不整脈
不整脈について
この記事の要点
不整脈とは?(不正脈・脈の乱れ)
心臓は、洞結節という「発電所」から出る電気信号で動いています。信号が心房から心室へ順に伝わり、心臓の筋肉が縮んで、血液が押し出されます。この電気の流れが乱れた状態をまとめて不整脈と呼びます。
「不正脈」と書かれることもありますが、正しくは不整脈です。心臓の不整脈という言い方もされます。脈が速い(頻脈)・遅い(徐脈)・飛ぶ(期外収縮)のいずれも不整脈に含まれます。
不整脈は、それ自体が一つの病気の名前ではありません。心臓そのものの病気で起こることもあれば、甲状腺の病気、貧血、発熱、脱水、薬、ストレスなど、心臓の外に原因があることも珍しくありません。だからこそ、種類を確かめてから原因をさかのぼります。
不整脈の結滞とは — 「脈が飛ぶ」こと
結滞(けったい)とは、脈をとっているときに一拍だけ抜けたように感じることです。「脈が飛ぶ」「一瞬止まる感じがする」と表現される方が多く、診察の場では結滞という言葉を使います。
「結帯」と書かれることがありますが、正しくは「結滞」です。滞る(とどこおる)という字を使います。
結滞の正体は、多くの場合期外収縮です。予定より早いタイミングで余分な拍動が入り、その次の拍まで少し間があくため、触れている側では一拍抜けたように感じます。健康な方にも出ますし、年齢とともに増えます。ただし、頻度が多いとき、続けて出るとき、めまいや失神をともなうときは調べる必要があります。
徐脈とは・頻脈とは — 脈は1分間に何回から異常ですか
脈の速さは、1分間に何回打つか(脈拍数)で表します。安静にしているときの目安は次のとおりです。
| 脈拍数(安静時) | 呼び名 | どう考えるか |
|---|---|---|
| 50回未満 | 徐脈 | スポーツをしている方や睡眠中は正常なこともあります。ふらつき・失神をともなうときは、洞不全症候群や房室ブロックを考えます |
| 50〜100回 | 正常範囲 | — |
| 100回以上 | 頻脈 | 発熱・脱水・貧血・甲状腺の病気・薬・不安など、心臓の外に原因があることが多いです。突然始まって突然止まるときは発作性上室性頻拍、脈がまったく不規則なときは心房細動を考えます |
一般には1分間60回未満を徐脈と呼びますが、実際に対応が必要になるのは50回を下回るあたりからです。手首で15秒間数えて4倍すると、おおよその脈拍数が分かります。数えているうちにリズムが乱れる、飛ぶときは、その場でご相談ください。
期外収縮と動悸の違い
この2つは並べて比べるものではありません。期外収縮は心電図でつく所見の名前で、動悸はご本人が感じる症状の名前です。見ている場所が違います。
実際、期外収縮があっても何も感じない方が大半です。健康診断の心電図ではじめて指摘される方も多くいらっしゃいます。逆に、動悸を強く感じていても心電図はまったく正常ということもよくあります。この場合は、不安や緊張、貧血、甲状腺の病気などをさがします。
「感じ方の強さ」と「不整脈の危険度」は比例しません。そのため、症状だけで判断せず、心電図で確かめます。
不整脈にはどのような種類がありますか?
脈が遅くなるもの(徐脈性)と、脈が速くなるもの(頻脈性)に大きく分かれます。頻脈性はさらに、電気の乱れが起こる場所が心房側(上室性)か、心室側(心室性)かで分かれ、心室側のほうが慎重な対応を要します。
| 分け方 | おもなもの | どう考えるか |
|---|---|---|
| 徐脈性 | 洞不全症候群、房室ブロック | 電気が作られない、または途中で伝わらなくなります。数秒止まるとふらつきや失神が起こり、ペースメーカーが必要になることがあります |
| 頻脈性(上室性) | 心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍、上室性期外収縮 | 心房細動は脈がまったく不規則になり、心房の中で血のかたまりができて脳梗塞を起こすことがあります。見つかった場合は、血をさらさらにする薬(抗凝固薬)の必要性を判断します |
| 頻脈性(心室性) | 心室期外収縮、心室頻拍、心室細動 | 心室期外収縮は健康な方にもみられます。ただし続けて出るとき、心臓の病気が背景にあるときは、専門的な検査と治療が必要になります |
不整脈の症状は?
不整脈の出かたによって、感じ方は大きく変わります。まったく自覚がなく、健康診断の心電図で見つかる方も少なくありません。

不整脈と胸の痛み — 不整脈で胸が痛いことはありますか?
