酒さ
酒さについて
この記事の要点
酒さとは — ニキビとの違い
酒さ(しゅさ)は、顔の中央——頬・鼻・額・あご——に、赤み、ほてり、ぶつぶつ、細い血管が繰り返し出る、慢性の炎症の病気です。お酒が原因という意味の名前ではありません。お酒を飲まない方にも起こります。
ニキビといちばん間違えられます。見分けの決め手は「コメド(毛穴のつまり・白ニキビ)があるかどうか」です。酒さにはコメドができません。また酒さではほてり・ピリピリ感・つっぱりをともなうことが多く、赤みが背景にずっとあるのが特徴です。
ここを間違えると治療が逆方向に進みます。ニキビと思って強い薬を使うと、刺激で酒さが悪化することがあるためです。
酒さの種類(4つの型)
目の症状は見落とされがちです。酒さの方の3〜5割に眼の症状があるとされ、「ドライアイ」「ものもらいができやすい」と思っておられる方が少なくありません。思い当たる方はお伝えください。
酒さは出かたによって4つに分かれます。型によって効く薬が違うため、まずどれかを見きわめます。重なることもあります。
| 型 | どんな症状 | 効きやすい治療 |
|---|---|---|
| 紅斑毛細血管拡張型 | 顔がずっと赤い。ほてる。細い血管が透けて見えます。ピリピリ感をともないます | ミルバソゲル(血管を縮める塗り薬)。飲み薬は効きにくい型です。残った血管にはレーザー・光治療が有効ですが、当院では行っておりません |
| 丘疹膿疱型 | 赤い盛り上がりと膿をもったぶつぶつ。ニキビに似ますがコメドはできません | ロゼックスゲルが第一選択。強いときはビブラマイシンの内服を組み合わせます |
| 腫瘤型(鼻瘤) | 鼻を中心に皮膚が厚くなり、こぶのように盛り上がります。男性に多い型です | 早い段階では内服。進んだものは手術やレーザーが必要になり、専門の医療機関へご紹介します |
| 眼型(眼酒さ) | 目の充血、ごろごろする、まぶたの縁が赤い、ものもらいを繰り返す。皮膚の症状より先に出ることもあります | 眼科と連携します。内服(ビブラマイシン)が効くことがあります |
酒さの原因と、悪化させるもの
「これを食べたら悪くなる」は人によって違います。2週間ほど記録をつけていただくと、ご自身のきっかけが見えてきます。すべてを避ける必要はありません。当てはまるものだけを減らせば十分です。
原因はまだはっきりしていません。体質、皮膚のバリアの弱さ、毛穴に住むニキビダニ(毛包虫)、血管と神経の反応しやすさなどが関わると考えられています。
治療でいちばん確実なのは、悪化させるものを見つけて減らすことです。報告されている頻度は次のとおりです。
| きっかけ | どのくらいの方が該当するか |
|---|---|
| 日光 | 81% |
| ストレス | 79% |
| 寒暖差(暑さ・寒さ) | 75% |
| 運動 | 57% |
| 飲酒 | 56% |
| 花粉症の時期 | 花粉そのものというより、目や鼻をこする・鼻をかむ刺激で悪化します。花粉症の治療をあわせて行うと落ち着くことがあります |
| そのほか | 熱い飲み物、香辛料の効いた食べ物、入浴、サウナ、化粧品の刺激、一部の薬(ステロイド、血管を広げる薬) |
酒さと食べ物・飲み物 — 小麦・牛乳・ナッツは避けるべき?
