イソトレチノイン
こんな方が対象です
妊娠中・授乳中の方、成長期の方などは受けられません。詳しくは下の「受けられない方」をご確認ください。
イソトレチノインの効果
皮脂の分泌を抑えます
内服により皮脂腺が縮小し、皮脂の分泌が大きく減ります。0.5〜1.0mg/kg/日の投与で、6週間以内に皮脂の排泄が90%程度減少したと報告されています。
毛穴の詰まりとアクネ菌
過剰な角化を抑えることで白ニキビの発生を抑えます。また毛穴の環境を変えることで、抗生物質よりもアクネ菌の増殖を抑え、赤ニキビの改善につながります。
中等症のニキビに20mg/日を投与して98.99%の患者で改善、重症のニキビに1mg/kg/日を投与して90%の患者で95%以上の炎症性ニキビの減少が報告されています。
治療を終えたあとも続く改善
4〜7ヶ月の治療を終えた方の約8割で、長期にわたりニキビの改善が続くことが分かっています。治療終了後10年の観察では、40%の方が追加治療を必要とせず、21%の方は外用薬のみで治療できたと報告されています(British Journal of Dermatology 1993;129:292-296)。
服用している期間しか効果がない他のニキビ治療薬と異なる点です。効果の出方には個人差があります。
効果はニキビだけではありません
イソトレチノインは皮脂腺そのものを小さくする薬です。皮脂を減らす薬ではなく、皮脂をつくる工場を縮める薬だとお考えください。ですから皮脂が多いことが背景にある悩みには、幅広く効果が期待できます。
| お悩み | どうしてよくなるのか | 量の目安 |
|---|---|---|
| 重症・くり返すニキビ ニキビ跡ができやすい |
皮脂を減らし、毛穴の詰まりをほどきます。炎症が起きる前に断つので、跡が残りにくくなります | 標準量 |
| 酒さ(しゅさ) 顔の赤み・ぶつぶつ |
赤いぶつぶつが出るタイプによく効きます。飲み薬や塗り薬で足りなかったときの選択肢です | 低用量 |
| 皮脂が多い 脂性肌・毛穴の開き・テカり |
皮脂腺が小さくなるので、皮脂の量そのものが減ります | 低用量 |
| 脂漏性皮膚炎 小鼻・眉間・生え際の赤みとフケ |
皮脂を好むカビ(常在菌)のえさが減るため、くり返す赤みとフケが落ち着きます | 低用量 |
| 脂腺増殖症 額や頬の黄色い小さな盛り上がり |
大きくなった皮脂腺そのものを縮めます | 低用量 |
ニキビ以外への使用は、国内で承認された使い方ではありません(自由診療)。海外の報告と当院の経験にもとづくご提案です。脂腺増殖症は、数が少なければサージトロンで取るほうが早いことがあります。
低用量という選び方
強い薬を短く飲むか、弱い薬を長く飲むか。イソトレチノインには、この2つの進め方があります。
標準量は効果がはっきり出る代わりに、乾燥や口唇炎といった副作用もはっきり出ます。
低用量(1日10〜20mg)は、副作用がぐっと軽く、日常生活への影響が少ないのが利点です。酒さ・皮脂・脂漏性皮膚炎・脂腺増殖症にはこちらを使います。ニキビでも、仕事や学業の都合で乾燥を強く出したくない方には低用量から始めます。その分、効き始めるまでの時間は長くかかります。
低用量で始めて、途中で増やすこともできます。目的・急ぎ具合・生活に合わせてご相談しながら決めます。
投与量と期間
1日に何mg飲むのか — 体重で決まります
イソトレチノインの量は体重で決まります。一般的には体重1kgあたり0.5mg/日から始め、効き方と副作用を見ながら0.5〜1.0mg/kg/日の範囲で調整します。
当院では20mgから開始し、1か月後の様子を見て増量を検討します。最初から多く飲むほど早く治る、というものではありません。乾燥や口唇炎で続けられなくなるほうが遠回りになります。
| 体重 | 標準量の目安(0.5mg/kg/日) | 実際の処方 |
|---|---|---|
| 40kg前後 | 20mg/日 | 20mg × 1錠 |
| 50kg前後 | 25mg/日 | 20mg × 1錠(様子を見て増量) |
| 60kg前後 | 30mg/日 | 20mg × 1錠 → 40mg/日へ |