不整脈そのものが、はっきりした痛みを起こすことはあまりありません。脈が飛んだときに感じるのは、「ドキンとする」「一瞬つまる感じ」「胸がざわつく」といった感覚で、痛みとは少し違います。
ただし、脈がとても速い状態が続くと、心臓の筋肉に必要なだけの血液が回らなくなり、締めつけられるような胸の痛みが出ることがあります。また、もともと心臓の血管が細くなっている方では、不整脈が引き金になって痛みが出ることもあります。
大切なのは、胸の痛みを「不整脈のせい」と決めてしまわないことです。胸の痛みには、心臓以外にも肋骨まわりの痛み、肺、逆流性食道炎、帯状疱疹などさまざまな原因があり、不整脈と胸の痛みは別々に確かめたほうが確実です。
締めつけられる痛みが数分以上続く、冷や汗や吐き気をともなう、肩や顎に広がる——このようなときは、様子を見ずに救急要請をしてください。
不整脈の原因は? — 発熱・肺炎、アレルギーの薬、脱水でも起こります
不整脈というと心臓の病気を思い浮かべますが、実際には心臓以外がきっかけになっていることがよくあります。きっかけがはっきりしているものは、そこを整えるだけで治まります。
| きっかけ | なぜ脈が乱れるか | どうするか |
|---|---|---|
| 発熱・肺炎などの感染症 | 体温が1℃上がると脈は1分あたり10回ほど速くなります。炎症そのものも心臓の負担になります | 感染が治れば戻ります。解熱後も脈が速いまま、脈が不規則なときはご相談ください |
| 脱水・下痢・嘔吐 | 体の水分とカリウムが失われ、心臓の電気の流れが乱れます | 水分と電解質を補います。採血でカリウムを確認します |
| 極端なダイエット・欠食 | カリウムやマグネシウムが不足し、不整脈が出やすくなります | 食事の内容を見直します。短期間で体重が大きく減った方は採血をおすすめします |
| 甲状腺の病気 | 甲状腺ホルモンが多いと脈が速くなり、心房細動の原因にもなります | 採血(TSH・FT4)で調べます。治せる原因の代表格です |
| 貧血 | 酸素を運ぶ力が落ちた分を、心臓が回数で補おうとします | 採血で確認します |
| カフェイン・アルコール・睡眠不足 | 期外収縮が出やすくなります。とくに飲酒の翌朝の心房細動はよく知られています | まず量と時間帯を見直します |
| 薬 | 後述のアレルギーの薬のほか、ステロイド、喘息の吸入薬、一部の漢方(甘草によるカリウム低下)などがあります | お薬手帳をお持ちください。自己判断で中止せず、まずご相談ください |
| ピル(低用量ピル) | ピルそのものが不整脈を起こすことは多くありませんが、血のかたまりができやすくなります | 心房細動がある方では、服用の可否をあらためて検討します |
| 便秘・排便時のいきみ | 便秘そのものは不整脈の原因ではありません。ただし強くいきむと一時的に脈が遅くなり、トイレで気が遠くなることがあります | 便秘の治療を行います。排便時に意識が遠のいたことがある方はお伝えください |
花粉症・かぜの薬で起こる不整脈(脈が速くなる)
アレルギーの薬をのむと動悸がする、花粉症の時期になると脈が速い——これは実際に起こります。
とくに鼻づまりに効く成分(プソイドエフェドリンなど)を含む薬は、血管を縮めて鼻の通りをよくする一方で、脈を速くし、動悸として感じられることがあります。市販のかぜ薬や鼻炎薬にも入っていることが多い成分です。また、古いタイプの抗ヒスタミン薬にも脈を速くする作用があります。
いまお使いの薬を変えるだけで治まることがよくあります。眠くなりにくく、脈への影響が少ない薬もありますので、「アレルギーの薬をのむと動悸がする」とお伝えください。当院はアレルギー科を標榜しており、花粉症の治療と並行して調整できます。
一方で、アナフィラキシーのような強いアレルギー反応では、血圧が下がって脈が速くなります。これは薬の副作用ではなく緊急事態ですので、じんましんが全身に出て、息苦しさや意識のもうろうをともなうときは救急要請をしてください。
パニック障害・うつ病で脈が速くなる・脈が飛ぶ
不安や緊張が強いとき、脈は速くなります。これは体の正常な反応で、心臓そのものに異常があるわけではありません。パニック発作では、脈が急に速くなり、息苦しさ、手足のしびれ、「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖をともないます。
うつ病でも脈が速いことがあります。自律神経のはたらきが乱れるためで、眠れない、食欲がない、気分が晴れない、といった症状と一緒に出ることが多くみられます。