結論から申し上げます。小麦・牛乳・ナッツを一律にやめる必要はありません。これらが酒さを悪化させるという確かな根拠はありません。
はっきりしているのは次の3つです。アルコール(約56%の方で悪化)、熱い飲み物(温度そのものが血管を広げます)、香辛料の効いた食べ物(カプサイシンが血管に作用します)。これらは血管を広げて赤みを強くするという仕組みがはっきりしています。
コーヒーは「熱いから」であって、カフェインのせいではありません。アイスコーヒーなら問題ないことが多く、むしろカフェインには血管を縮める作用があるという報告もあります。好きなものを一律にやめる前に、温度を下げてみてください。
そのうえで、個人差はあります。記録をつけて「自分の場合は小麦で悪くなる」と分かったのなら、それは避けていただいて構いません。根拠がないのは「みんなが避けるべき」という部分です。
酒さは顔以外(足・背中・手)にも出ますか
出ません。酒さは顔の病気です。頬・鼻・額・あごという顔の中央に出るのが特徴で、首や胸の上部にまで及ぶことはありますが、足・背中・手には出ません。
ですからそこに赤みやぶつぶつがある場合は、別の病気を考えます。脂漏性皮膚炎、ニキビ、毛包炎、湿疹、白癬(水虫)などが候補になります。顔の酒さと、体の症状は分けて診ます。
なお、顔の中でも「目のまわり」は酒さが出にくい場所です。まぶたに湿疹があるときは、化粧品や点眼薬によるかぶれを考えます。
酒さとピル(低用量ピル)の関係
ピルが酒さを起こすという根拠はありません。ただ「ピルを始めてから赤みが強くなった」とおっしゃる方はいらっしゃいます。
考えられる理由は2つです。ひとつはホルモンの変化が血管の反応に影響する可能性。もうひとつは、ピルを始める時期がたまたま酒さの出はじめと重なった可能性です。酒さは30〜50代で始まることが多く、時期が重なりやすいのです。
自己判断でピルをやめないでください。ピルには避妊以外にも目的があります。酒さの治療はピルを続けたままでもできますので、まず塗り薬から始めて様子を見ましょう。それでも関連が疑わしいときは、処方元の先生とご相談のうえ判断します。
こんなときはご相談ください
次のようなときは、市販薬で様子を見ずにご相談ください。
検査
酒さはどのように診断しますか
お薬手帳と、いま顔に塗っているものをすべてお持ちください。市販の化粧品・日焼け止め・軟膏も含めてです。診断がここで決まることがよくあります。
血液検査や特別な機械では分かりません。見た目と経過、そして「何を塗ってきたか」で診断します。
費用の目安
3割負担の方の目安です。診察料が別にかかります。
初診:約870円(再診 約230円)/処方箋料:約180円
このほかにお薬代が薬局でかかります。イベルメクチンクリーム(3,300円)とブリモニジンゲル(4,950円)、イソトレチノインは自費です。
2026年8月時点の診療報酬にもとづく目安です。
治療
酒さの塗り薬をくらべる — ロゼックス・ブリモニジン・イベルメクチン・アゼライン酸
酒さの治療は、塗り薬から始めます。当院で使えるのは次の3つで、保険で使えるもの、輸入して自費でお出しするもの、化粧品として買えるもの——立場がそれぞれ違います。
いずれも「赤いぶつぶつ(丘疹膿疱型)」に向いた薬です。赤みだけ・ほてりだけのタイプには効きにくいので、そちらは別の薬を使います(次の項でご説明します)。
日本で酒さに承認された塗り薬
ミルバソゲルの後発品です
国内では酒さに未承認
お薬ではなくスキンケア
4つは目的が違います。ぶつぶつ(丘疹膿疱)にはロゼックスゲルとイベルメクチンクリーム、赤みにはミルバソゲル、そしてアゼライン酸は毎日のスキンケアとして土台を整える役割です。ミルバソゲルは毎日続けると、効果が切れたときにかえって赤くなること(リバウンド紅斑)があるため、大事な予定のある日に使う、という形が向いています。ロゼックスゲルだけが保険で使えます。まずここから始めるのが基本です。
赤み・ほてりが主なとき — ミルバソゲル
赤みだけ、ほてりだけというタイプ(紅斑毛細血管拡張型)には、上の3つは効きにくいことがあります。このときに使うのがミルバソゲル(ブリモニジン)です。
血管を縮めて赤みを一時的に抑える薬で、塗って30分ほどで効き、半日ほど続きます。保険が使えます。ただし、病気そのものを治す薬ではありません。