| 70kg前後 | 35mg/日 | 40mg/日 |
| 80kg前後 | 40mg/日 | 40mg/日 |
低用量で進める場合は、体重にかかわらず1日10〜20mgです。酒さ・皮脂・脂漏性皮膚炎・脂腺増殖症では、こちらが基本になります。
いつ終わるのか — 「合計何mg」ではなく「治りきってから」
「体重1kgあたり合計120mg飲まないと再発する」と説明されることがあります。これはもともと重症のニキビに向けた数字で、軽症〜中等症であれば、そこまで必要ないと考えています。
当院が目安にしているのは、合計量ではなく終わり方です。
ニキビが完全に消えてから、さらに1〜2か月続けて終わる。これがいまのところ、いちばん確からしい決め方です。
「完全に消えた」は、かなり厳しい意味です。赤いぶつぶつだけでなく、白ニキビ・黒ニキビ(面皰)まで含めて、見えるものがなくなった状態を指します。「だいぶきれいになった」でやめると、数か月後に同じところから出てきます。
この進め方をした研究では、合計量を目標にしなかったにもかかわらず、2年後に再発した方は10人に1人ほどでした。
何ヶ月かかりますか
おおよそ4〜6か月が目安です。低用量ならもう少し長くなります。ただし最初に「何か月で終わり」と決めるものではありません。ニキビの消え方を見ながら、終わりの時期を決めます。
飲み始めて1〜2週間は、いったん悪くなることがあります。これは想定内です。効果を感じ始めるのは1〜2か月後、いちばんよくなるのは飲み終えたあとで、内服後も数か月かけて改善が続きます。
飲み終わったあと — 塗り薬で維持すると再発が減ります
イソトレチノインは、やめたあとが本番です。内服を終えたあとに塗り薬を続けると、再発が減ります。
おすすめしているのはアダパレン(ディフェリンゲル)やその配合剤です。毛穴の詰まりができる前に流し続ける、という考え方で、保険適用の外用薬ですから費用の負担も大きくありません。
副作用
ほぼ全員に起こること — 乾燥
皮脂腺を小さくする薬なので、乾燥は副作用というより「効いている証拠」です。避けることはできませんが、備えれば十分に続けられます。
| どこが | どのくらいの方に | 対策 |
|---|---|---|
| くちびる(口唇炎) | ほぼ全員 | ワセリンやリップを1日に何度も。飲み始める前から塗り始めてください。ひび割れる前に守るのがコツです |
| 皮膚全体 | ほぼ全員 | 入浴後すぐの保湿。熱いお湯とゴシゴシ洗いは避けます |
| 鼻の中 | 3人に1人ほど | 鼻血が出やすくなります。強くかまない。乾燥するときは軟膏を少量 |
| 目 | 3人に1人ほど | ドライアイ・結膜炎。コンタクトレンズがつらくなる方が多く、内服中はメガネに切り替える方もいらっしゃいます |
よくあるが、対処できること
| 症状 | なぜ起こるか / どうするか |
|---|---|
| 便秘 | 腸の粘膜も乾くため、便が硬くなります。水分と食物繊維を意識し、それでもつらいときは下剤をお出しします。ただし強い腹痛・下痢が続く・血便があるときは別の話です(下の項をご覧ください) |
| 手の甲・手指の湿疹 | 乾燥からくる湿疹で、手をよく洗う方に出やすい症状です。保湿を厚くし、必要なら短期間だけステロイド外用薬を使います。手荒れがつらいときはご相談ください |
| 筋肉痛・関節痛 | 運動する方に出やすい症状です。激しい運動のあとに強く出ることがあります。内服中は運動量を少し落としていただくことがあります |
| 脱毛 | 20人に1人ほど。多くは内服を終えると戻ります |
| 日焼けしやすくなる | 光線過敏が起こります。日焼け止めを習慣にしてください |
| 皮膚が薄くなる | 内服中と内服後6か月は、レーザー・ピーリング・ワックス脱毛を避けてください。傷が残りやすくなります |
不正出血について
「飲み始めてから不正出血がある」というご相談をよくいただきます。多くは、避妊のために併用している低用量ピルによるもので、続けているうちに落ち着くことがほとんどです。
