| くしゃみ・鼻水 | 抗ヒスタミン薬(内服) | 効果が出るのが早く、飲んだその日から効きます。眠気の出にくい薬を選べます |
| 鼻づまり・頭痛 | 鼻噴霧用ステロイド薬(点鼻) | 鼻の症状にはもっとも効果が高い治療です。毎日続けて使うことで効いてきます。鼻づまりが改善すると頭痛も軽くなることがあります |
| 目のかゆみ・充血 | 抗アレルギー点眼薬 | 症状のある期間に使います。コンタクトレンズの扱いは薬によって違うため、診察でご確認ください |
| 咳・ゼーゼー | 吸入ステロイド薬(喘息と診断された場合) | 気道の炎症そのものを抑えます。症状がない日も続けることが前提の薬です |
| 皮膚のかゆみ・湿疹 | 外用薬(塗り薬)と保湿、抗ヒスタミン薬 | 掻き壊しを防ぐことが重要です。長引く場合はアトピー性皮膚炎としての治療を考えます |
症状が出るのが猫や犬に会うときだけであれば、そのときだけ内服する使いかたもできます。毎日飲まなければいけない薬ばかりではありません。
お薬の副作用と注意点
お薬にはそれぞれ注意点があります。次の点をご確認ください。気になる症状が出たときは自己判断で中止せず、ご相談ください。
猫アレルギー・犬アレルギーの免疫療法(減感作療法)はありますか
「猫アレルギーの免疫療法を東京で受けたい」というお問い合わせをいただきます。正直にお答えします。猫・犬・うさぎに対する免疫療法(減感作療法)は、日本では行えません。国内で承認され保険で使える製剤が存在しないためです。
日本で保険診療として受けられる舌下免疫療法は、スギ花粉症とダニによるアレルギー性鼻炎の2つだけです。当院ではこのダニとスギの舌下免疫療法を行っています。
ここで意味があるのは、動物アレルギーの方の多くがダニアレルギーを合併しているという点です。ダニの治療で全体の反応しやすさが下がると、同じ量のペットのアレルゲンでも症状が出にくくなることがあります。猫そのものへの治療ではありませんが、結果として猫と暮らしやすくなる方はいます。血液検査でダニが陽性かどうかを確かめる価値はここにあります。
なお、猫アレルギーが「治る」薬は現時点でありません。症状を抑えながら暮らす、というのが今の医療でできることです。
症状が重いとき・喘息を合併しているとき
通常の薬でコントロールできない重症の喘息や、重症のスギ花粉症を合併している場合には、生物学的製剤という選択肢があります。当院ではゾレア(オマリズマブ)やデュピクセント(デュピルマブ)を扱っています。
ただし、これらの薬が使えるのは決められた病気と重症度に限られます。動物アレルギーによる通年性の鼻炎そのものに使えるわけではありません。喘息やスギ花粉症、アトピー性皮膚炎、じんま疹といった合併症の重症度に応じて検討します。
まずは合併している病気があるかどうか、あるとすればどの程度かを評価するところから始めます。
これからペットを飼おうと思っている方へ
すでにアレルギーの症状がある方や、ご家族に喘息の方がいる場合は、飼いはじめる前に一度アレルギー検査を受けておくことをおすすめします。飼ってから困るより、あらかじめ分かっているほうが、住まいの作りかたも含めて準備ができます。
検査が陽性でも、必ず飼えないという意味ではありません。寝室を分ける前提で間取りを考える、カーペットを敷かない、空気清浄機を最初から用意する、といった準備ができるかどうかで、その後が変わります。
すでにダニアレルギーやハウスダストアレルギーがあって「猫を飼っていいか」と迷っている方も同じです。ダニの治療を先に始めておくと、飼いはじめてからの負担が軽くなることがあります。
費用の目安
健康保険3割負担の場合の目安です。実際の費用は検査する項目数や処方する内容によって変わります。
