デュピクセント
アトピー性皮膚炎に対するデュピクセントとは
「炎症」「かゆみ」「バリア機能の低下」の悪循環をまとめて断ちます
アトピー性皮膚炎は、「炎症」「かゆみ」「皮膚のバリア機能の低下」という3つの要素が関係しあい、悪循環に至る病気です。炎症があるからかゆくなり、かいてしまうことでバリア機能がさらに落ち、そこからまた炎症が起こる、という繰り返しです。
デュピクセントは、この悪循環の引き金になっている「IL-4」と「IL-13」という2つの物質のはたらきを直接おさえる注射薬です。引き金そのものを止めるため、「炎症」「かゆみ」「バリア機能の低下」のすべてに対する効果が期待できます。塗り薬のように皮膚の表面から抑えるのではなく、体の内側から原因の信号を止める、という考え方の薬です。
皮下注射(皮膚のすぐ下に打つ注射)の薬で、点滴ではありません。ペン型とシリンジ型の2種類があり、ご本人・ご家族による自己注射に移行できます。
「寛解導入」にも「寛解維持」にも使います
デュピクセントは、炎症やかゆみをすみやかに抑える「寛解導入」のためだけの薬ではありません。症状が改善したあとに、皮膚の良い状態を保っていく「寛解維持」のためにも用いられます。
アトピー性皮膚炎の治療で目指しているのは、次のような状態です。単に湿疹が落ち着いているだけでなく、患者さんご自身が感じる症状やかゆみを含めて改善していることが大切だと考えています。
ステロイドの塗り薬とは、はたらき方も立ち位置も違います
デュピクセントはステロイドではありません。ステロイドの塗り薬が皮膚の炎症を幅広く抑えるのに対して、デュピクセントはIL-4とIL-13という特定の物質だけをねらって抑えます。ステロイドの飲み薬・注射のように、全身の免疫を広く抑える薬でもありません。
また、デュピクセントは塗り薬の代わりではなく、塗り薬と併用して使うことが前提の薬です。国の資料でも、抗炎症外用薬(ステロイド外用薬・カルシニューリン阻害外用薬)や保湿薬が適切に使われていることを確認したうえで治療を進めることとされています。デュピクセントを始めたあとも、保湿と必要な塗り薬は続けていただきます。乾燥肌の対策をやめてしまうと、バリア機能が下がって再燃の引き金になります。
塗る量を減らせる方は多くいらっしゃいますが、減らし方は皮膚の状態をみながら診察で決めます。自己判断で塗り薬を中止すると再燃することがあります。
同じ薬が、ほかの病気にも使われています
デュピクセントはアトピー性皮膚炎だけの薬ではなく、気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、結節性痒疹、特発性の慢性じんま疹にも承認されています。同じIL-4・IL-13のはたらきが、これらの病気にも関わっているためです。
このページはアトピー性皮膚炎に対する使い方をまとめたものです。じんま疹に対するデュピクセントについては専用のページをご用意していますので、そちらをご覧ください。
なお、スギ花粉症などの季節性アレルギー性鼻炎には適応がありません。承認されているのは「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎」です。
デュピクセントを始めるには
中等症以上の方が対象です。3つの条件を確認します
デュピクセントは中等症以上のアトピー性皮膚炎の方が対象の注射薬です。軽症の方には使用できません。次の3つを医師が確認したうえで、適応を判断します。
1. 今までの治療で効果が不十分な方
ステロイド外用薬やプロトピック軟膏などの塗り薬でコントロールが不十分な方が対象です。国の資料では、重症度に応じて推奨されるステロイド外用薬(ストロングクラス以上)やカルシニューリン阻害外用薬による適切な治療を、直近の6か月以上行っていることが目安とされています。
塗り薬にかぶれる、副作用が強く出るなどの理由で、塗り薬による治療を続けることが難しい方も対象になります。
つまり「塗り薬を試さずにいきなり注射」という使い方はできません。まだ塗り薬での治療を十分に行っていない方は、まずそこから一緒に組み立てていきます。
2. 年齢が生後6か月以上の方
以前は成人のみが対象でしたが、2023年9月から生後6か月以上の小児にも対象が拡大されました。お子さんの場合は、年齢と体重に応じて1回に使う量(200mgまたは300mg)と投与の間隔が変わります。
3. 一定以上の重症度を満たす方
国の資料では、次の3つの「いずれにも該当する」ことが目安とされています。ひとつでも満たさない場合は対象になりません。
| 指標 | 目安 |
|---|---|
| IGAスコア | 3以上 |
| EASIスコア | 全身で16以上。ただし顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹がある場合は、頭頸部のEASIスコアが2.4以上でも該当します |