してはいけないのは、自己判断でピルをやめることです。この薬は妊娠中に飲むと胎児に重い影響が出るため、避妊は治療の一部です。出血が続くとき、量が多いときは、やめるのではなくご相談ください。ピルの種類を変えるなどの方法があります。
血液検査で見ていること
自覚症状が出ないまま進む副作用があるため、採血で確認します。当院では開始前・1か月後・以降も適宜採血をお願いしています。
| 見るもの | 起こりうること |
|---|---|
| 肝機能(AST・ALT) | 上がることがあります。多くは軽度で、程度によって減量または中止します |
| 中性脂肪・コレステロール | 上がりやすい項目です。大きく上がったときは減量します。極端な上昇は膵炎の原因になりうるため、ここは必ず見ます |
| 血球(貧血・白血球) | まれに変化します |
お酒の量が多い方、もともと中性脂肪が高い方は、上がりやすい傾向があります。内服中の飲酒は控えめにしてください。
まれですが、見逃してはいけないもの
次の症状があるときは、内服をいったん止めてご連絡ください。頻度は高くありませんが、続けてはいけないサインです。
妊娠について — ここだけは例外がありません
妊娠中に飲むと、胎児に重い影響が出ます。脳や心臓、耳、目の異常などが報告されています。可能性の話ではなく、はっきり分かっていることです。
飲む1か月前から、飲んでいるあいだ、そして飲み終えて1か月後まで、確実な避妊が必要です。低用量ピルとコンドームなど、2つの方法を併用していただきます。
男性の場合、精液を介した影響は報告されていません。ただし献血は、内服中と内服後1か月は避けてください(輸血で妊婦さんに渡る可能性があるためです)。
万一妊娠が分かった場合はただちに中止し、すぐにご連絡ください。
ほかの薬・ほかの病気との関係
| どうなるか | |
|---|---|
| テトラサイクリン系の抗菌薬 (ミノマイシン・ビブラマイシンなど) |
併用できません。脳の圧が上がる副作用が重なります。ニキビでこれらを飲んでいた方は、中止してから開始します |
| 花粉症・アレルギーの薬 | 併用できます。ただし抗ヒスタミン薬にも口やのどを乾かす作用があり、乾燥が重なって感じられることがあります。つらいときは薬の種類を調整します |
| アトピー性皮膚炎がある方 | 内服はできます。ただしもともと乾燥しやすい肌なので、乾燥の副作用が強く出ます。保湿をふだんより厚くし、湿疹が出たときの塗り薬も用意しておきます |
| ビタミンAのサプリメント | やめてください。ビタミンA過剰症になります |
| お酒 | 中性脂肪と肝機能に響きます。控えめに |
治療の進め方
開始前と開始後に血液検査を行い、副作用を早期に見つけながら進めます。
料金
すべて税込です。
アクネトレント(イソトレチノイン)20mg・30日分16,500円(税込)
1日1回1錠、食後に内服します。増量する場合の費用は診察時にご案内します。
アクネトレント(イソトレチノイン)20mg・7日分5,500円(税込)
まず短期間で試したい場合の処方です。
初診料[自由診療] 初回1,100円(税込)再診料[自由診療] 2回目以降550円(税込)
薬剤費のほかに、自費診療の初診料 1,100円(税込)、再診料 550円(税込)、採血 3,300円(税込)がかかります。自由診療のため公的医療保険は適用されません。
受けられない方・未承認医薬品等について
主な副作用と発生率:乾燥 100%/口唇炎 98%/顔の赤み 65%/粘膜炎 50%/乾燥肌 50%/結膜炎 40%/結膜炎・眼瞼炎 35%/鼻出血 35%/かゆみ 25%/脱毛 5%。皮膚と口・鼻・眼の粘膜の乾燥はほぼ全員に起こります。それぞれの副作用がいつ出て、どう対処するかはイソトレチノインの副作用のページで詳しくご説明しています。
まれな合併症として、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、アナフィラキシー、うつや自殺の報告があります。気分の変化を感じたら早めにご相談ください。