とはいえ、「気のせい」で片づけてはいけません。甲状腺機能亢進症は、動悸・体重減少・手のふるえ・いらいらを起こすため、不安障害とよく間違えられます。発作性上室性頻拍も、突然始まって突然止まるためパニック発作と似ています。
当院では、こうした体の病気がないことを先に確かめます。心電図と採血(甲状腺・貧血)で背景を除いたうえで、こころの面からの治療が必要なときは専門の医療機関と連携します。順番を逆にしないことが大切です。
不整脈で倒れることはありますか? — ストレスで倒れるときとの違い
「倒れた」原因は、大きく2つに分かれます。どちらも意識を失いますが、危険度がまったく違います。
ひとつは、ストレスや痛み、長時間の起立、採血、排便時のいきみなどで起こる失神です(血管迷走神経性失神といいます)。一時的に脈が遅くなり血圧が下がって起こるもので、命にかかわるものではありません。こちらのほうが圧倒的に多く、若い方にもよくみられます。
もうひとつは、不整脈そのものによる失神です。心臓が数秒止まる、あるいは極端に速くなって脳へ血液が送れなくなるために起こります。こちらは調べる必要があります。
| ストレスなどによる失神 | 不整脈による失神 | |
|---|---|---|
| 起こる場面 | 立っているとき、痛いとき、採血、人混み、トイレでのいきみ | 場面を選びません。座っていても、横になっていても起こります |
| 前ぶれ | あります。気持ち悪い、冷や汗、目の前が暗くなる、あくび | ないことが多いです。突然、前ぶれなく倒れます |
| 倒れ方 | しゃがみこむように、ゆっくり | その場に崩れ落ちるため、顔や頭にけがをすることがあります |
| 戻り方 | 横になるとすぐ戻ります | 数秒〜十数秒で戻ります |
前ぶれなく倒れた、けがをともなった、運動中に倒れた、家族に突然亡くなった方がいる——このいずれかにあてはまるときは、様子を見ずにご相談ください。車の運転をされる方は、原因がはっきりするまで運転を控えていただくことがあります。
難治性不整脈とは
難治性不整脈とは、薬を使ってもおさえきれない不整脈を指す言い方です。正式な病名ではなく、経過を表す言葉です。
薬でコントロールできない場合には、カテーテルアブレーション(心臓の中で不整脈の原因になっている場所を内側から焼いて、電気の回り道を断つ治療)や、ペースメーカー・植込み型除細動器(ICD)といった機器による治療を検討します。
これらは入院と専門設備を要するため、当院では行っておりません。必要と判断した場合は、心電図・ホルター心電図・採血の結果をそろえたうえで、循環器を専門とする医療機関へご紹介します。治療のあとの内服の継続や、定期的な検査は当院で承ることができます。
こんなときは早めに受診してください
次のような症状があるときは、様子を見ずにご相談ください。当院の診療時間外の場合は、救急外来の受診もご検討ください。
検査
不整脈はどのように診断しますか?
心臓超音波検査は当院では行っておりません。必要な場合は連携する医療機関へご紹介します。
不整脈の診断は、脈が乱れているその瞬間を記録できるかどうかにかかっています。受診されたときに出ていなければ、その場の心電図には写りません。そのため、記録する時間を延ばす検査を組み合わせます。
心電図の結果に出てくる略語(PAC・PVC・APB・NSVT)
報告書をお持ちいただければ、その場で内容をご説明します。健康診断で「要精査」とされた心電図についても承ります。略語だけでは危険度は決まりません。数(1日に何拍出ているか)と、心臓そのものに病気があるかどうかで判断します。
健康診断の心電図や、ホルター心電図の報告書にはアルファベットの略語が並びます。見慣れない言葉が続くと不安になりますが、多くは「余分な拍が出ています」という意味です。
なおECGは心電図そのものを指す略語です(英語の electrocardiogram、ドイツ語由来の EKG も同じ意味です)。
| 略語 | 正式な呼び方 | 意味 |
|---|---|---|
| PAC / APB / SVPC | 上室性期外収縮(じょうしつせいきがいしゅうしゅく) | 心房側から出る余分な拍。健康な方にもみられ、多くは経過を見ます。数が非常に多いときは心房細動が隠れていないかを確認します |
| PVC / VPC / VPB | 心室性期外収縮(しんしつせいきがいしゅうしゅく) | 心室側から出る余分な拍。こちらも健康な方にみられます。数が多いとき、続けて出るとき、心臓の病気があるときは詳しく調べます |
| NSVT | 非持続性心室頻拍 | 心室性期外収縮が3拍以上つながり、30秒未満で止まったもの。心臓の病気が背景にないかを確認します |