効果が切れたときに、かえって赤くなることがあります(リバウンド紅斑)。毎日使い続けると起こりやすいので、大事な予定のある日に使うといった使い方が向いています。ロゼックスゲルとは目的が違うため、併用することもあります。
モイゼルト軟膏・プロトピック軟膏・ベピオゲルは酒さに使えますか
適応外の薬をお出しするかどうかは、診察のうえで判断します。効果と限界、費用のご説明をしたうえで決めますので、「ネットで見た薬を出してほしい」ではなく、「いま何に困っているか」をお聞かせください。
どちらもアトピー性皮膚炎の薬で、酒さには適応がありません。そのうえで、実際の診療では使われることがあります。使ってよい場面と、避けたい場面がはっきり分かれるため、整理します。
| 薬 | 酒さでの位置づけ |
|---|---|
| プロトピック軟膏 (タクロリムス) |
もっとも注意が要ります。顔に長く塗ると酒さ様皮膚炎を起こすことが報告されています。ステロイドをやめるときの橋渡しとして短期間使うことはありますが、酒さの治療薬として長く使うものではありません |
| モイゼルト軟膏 (ジファミラスト) |
刺激が少なく、赤みが主体のときに使われることがあります。ステロイドやプロトピックと違い酒さ様皮膚炎を起こしにくいと考えられていますが、酒さに対する効果は確立していません。適応外です |
| コレクチム軟膏 (デルゴシチニブ) |
モイゼルトと同じ位置づけです。適応外で、効果も確立していません |
| ステロイド外用薬 | 短期的には赤みが引きますが、やめると必ず悪化します。顔への長期使用は酒さ様皮膚炎の最大の原因です。酒さの治療としては使いません |
| ベピオゲル (過酸化ベンゾイル) |
ニキビの薬です。丘疹膿疱型に使われることがありますが、刺激が強く、酒さの皮膚では赤みが増すことがあります。使うなら少量・短時間から |
| ウフェナマート (コンベック・フエナゾールなど) |
ステロイドではない抗炎症の塗り薬です。作用は穏やかですが刺激が少なく、顔に使いやすいのが利点です |
ほかの塗り薬との併用 — プロトピック・モイゼルト・コレクチム・ベピオゲル
ロゼックスゲルでかぶれることもあります。塗ってからヒリヒリ・赤みが強くなるときは、酒さの悪化ではなく薬そのものへのかぶれかもしれません。いったん中止してご相談ください。基剤(ゲル)の刺激が合わないだけのこともあり、ほかの剤形に替えて続けられることがあります。
「ロゼックスゲルと◯◯を一緒に使ってよいか」——よくいただくご質問です。薬どうしが化学的に反応するという問題ではなく、「刺激が足し算になる」ことが問題になります。
| 組み合わせ | 考え方 |
|---|---|
| ロゼックスゲル + ミルバソゲル | 目的が違うので併用できます。ロゼックスで炎症を抑えつつ、赤みが気になる日にミルバソを使う、という形 自費 4,950円(税込) |
| ロゼックスゲル + プロトピック | おすすめしません。プロトピックは顔への長期使用で酒さ様皮膚炎を起こしうるためです。ステロイドからの離脱など、目的がはっきりしているときに短期間だけ |
| ロゼックスゲル + モイゼルト/コレクチム | 併用されることがあります。朝と夜で分けるなど、同時に重ねない使い方をします。いずれも適応外です |
| ロゼックスゲル + ベピオゲル | 刺激が強くなります。同時に重ねず朝夕に分ける、ベピオは短時間で洗い流すといった工夫をします |
酒さ様皮膚炎 — ステロイドやプロトピックで酒さになることがあります
顔にステロイドやプロトピックを長く塗り続けると、酒さそっくりの状態になります。これを酒さ様皮膚炎(ステロイド酒さ)といいます。
見分けかたは「薬をやめると悪くなる」ことです。塗っているあいだは赤みが引くのに、やめると数日で以前より赤くなる。そのため、また塗る。これを繰り返すうちに薬が手放せなくなります。
治療は、その薬をやめることです。ただしやめた直後に必ず悪化します(リバウンド)。ここを乗り切れずに再開してしまう方が多いのですが、2〜4週間がいちばんつらく、そこを越えると落ち着いていきます。
ひとりで我慢する必要はありません。当院では、ビブラマイシンの内服で炎症を抑えながら、刺激の少ない塗り薬に段階的に切り替えて、リバウンドをやわらげる形で進めます。自己判断で急にやめるより、計画を立てたほうが楽です。
飲み薬による治療
