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不妊と体重の関係 ― 妊娠しやすい体づくりと体重管理

[2026.06.22]

妊娠を希望される方にとって、年齢、排卵、精子の状態、子宮や卵管の状態など、妊娠に関わる要素はさまざまです。その中で、近年注目されているものの一つが「体重」です。

このコラムでは、体外受精などの不妊治療そのものではなく、妊娠を希望される前の段階で、体重や生活習慣を内科の立場から整える「妊娠前の健康管理(プレコンセプションケア)」についてお伝えします。なお、不妊の原因は体重だけではなく多岐にわたります。体重はあくまで関わる要因の一つです。

過体重や肥満は、女性・男性ともに妊娠しやすさに影響することがあります。特に、月経不順や排卵障害、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を伴う方では、体重管理によって排卵や月経周期が整うことがあります。

一方で、体重を減らせば必ず妊娠率や出産率が上がる、という単純なものではありません。妊娠を希望される方では、年齢や不妊治療のタイミングも大切です。当院では、体重だけに注目するのではなく、全身の健康状態や妊娠希望の時期を踏まえて、無理のないサポートを行います。不妊治療(体外受精・人工授精など)が必要な段階では、専門の医療機関をご紹介します。

なぜ体重が妊娠に影響するの?

過体重や肥満があると、体の中でインスリン抵抗性や慢性的な炎症が起こりやすくなります。これにより、ホルモンバランスが乱れ、排卵が不規則になったり、月経周期が乱れたりすることがあります。

特に女性では、以下のような影響が知られています。

  • 月経不順
  • 排卵障害
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)との関連
  • 妊娠までに時間がかかる
  • 流産や妊娠合併症のリスク上昇

また、妊娠成立後も、肥満は妊娠糖尿病、妊娠高血圧、帝王切開、巨大児などのリスクと関連します。そのため、体重管理は「妊娠しやすさ」だけでなく、「安全に妊娠・出産するための準備」としても大切です。

男性の体重も妊娠に関係します

不妊というと女性側の要因が注目されがちですが、男性の体重も妊孕性(妊娠する力)に関係します。

過体重や肥満は、男性ホルモンの低下、精子の数や運動率の低下、精子の質の低下、性機能の低下などと関連することがあります。また、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病も、性機能や妊孕性に影響する場合があります。

妊娠を希望する場合は、女性だけでなく、パートナーも含めて生活習慣を見直すことが大切です。

減量で妊娠しやすくなる?

過体重や肥満がある方では、体重の5〜10%程度の減量でも、月経周期や排卵が整う場合があります。特に、PCOSや月経不順がある方では、体重管理によって排卵が整うことがあります。

ただし、研究では「妊娠率」は改善する可能性がある一方で、「生児獲得率」、つまり最終的に無事に出産に至る割合まで明確に改善するかについては、まだ結果が一貫していません。減量によって排卵や月経周期が整う場合がありますが、妊娠・出産に至るかには個人差があります。

また、年齢が高い方、卵巣予備能が低い方、不妊期間が長い方、男性因子がある方では、減量だけを優先して不妊治療を長く遅らせることが、かえって不利益になる場合もあります。

そのため、当院では「まず痩せてから治療」と一律に考えるのではなく、必要に応じて不妊治療と体重管理を並行して進めることが重要だと考えています。

GLP-1受容体作動薬と体重管理

近年、体重管理の治療薬としてGLP-1受容体作動薬が使われる機会が増えています。GLP-1受容体作動薬は、食欲を抑えたり、血糖やインスリン抵抗性を改善したりすることで、体重減少をサポートする薬です。

肥満や過体重を伴うPCOSの方では、GLP-1受容体作動薬による体重減少やインスリン抵抗性の改善にともなって、月経周期や排卵が整う場合があると報告されています。ただし、これは肥満症の治療に伴う体の変化であり、GLP-1受容体作動薬は妊娠・不妊を治療する薬ではありません。妊孕性(妊娠する力)を高める効果や、体外受精の成功率・生児獲得率を高める効果が確立しているわけではありません。

GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病や肥満症など、適応を満たす方に対して医師の管理のもとで使用される薬です。主な副作用として、吐き気、嘔吐、下痢、便秘などがあり、まれに急性膵炎や胆石症などが報告されています。効果や副作用の現れ方には個人差があります。

また、妊娠中・授乳中はGLP-1受容体作動薬を使用できません。製剤によっては、妊娠を計画する一定期間前に中止する必要があります。中止のタイミングは薬の種類によって異なるため、自己判断で続けたり中止したりせず、必ず医師に相談しながら治療計画を立てましょう。服用中に妊娠が判明した場合は、直ちに中止し、医師にご連絡ください。

どのような方が相談の対象になりますか?(妊活は何科?)

「妊活や不妊は何科に相談すればいいの?」と迷われる方は多いです。以下に当てはまる方は、まず内科でのプレコンセプションケア相談として、一度ご相談ください。不妊治療そのものが必要な段階では、婦人科・生殖医療の専門施設をご案内します。

  • 妊娠を希望しているが、体重も気になっている
  • BMIが25以上である
  • 月経不順がある
  • PCOSを指摘されたことがある
  • 排卵が不規則と言われたことがある
  • 妊活前に体重や生活習慣を整えたい
  • 糖尿病、脂質異常症、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などがある
  • パートナーの体重や生活習慣も気になっている

体重管理は、短期間で無理に体重を落とすことが目的ではありません。妊娠に向けて、栄養状態を保ちながら、健康的に体を整えることが大切です。

当院でできること

当院では、妊娠を希望される方に対して、体重、月経周期、生活習慣、血糖、脂質、肝機能、睡眠状態などを確認しながら、妊娠前の健康管理をサポートします。

必要に応じて、食事・運動療法、生活習慣病の管理、肥満症の治療、睡眠時無呼吸症候群の評価などを行います。また、不妊治療専門施設での検査や治療が必要と考えられる場合には、適切な医療機関へのご紹介も可能です。

妊娠しやすい体づくりは、女性だけでなく、パートナーと一緒に取り組むことも大切です。妊活中の体重や生活習慣について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

まとめ

過体重や肥満は、女性では排卵障害や月経不順、男性では精子の質や性機能に影響し、妊娠しやすさに関係することがあります。

減量によって排卵や月経周期が整い、妊娠しやすい状態に近づく可能性があります。特に、PCOSや月経不順を伴う方では、体重管理が妊活の一つの選択肢になります。

一方で、体重を減らすことだけが妊活のすべてではありません。年齢や卵巣予備能、不妊期間、男性因子などを考慮しながら、体重管理と必要な検査・治療をバランスよく進めることが大切です。

※GLP-1受容体作動薬をはじめとする肥満症治療薬は、すべての方に使用できるわけではありません。適応、持病、内服薬、副作用のリスクを確認したうえで、医師が必要性を判断します。効果や副作用の現れ方には個人差があり、減量効果や妊娠・出産を保証するものではありません。保険適用とならない場合は自由診療(全額自己負担)となります。費用や治療内容の詳細は診察時にご説明します。

参考文献

  • American Society for Reproductive Medicine. Obesity and reproduction: a committee opinion. Fertility and Sterility. 2021.
  • Mutsaerts MAQ, et al. Randomized Trial of a Lifestyle Program in Obese Infertile Women. N Engl J Med. 2016.
  • Caldwell AE, et al. Effectiveness of preconception weight loss interventions on fertility in women with overweight or obesity: a systematic review and meta-analysis. Fertility and Sterility. 2024.
  • Jeong HG, et al. Effect of weight loss before in vitro fertilization in women with obesity or overweight and infertility: a systematic review and meta-analysis. Scientific Reports. 2024.
  • Zhou L, et al. Effects of GLP-1 receptor agonists on pregnancy rate and menstrual cyclicity in women with polycystic ovary syndrome: a meta-analysis and systematic review. BMC Endocrine Disorders. 2023.

 

 
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