胎児への影響:中枢神経系の奇形、耳の欠損や奇形、目の異常、心奇形、口蓋裂、胸腺や副甲状腺の奇形が報告されています。内服期間中および内服の前後1ヶ月は必ず避妊してください(低用量ピルとコンドームなど複数の方法を併用)。妊娠が判明した場合は服用を中止し、すぐに担当医にご相談ください。
肝機能障害:投与前、投与1ヶ月後、以降も適宜血液検査が必要です。当院では副作用の早期発見のため定期的な採血をお願いしています。
受けられない方:妊娠中・妊娠の疑いのある方/授乳中の方/成長期の方(骨端線の閉鎖により身長が伸びにくくなる可能性があります)/イソトレチノイン製剤・トレチノイン製剤・ビタミンAでアレルギーを起こしたことのある方/テトラサイクリン系の薬剤を内服中の方(ミノマイシン、ビブラマイシン、レダマイシン、アクロマイシンV)/重篤な肝機能障害・腎機能障害のある方/中性脂肪・コレステロールが非常に高い方/ビタミンA過剰症の方。
未承認医薬品等:イソトレチノインは、ニキビ治療を目的とした処方が国内で承認されていません。入手経路は、厚生局の正式な手続きを経て、当院医師の判断のもと輸入したものです。国内ではビブラマイシン等がニキビ治療薬として承認されています。
諸外国における情報:アメリカ食品医薬品局(FDA)でニキビ治療薬として承認されています(承認 1982年5月7日)。安全性に関わる情報として、皮膚の乾燥、皮むけ、光線過敏症、ドライアイ、喉の乾き、鼻出血、頭痛、妊婦が服用した場合の胎児の奇形、まれに不安、気分の変調、うつ症状、自殺念慮、急性膵炎、消化管出血、横紋筋融解症、スティーブンス・ジョンソン症候群、視力低下、アナフィラキシーが記載されています。
医薬品副作用被害救済制度:重篤な副作用が生じた場合も、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
イソトレチノインの副作用でいちばん多いのは何ですか?+
ニキビ以外にも効きますか?+
低用量と標準量、どちらがよいですか?+
1日何mg飲みますか?体重で変わりますか?+
合計で何mg飲めばよいですか?+
便秘になりました。続けて大丈夫ですか?+
飲み始めてから不正出血があります。ピルをやめてよいですか?+
アトピーがありますが飲めますか?+
花粉症の薬と一緒に飲めますか?+
内服中に脱毛やレーザーを受けられますか?+
治療のあいだ、お酒は飲めますか?+
やめたあとに再発しますか?+
あわせてご相談いただくことの多いメニューです。
これまでの治療歴とニキビの状態を確認したうえで、適応と進め方をご説明します。血液検査で管理しながら進めます。
- Low-cumulative dose isotretinoin treatment in mild-to-moderate acne: efficacy in achieving stable remission(Borghi A, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2011;25(9):1094-8)
- The Relapse Rate after 1 Year Treatment with Oral Isotretinoin in Korean Patients with Mild to Moderate Acne(Korean J Dermatol. 2004;42(6):675-681)
- A systematic review of isotretinoin dosing in acne vulgaris(JEADV Clinical Practice. 2023)
- Making sense of the effects of the cumulative dose of isotretinoin in acne vulgaris(Int J Dermatol. 2016)
- 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(日本皮膚科学会)
本ページの投与量に関する記載は、海外の報告にもとづく一般的な情報です。イソトレチノインは国内未承認のため、日本人を対象とした臨床試験や国内ガイドラインの推奨はありません。実際の量と期間は、診察のうえで個別に判断します。