| 体表面積に占める病変の割合 | 10%以上 |
顔の症状が強い方は、全身のEASIスコアが16に届かなくても対象になることがあります。数値の測定は診察時に行います。
EASIスコア・IGAスコアとは
EASIスコアは、体を頭頸部・体幹・上肢・下肢の4つに分け、それぞれについて「赤み」「腫れ・ブツブツ」「かき壊し」「皮膚の硬さ」の程度と、湿疹が広がっている面積を点数にして合計するものです。0から72点までの範囲で、点数が高いほど重症です。
IGAスコアは、医師が全体の重症度を0(消失)から4(重症)までの5段階で評価するものです。
体表面積に占める割合は、手のひら1枚分をおよそ1%として見積もります。10%はおおむね手のひら10枚分にあたります。
施設にも要件があります
デュピクセントは、どの医療機関でも使えるわけではありません。国の資料では、アトピー性皮膚炎の診断と治療に精通した医師が責任者として配置されていること(医師要件)、医薬品の情報管理体制が整っていること、喘息などの合併するアレルギー疾患やアナフィラキシーへの対応体制があることが求められています。医師要件としては、皮膚科の臨床研修を5年以上行っていること、またはアレルギー診療の臨床研修3年以上を含む6年以上の臨床経験があることが挙げられています。
当院はこれらの要件を満たす施設として、デュピクセントの導入と継続投与を行っています。
他院から転院を希望される方へ
すでに他院でデュピクセントを使用中の方も、当院で継続していただけます。受診時には、紹介元からの紹介状(診療情報提供書)を必ずお持ちください。
紹介状には、次の記載が必須です。いずれかの項目でも記載漏れがあると、当院でのデュピクセントの投与・処方はお受けできません。転院の前に、紹介元の医療機関でご確認ください。
効果・打ち方・副作用
16週間で、7割弱の方が湿疹の75%以上の改善に到達しています
16週間の投与で、7割弱の患者さんが治療前に比べて75%以上の湿疹の改善(EASI-75)を認めています。改善の度合い別にみると、次のような結果が報告されています。
数値は臨床試験の結果であり、効果には個人差があります。すべての方に同じ結果が得られるものではありません。
| 改善の度合い | 16週間で達成した方の割合 |
|---|---|
| EASI-50(湿疹が50%以上改善) | 80.2% |
| EASI-75(湿疹が75%以上改善) | 68.9% |
| EASI-90(湿疹が90%以上改善) | 39.6% |
2週間ほどで改善しはじめ、その状態が続きます
投与開始から2週間程度で湿疹が大きく改善しはじめます。かゆみについても、同じく2週間程度から大きく改善していきます。
デュピクセントとステロイド外用薬を併用した場合、湿疹の重症度スコア(EASI)は16週間の時点で平均80.1%改善し、52週の時点でも85.0%と、改善した状態を保つ効果が報告されています。効きはじめが早いだけでなく、良くなった状態を維持できることがこの薬の特徴です。
比較として、ステロイド外用薬だけを使った群(プラセボ+ステロイド外用薬)では、同じ16週の時点で48.6%、52週で60.8%の改善でした。塗り薬を続けても届かなかったところまで下げられる、というのがこの差の意味です。
| 時点 | 湿疹(EASIスコア)の平均改善率 |
|---|---|
| 16週間 | 80.1% |
| 52週間 | 85.0% |
デュピクセントとステロイド外用薬を併用した場合の数値です。
かゆみと自覚症状も改善します
かゆみや、アトピー性皮膚炎に伴う症状が大きく改善することが報告されています。かゆみ(NRS)は投与2週の時点で平均27.2%、16週の時点で56.6%改善しました。ステロイド外用薬だけの群では2週で19.6%、16週で30.6%でしたので、かゆみについても差がはっきり出ています。
16週間の投与で、皮膚の状態がほぼ消失した方(IGAが0または1)は38.7%、かゆみ(NRS)が3以上改善した方は65.7%、患者さんご自身が評価する症状(POEM)が4以上改善した方は77.3%と報告されています。
湿疹が落ち着いているかどうかだけでなく、かゆみで眠れない、集中できないといった生活への支障が減ることを、当院では治療の目標にしています。
お子さんでも同じように効果が期待できます
生後6か月以上のお子さんでも使用が可能です。デュピクセントとステロイド外用薬を併用した場合、湿疹の重症度スコア(EASI)は16週間の時点で平均62.4%改善し、52週の時点でも69.2%と改善が続くことが報告されています。
お子さんの場合は、年齢と体重に応じて1回に使う量(200mgまたは300mg)と投与の間隔(2週間ごとまたは4週間ごと)が変わります。
打ち方と、自己注射に移るまでの流れ
成人のアトピー性皮膚炎では、初回のみ600mg(300mgを2本)を使用し、以降は2週間に1回、300mg(1本)を投与します。