血液検査は特異的IgE抗体1項目110点で、保険で算定できるのは13項目までです。13項目に免疫学的検査判断料144点を加えた1,574点が3割負担で約4,720円になります。皮膚プリックテストは21箇所以内で1箇所16点(22箇所以上は1箇所12点)で、これに使用するアレルゲン試薬の薬剤料が加わります。呼吸機能検査は判断料を含めて335点、呼気NO(FeNO)検査は判断料を含めて295点です。同じ日に両方を行った場合は判断料が重複しないため、単純な足し算にはなりません。実際の金額は診察のときにご案内します。お薬の欄は薬剤料のみの目安で、診察料・調剤料は別にかかります。2026年8月時点の診療報酬・薬価にもとづく目安です。
よくある質問
猫アレルギーの症状にはどんなものがありますか?+
猫アレルギーと犬アレルギーの違いは何ですか。どちらが多いですか?+
猫アレルギーですが犬は大丈夫でしょうか。犬アレルギーですが猫は大丈夫ですか?+
猫アレルギーの割合はどのくらいですか。何人に1人ですか?+
猫の毛アレルギーと聞きましたが、毛が原因なのですか?短毛種なら大丈夫ですか?+
猫を飼っていないのに猫アレルギーと言われました。検査が間違っているのでしょうか?+
ペットと一緒に暮らし続けることはできますか?+
空気清浄機は効果がありますか。おすすめの選びかたはありますか?+
猫アレルギーは治りますか。慣れることはありますか?+
猫アレルギーの免疫療法(減感作療法)を東京で受けられますか?+
「ネコ皮屑」「イヌ皮屑」「犬猫皮屑ミックス」とは何ですか?+
うさぎアレルギーの症状と検査を教えてください。猫アレルギーですが、うさぎは大丈夫ですか?+
うさぎの牧草(チモシー)で症状が出ることがあるのですか?+
花粉症と猫アレルギーは関係がありますか。どう見分ければよいですか?+
猫アレルギーで熱が出ることはありますか。吐き気や気持ち悪さは?+
猫アレルギーで頭痛が起きることはありますか?+
猫アレルギーで目が腫れる・目がかゆいときはどうすればよいですか?+
猫アレルギーの症状は、猫から離れてどのくらいで治まりますか?+
猫アレルギーは遺伝しますか。子どもがペットを飼っても大丈夫ですか?+
ハウスダストアレルギー・ダニアレルギーですが、猫を飼うことはできますか。犬を飼うのはどうですか?+
動物アレルギーは何科を受診すればよいですか。検査の結果は当日わかりますか?+
猫を飼っていると豚肉で症状が出ると聞きました。関係がありますか?+
猫や犬と暮らしていてくしゃみや目のかゆみが続く、実家の猫に会うと具合が悪くなる、健康診断で「ネコ皮屑」「イヌ皮屑」が陽性と出た。当院は飼うのをやめてくださいとは申し上げません。何に反応しているのかを検査で確かめ、喘息が隠れていないかを呼吸機能検査とFeNOで調べたうえで、環境の工夫と薬で一緒に暮らし続ける方法をご提案します。豊洲駅から徒歩3分、土日も診療しています。
本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断と治療の方針は、症状・年齢・生活環境・検査結果をふまえて診察のうえで判断します。記載は2026年8月時点の情報です。強い症状が出たときは、記載にかかわらず救急要請をしてください。
監修医師 石川 浩雅(豊洲イーウェルクリニック)
本ページの内容は、上記の医師が監修しています。
2006年 国立国際医療センター 初期研修、2008年 同センター 後期研修。2011年 東京医科歯科大学 医療経営政策学。第一生命保険株式会社、株式会社Linc'well/クリニックフォア、医療法人社団シンシアエージェンシーを経て、2025年11月 東京都江東区豊洲に「豊洲イーウェルクリニック」開院。内科・皮膚科・アレルギー科を中心に、小児から泌尿器科領域まで幅広く診療しています。渡航ワクチンの接種にも対応しています。日本渡航医学会、日本旅行医学会、日本内科学会、日本アレルギー学会、日本産業衛生学会 所属。