それでも足りないときは、イソトレチノイン(自費)を検討します。次の項でご説明します。
塗り薬だけで足りないときは、飲み薬という次の手があります。
| 薬 | 内容 |
|---|---|
| ビブラマイシン(ドキシサイクリン) ミノマイシン(ミノサイクリン) |
抗菌薬ですが、菌を殺す目的ではなく炎症を抑える目的で低めの量を使います。丘疹膿疱型にロゼックスゲルと組み合わせ、3か月ほどを目安に。赤みだけの型には効きにくいです。保険で使えます |
イソトレチノインの酒さへの効果
知っておいていただきたいこと。日本では未承認のため自費になります。強い催奇形性があり、女性は服用中と終了後6か月の避妊が必要です。そのほか乾燥(唇・目・皮膚)、肝機能や中性脂肪の変動、夜間の見えにくさなどがあり、定期的な採血をしながら進めます。酒さでは低用量から始めますので、ニキビの標準量よりも副作用は出にくくなります。
イソトレチノインは、もともと重症のニキビに使われるビタミンA誘導体の飲み薬です。酒さに対しても、ほかの治療で足りないときの選択肢になります。
効き方が、ほかの薬と違います。ロゼックスゲルやビブラマイシンが炎症を抑えるのに対し、イソトレチノインは皮脂腺そのものを小さくします。そのため皮脂の分泌が減り、毛穴の環境が変わり、ニキビダニの住みかも減ります。大もとから変えにいく薬だ、とお考えください。
| 何に効くか | どのくらい |
|---|---|
| 赤いぶつぶつ・膿疱(丘疹膿疱型) | もっともよく効きます。低用量(1日10〜20mg)でも、数か月で目に見えて減ることが多い治療です |
| 顔の赤み・ほてり | ある程度効きます。ただし広がった細い血管そのものは消えません。ここは薬の限界です |
| 鼻瘤(腫瘤型) | 早い段階であれば、進行を抑えられます。皮脂腺の増殖を抑えるためです。すでに大きく変形したものは戻りません |
| 治療をやめたあと | ニキビと違い、酒さでは中止後に再発することがあります。少量を長く続ける形をとることが多いのはこのためです |
毎日のスキンケアと日焼け対策
薬と同じくらい大切です。酒さの皮膚はバリアが弱く、刺激に反応しやすい状態にあります。
当院での酒さの診療
豊洲イーウェルクリニックでは、次のように診療しています。
費用の目安
健康保険3割負担の場合の目安です。診察の内容や検査の項目によって変わります。
記載は3割負担の場合の目安です。このほかに処方箋料(約180円)とお薬代がかかります。イベルメクチンクリーム(3,300円)とブリモニジンゲル(4,950円)、イソトレチノインは自費です。
よくある質問
酒さにモイゼルト軟膏は使えますか?+
酒さにプロトピック軟膏を使ってもいいですか?+
ロゼックスゲルとプロトピックは併用できますか?+
ロゼックスゲルでヒリヒリします。悪化しているのでしょうか?+
酒さとニキビはどう違いますか?+
酒さは足や背中にも出ますか?+
小麦や牛乳をやめたほうがいいですか?+
ピルを飲んでいます。やめたほうがいいですか?+
酒さは治りますか?+
酒さにイベルメクチンクリームは使えますか?+
酒さでレーザー治療は受けられますか?+
いま顔に塗っているものをすべてお持ちください。そこで方針が決まることがよくあります。土日も診療しています。
本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断と治療方針は診察のうえで判断します。症状が強いときや長引くときは、記載にかかわらず受診してください。
監修医師 石川 浩雅(豊洲イーウェルクリニック)
本ページの内容は、上記の医師が監修しています。
2006年 国立国際医療センター 初期研修、2008年 同センター 後期研修。2011年 東京医科歯科大学 医療経営政策学。第一生命保険株式会社、株式会社Linc'well/クリニックフォア、医療法人社団シンシアエージェンシーを経て、2025年11月 東京都江東区豊洲に「豊洲イーウェルクリニック」開院。内科・皮膚科・アレルギー科を中心に、小児から泌尿器科領域まで幅広く診療しています。渡航ワクチンの接種にも対応しています。日本渡航医学会、日本旅行医学会、日本内科学会、日本アレルギー学会、日本産業衛生学会 所属。
診療のご案内
内科・皮膚科・アレルギー科・泌尿器科を中心に、健康診断や予防接種、オンライン診療まで対応しています。