| AF / Af | 心房細動 | 脈がまったく不規則になります。脳梗塞の予防が必要かどうかを判断します |
| AVB | 房室ブロック | 心房から心室への電気の伝わりが遅れる・途切れるものです。程度によってはペースメーカーを検討します |
当院で行う検査
症状が出ているときに記録できるかが鍵です。受診時の心電図で捕まらないときは、24時間つけて記録する検査を行います。
| 検査 | 何を見るか | いつ行うか | 窓口負担の目安(3割) |
|---|---|---|---|
| 心電図 | その瞬間の心臓の電気の流れ | 受診時 | 約390円 |
| ホルター心電図(24時間) | 1日を通しての不整脈の出かた。症状との関連 | 受診時の心電図で捕まらないとき | 診察時にご案内します |
| 心エコー(心臓超音波) | 心臓の構造・動きに原因がないか | 必要に応じて。当院では行っておりません | 連携医療機関へご紹介 |
| 血液検査(甲状腺機能・電解質) | 甲状腺機能亢進症、カリウム異常など治せる原因 | 初診時 | 約1,300円〜
(項目数により変わります)
|
横にスクロールできます。金額は3割負担の方の目安で、採血を伴う検査は調べる項目数によって変わります。
心房細動が見つかった場合は、脳梗塞を防ぐ薬(抗凝固薬)の必要性を判断します。
診察料の目安
上の検査費用に加えて、診察料がかかります。3割負担の方の目安です。
初診:約870円/再診:約230円/処方箋料:約180円
このほか、慢性の病気で計画的に管理する場合は特定疾患療養管理料や生活習慣病管理料が加わることがあります。薬代は別に薬局でお支払いいただきます。
2026年8月時点の診療報酬にもとづく目安です。実際の金額は行った検査と加算によって変わります。
治療
不整脈の治療は? — 抗不整脈薬とは
不整脈が見つかったら必ず薬を飲む、というものではありません。期外収縮のように経過を見てよいものが大半で、まず行うのはきっかけを取り除くことです。睡眠不足、カフェイン、飲酒、脱水、甲状腺の病気、貧血、いま飲んでいる薬——ここが整うだけで治まる方が多くいらっしゃいます。
抗不整脈薬とは、心臓の電気の流れに直接はたらいて脈の乱れをおさえる薬の総称です。ナトリウム・カリウム・カルシウムの通り道に作用するものや、β遮断薬などがあり、不整脈の種類によって使い分けます。効く一方で、別の不整脈を誘発することもあるため、心電図で種類を確かめずに使うことはありません。
心房細動では、脈を落ち着かせる薬とは別に、脳梗塞を防ぐ薬(抗凝固薬)を使うかどうかを判断します。年齢、血圧、糖尿病、心不全、脳梗塞の既往などから危険度を点数にして決めます。
薬でおさえきれない場合や、ペースメーカーが必要と考えられる場合は、循環器を専門とする医療機関へご紹介します。
当院での不整脈の診療
豊洲イーウェルクリニックでは、次のように診療しています。ご不安な点は診察時にお聞かせください。
費用の目安
健康保険3割負担の場合の目安です。診察の内容や検査の項目によって変わります。
記載は3割負担の場合の目安です。このほかに処方箋料(約180円)とお薬代がかかります。診療内容により変わります。
よくある質問
脈が飛ぶのは危険ですか?+
脈拍はどうやって数えればよいですか?+
動悸がするとき、何科を受診すればよいですか?+
症状が出ていないときの検査でもわかりますか?+
健康診断で心電図の異常を指摘されました。受診したほうがよいですか?+
ストレスや寝不足でも不整脈は出ますか?+
治療が必要なのはどんなときですか?+
本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断と治療方針は診察のうえで判断します。症状が強いときや長引くときは、記載にかかわらず受診してください。
監修医師 石川 浩雅(豊洲イーウェルクリニック)
本ページの内容は、上記の医師が監修しています。
2006年 国立国際医療センター 初期研修、2008年 同センター 後期研修。2011年 東京医科歯科大学 医療経営政策学。第一生命保険株式会社、株式会社Linc'well/クリニックフォア、医療法人社団シンシアエージェンシーを経て、2025年11月 東京都江東区豊洲に「豊洲イーウェルクリニック」開院。内科・皮膚科・アレルギー科を中心に、小児から泌尿器科領域まで幅広く診療しています。渡航ワクチンの接種にも対応しています。日本渡航医学会、日本旅行医学会、日本内科学会、日本アレルギー学会、日本産業衛生学会 所属。
診療のご案内
内科・皮膚科・アレルギー科・泌尿器科を中心に、健康診断や予防接種、オンライン診療まで対応しています。