初回と2回目の投与はクリニックで行います。その際に打ち方をご説明し、ご本人・ご家族が安全に実施できることを確認したうえで、3回目からご自宅での在宅自己注射に移行します。在宅自己注射に移行すると、最大6本(12週間分)までまとめて処方することができ、通院の回数を減らせます。まとめて処方できる最大処方の本数は6本で、これを超えて出すことはできません。
保管と注射部位、使用後の廃棄
まとめて処方をお受けになる場合は、ご自宅での保管方法をあらかじめご確認ください。
いつまで続けますか。やめどきはありますか
「何回で終わり」と決まってはいません。国の資料では、投与開始から16週後までに治療反応が得られない場合は中止することとされており、まずは16週を効果判定のひとつの目安としています。
一方で、塗り薬との併用でおおむね6か月ほど良い状態が保てた場合には、塗り薬や保湿薬が適切に使えていることを確認したうえで、いったん中止することを検討するとされています。やめたあとに再燃する方もいらっしゃいますが、その場合に再開するときは、開始時の重症度の条件をあらためて満たす必要はないとされています。
減らし方・やめ方は、症状・副作用・通院の状況をあわせて診察でご相談しながら決めます。自己判断での中断は避けてください。
副作用について
多くは軽度ですが、次のような副作用が報告されています。気になる症状が出たときは、次の受診を待たずにご相談ください。
投与に注意が必要な方
次に当てはまる方は、受診時に必ずお申し出ください。使えないという意味ではなく、確認や連携が必要になる、という意味です。
ほかのアレルギー疾患をお持ちの方へ
アトピー性皮膚炎以外のアレルギー性疾患(喘息、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、じんま疹など)を合併している場合は、必ず受診時にお伝えください。
あわせて、そのアレルギー性疾患の主治医にも、デュピクセントを使用していることを必ずお伝えください。デュピクセントは喘息や慢性副鼻腔炎にも効く薬のため、症状が軽くなったように感じることがあります。
自己判断で喘息・慢性副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・じんま疹などの治療薬を減量したり中止したりせず、必ず主治医の指示に従ってください。
高額療養費・付加給付のしくみ
デュピクセントは薬剤費が高額なため、多くの方が高額療養費制度の対象になります。1か月(暦月)に支払った自己負担額が上限額を超えた分が、あとから払い戻される制度です。上限額は年齢と所得によって決まります。
お勤め先の健康保険組合には、これとは別に独自の上限(付加給付)が設けられていることがあります。その場合、高額療養費で払い戻されたあとの負担額が、さらに組合から払い戻されます。下の図は、そのしくみを表したものです。
具体的にいくらになるかは、費用の一覧の注記にまとめています。
費用と、負担を軽くする制度
すべて健康保険3割負担の場合の目安です。デュピクセントによる治療は保険診療で行います(自由診療ではありません)。金額は2026年8月時点の薬価・診療報酬から計算した目安で、実際のお支払いは処方の内容によって変わります。
薬剤デュピクセント300mg 1本あたりの薬剤費約16,100円(3割負担の方)
薬価は「デュピクセント皮下注300mgペン 2mL」が1本53,659円、「300mgシリンジ 2mL」が1本53,493円です(3割負担でそれぞれ約16,100円・約16,050円)。お子さんなどで使う200mg製剤は、ペンが1本39,706円、シリンジが1本39,549円で、3割負担では約11,910円・約11,870円です。
薬剤初回投与(600mg・300mgを2本)の薬剤費約32,200円(3割負担の方)
成人のアトピー性皮膚炎では、初回のみ600mg(300mgを2本)を使用します。2回目からは1本です。
薬剤6本(12週間分)まとめて処方の薬剤費約96,600円(3割負担の方)
1日あたりに直すと約1,150円です(96,588円を84日で割った金額)。在宅自己注射では最大6本までまとめて処方できます。
管理料導入初期加算約1,740円(3割負担の方・導入後3か月)
在宅自己注射を導入した月から3か月間、月1回加算されます。4か月目からはかかりません。
合計自己注射での1か月あたりの合計(目安)約34,600円(3割負担の方)
薬剤2本と再診料・在宅自己注射指導管理料・処方箋料の合計です。導入後3か月は導入初期加算が加わり約36,300円になります。6本まとめて処方する月は約98,900円となり、その次の2か月は薬剤費がかからないぶん少なくなります。血液検査を行った月は検査料が加わります。
