逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)
胃食道逆流症とは?
胃食道逆流症は主に胃の中の酸が食道に逆流することにより胸やけや酸っぱいものがあがってくる症状を感じたり、食道の粘膜がただれたりする病気です。
《胃食道逆流症の原因》
❶ 胃酸分泌が多い
❷ 胃酸が長時間食道内に留まる
❸ 胃酸の逆流防止機能の障害
❹ 食道粘膜が過敏
胃酸の逆流は食後2-3時間に起こることが多く、食後に胸やけを感じる場合は胃酸の逆流による症状が疑われます。胸やけを感じる病気は逆流性食道炎のみではなく食道がんなど重大な疾患が隠れている可能性もあります。
胃食道逆流症(GERD)は内視鏡で胃と食道の接合部が赤く腫れていることを確認します。胃食道逆流症のうち40%では内視鏡の異常を認めますが、残りは異常を認めず非びらん性GERD(NERD)といいます。
逆流性食道炎の症状は?
逆流性食道炎の主な症状は胸やけです。
☑︎ 胸やけ(みぞおちの上の焼けるようなジリジリする感じ、しみる感じ)
☑︎ 呑酸(酸っぱいものが上がってくる)
☑︎ 胸のいたみ
☑︎ 長引く咳
☑︎ 膨満感や食後の胃もたれ
☑︎ ゲップ
逆流性食道炎は胃腸以外にもさまざまな症状が出現します。
☑︎ 長引く咳
- 会話時、起床時、食事中や体重増加に伴う乾いた咳が特徴的です。内服治療により数日で改善することが多いですが、2-3ヶ月かかることもあります。
- 気管支喘息患者では逆流性食道炎の悪化とも関わっていると考えられています。
☑︎ のどの痛み[咽頭逆流症 : LPRD)
- 胃酸などの逆流による粘膜の障害や逆流した胃酸による神経の刺激によると考えられています。
☑︎ 睡眠障害
- 逆流性食道炎患者の約半数が睡眠障害を伴っており更に生活の質の低下に繋がっています。胃酸の逆流による症状が睡眠障害につながり、不十分な睡眠障害自体が食道粘膜の知覚過敏につながり逆流性食道炎の症状を悪化させます。
- プロトンポンプ阻害薬を投与することで逆流性食道炎症状とともに睡眠障害も改善することが報告されています。
☑︎ 胸の痛み(逆流性胸痛症候群)
- 胸の痛みのうち心疾患がない非心臓性胸痛(NCCP)のうち20-40%が胃食道逆流症によるものとの報告があります。狭心症と非常に区別がつきづらい症状を起こすこともあるため、冠動脈造影検査などで検査を行います。
逆流性食道炎はどのように診断しますか?
胃食道逆流症は、自覚症状と上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)により診断されま す
❶ 問診による自覚症状の確認
典型的な症状は胸やけと呑酸ですが、咳などの胃腸以外の症状についても確認を行います。
❷ 上部消化管内視鏡検査
内視鏡により重症度を確認します。
正常(Grade LA-N)、Grade LA-M(Minimal change)→ A → B → C → Dの順に悪化します。
ただし、逆流性食道炎のうち10-71%は無症状、胃食道逆流症のうち約半数は非びらん性GERDであり自覚症状と内視鏡の重症度は一致しないこともあります。
逆流性食道炎はどのように治療しますか?
胃食道逆流症に対する治療では、胃酸の分泌を抑えるお薬が有効です。自覚症状 や食道炎の程度に応じて、酸分泌を抑える標準的なお薬であるプロトンポンプ阻害 薬(PPI)とより強力に酸分泌を抑えることができるお薬であるカリウムイオン競合型 アシッドブロッカー(P-CAB)の 2 種類が使われます。4 〜8 週間内服することで多くの患者さんの自覚症状は改善します。
❶ プロトンポンプ阻害薬(PPI)
ネキシウムなど
❷ カリウムイオン競合型 アシッドブロッカー(P-CAB)
タケキャブ
❸ 酸による刺激を弱める薬
アルロイドG内溶液(アルギン酸ナトリウム)
❹ 消化管運動改善薬
ガスモチン錠(モサプリド)
❺ 漢方薬
生活上の注意点は?
軽度の逆流性食道炎の場合、服薬をせず生活習慣の改善のみでも症状することがあります。治療により症状が改善しても再発する可能性があるため生活習慣の改善が重要です。
❶ 胃酸の分泌を誘発する食べ物の過度な摂取を避けましょう
- カフェイン(コーヒー・紅茶・抹茶・濃い緑茶)、唐辛子など刺激の強い食品、柑橘類などは胃酸の分泌を促し、逆流性食道炎を悪化させる可能性があります。
❷ 胃の中に食べた物が長時間胃にとどまるらないようにしましょう
- 甘いもの(あんこや饅頭、チョコレート)は胃の中にとどまりやすいです。
❸ 禁煙・飲酒を心がけましょう
- 喫煙や飲酒は下部食道括約筋が弛み、逆流性食道炎を悪化させやすいためできるだけ控えましょう。
❹ 夜間症状がある方への対応
- 遅いタ食(就寝前2時間)を避けましょう。
❺ 姿勢に注意して胃酸の逆流を抑えましょう
- 食べたあと、すぐに横になるのは避けましょう
- クッションなどで頭を高くして寝てみましょう。
❻ 腹圧の上昇に気をつけましょう
- コルセットや重いものの運搬、筋トレは腹圧がかかり逆流性食道炎を悪化させます。
- 炭酸飲料や食べ過ぎにも注意が必要です。
❼ 肥満があるかたは減量を心がけましょう
- 肥満は腹圧を上昇させて逆流性食道炎が悪化します。
よくある質問
どっちを下にして寝ると楽ですか?
左側臥位(左を下)にしましょう。左側や頭側挙上が夜間の逆流を軽減する可能性が示されています。右側は逆流が増える傾向があり、就寝前の飲食を避け、マットレス下に傾斜を付ける方法がおすすめです。
ストレスで悪化しますか?
直接の原因ではありませんが、ストレスや不安・抑うつは症状の感じ方を強めたり、症状と相互に悪循環を作ることが知られています。リラクゼーション・睡眠衛生の改善や必要に応じ心身両面のケアが役立ちます。
水を飲むと治りますか?
一時的に食道内の酸を洗い流して楽に感じることはありますが、治療そのものにはなりません。生活改善と薬物療法が基本です。
ヨーグルトは良い?チョコレートはダメ?
乳製品でも低脂肪なら問題ない方が多い一方、高脂肪は逆流を誘発しやすいです。チョコレートは下部食道括約筋(逆流防止の弁)をゆるめる報告があり、症状と相関する方は控えましょう。
いつまで薬を続けますか?
まず8週間で症状と粘膜の改善を評価し、その後は最少有効量での維持やオンデマンド(症状時のみ)の内服を検討します。重症びらん(LA C/D)や再発を繰り返す方、バレット食道合併例では継続治療が推奨されます。
受診のタイミングは?どんな症状は要注意?
以下は早めの内視鏡が推奨されます:嚥下困難、体重減少、吐血・黒色便、繰り返す嘔吐、貧血、胸痛。胸痛は心臓疾患との鑑別も重要です。