高額療養費制度をご確認ください。1か月(暦月)に支払った医療費の自己負担額が上限額を超えた場合、超えた分があとから払い戻される制度です。上限額は年齢と所得によって決まり、70歳未満で年収約370万〜770万円の区分では、ひと月の上限がおおむね8万円台になります。デュピクセントを6本まとめて処方する月は自己負担が約98,900円となるため、年収770万円未満の方は高額療養費の対象になります。一方、2本ずつ処方する月は約34,600円で上限に届かないことが多く、対象になりません。つまり「まとめて処方するかどうか」で年間の負担が変わります。どちらがよいかは診察でご相談ください。/限度額適用認定証をあらかじめご用意いただくと、窓口でのお支払いを上限額までに抑えられます(払い戻しを待つ必要がありません)。マイナンバーカードを健康保険証として利用している場合は、認定証がなくても同じ扱いになります。ご加入の健康保険にお問い合わせください。/直近12か月以内に3回以上上限額に達した場合は、4回目から上限額が下がります(多数回該当)。2週間に1回の投与を続けた場合、在宅自己注射の開始からおおむね9か月後以降が目安です。/お勤め先の健康保険組合には、独自に自己負担の上限を定めた付加給付制度がある場合があります。上限を超えた分が組合から払い戻されます。厚生労働省が指導している目安は25,000円程度で、それに近い金額が設定されていることが多いようです。協会けんぽと国民健康保険にはこの制度はありません。ご加入の組合にご確認ください。/18歳到達後の最初の3月31日までのお子さまは、お住まいの自治体の子ども医療費助成の対象となり、保険診療の自己負担分が助成されます。江東区にお住まいの場合も対象です。詳しくはお住まいの自治体にご確認ください。/学生の方は、加入している共済や自治体の医療費補助制度が使える場合があります。/生活保護を受けている方は医療扶助の対象となります。医療券の手続きが必要ですので、受診前に担当のケースワーカーにご相談ください。/薬価は「デュピクセント皮下注300mgペン 2mL」1本53,659円、診療報酬は在宅自己注射指導管理料650点・導入初期加算580点・初診料291点・再診料76点・処方箋料60点から計算しています(いずれも2026年8月時点の厚生労働省マスタの値)。
よくある質問
アトピー性皮膚炎でデュピクセントの効果はいつから出ますか。効き始めはいつごろですか?+
デュピクセントで太りますか。痩せることはありますか?+
いつまで続けますか。やめたらどうなるのか教えてください。+
顔の赤みだけが残ります。効いていないのでしょうか?+
ステロイドの塗り薬はやめてよいですか?+
目のかゆみや充血が出てきました。+
自分で注射できますか。まとめて処方してもらえますか?+
注射の間隔を3週間に1回や1か月に1回にできますか?+
1か月にいくらかかりますか?+
子供でも使えますか。副作用や医療費の助成が心配です。+
他院で使っています。転院できますか?+
デュピクセントは花粉症に使えますか?+
乾癬でもデュピクセントは使えますか?+
オンライン診療でも続けられますか?+
生活保護を受けています。使えますか?+
塗り薬を続けても十分に良くならない、費用が心配で踏み切れない、いま使っているが顔の赤みが残る、やめどきを相談したい。どの段階でもご相談いただけます。他院からの転院は紹介状をお持ちください。東京都江東区豊洲、有楽町線豊洲駅から徒歩3分。土日も診療しています。
- 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン デュピルマブ(遺伝子組換え)製剤(アトピー性皮膚炎)」
- 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎における生物学的製剤の使用ガイダンス」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
本ページは一般的な情報提供を目的としています。デュピクセントの対象になるかどうか、どの薬を使うかは、診察と検査のうえで医師が判断します。効果の数値は臨床試験の結果であり、個人差があります。すべての方に同じ結果が得られるものではありません。記載の内容と金額は2026年8月時点の電子添文・薬価・診療報酬にもとづきます。
監修医師 石川 浩雅(豊洲イーウェルクリニック)
本ページの内容は、上記の医師が監修しています。
2006年 国立国際医療センター 初期研修、2008年 同センター 後期研修。2011年 東京医科歯科大学 医療経営政策学。第一生命保険株式会社、株式会社Linc'well/クリニックフォア、医療法人社団シンシアエージェンシーを経て、2025年11月 東京都江東区豊洲に「豊洲イーウェルクリニック」開院。内科・皮膚科・アレルギー科を中心に、小児から泌尿器科領域まで幅広く診療しています。渡航ワクチンの接種にも対応しています。日本渡航医学会、日本旅行医学会、日本内科学会、日本アレルギー学会、日本産業衛生学会 所属。
