やけど
やけどについて
この記事の要点
やけど(熱傷)とは
やけどは、熱によって皮膚が傷んだ状態です。熱湯・油・蒸気・アイロン・ストーブなど原因はさまざまですが、高い温度でなくても、長く触れていれば起こります。カイロや湯たんぽ、電気毛布による低温やけどがその代表です。
大切なのは「面積」と「深さ」です。面積はご本人の手のひら1枚ぶんがおよそ1%と数えます。深さは見た目と痛みの有無で判断しますが、受傷した直後は判断がつきにくく、2〜3日かけて深くなることがあります。これを「やけどが深くなる(深達化)」といい、最初に軽く見えても数日後に評価が変わることがあります。
だからこそ、受傷直後の冷却と、数日後の見直しの両方が要ります。
やけど・火傷の痛み止め(鎮痛剤) — ロキソニンとカロナール
市販薬でかまいません。薬局で買えるもので十分に効きます。ただし2〜3日を過ぎても痛みが強くなっていくときは、細菌感染を起こしていることがあります。痛み止めを増やすのではなく、受診してください。ロキソニンとカロナールは成分が違うので、医師の指示があれば時間をずらして併用することもあります。自己判断で同じ系統を重ねないでください(市販のかぜ薬・頭痛薬と重複しやすい成分です)。
やけどの痛みは、我慢する必要はありません。痛み止めを飲んでも治りが遅くなることはなく、痛みを抑えたほうが眠れて、患部を動かせて、回復にも良いです。
やけどの痛みは炎症による痛みなので、炎症を抑える力のあるNSAIDs(ロキソニンなど)がよく効きます。一方でカロナール(アセトアミノフェン)は炎症を抑える力は弱いものの、胃にやさしく、小さなお子さんや妊娠中の方にも使えます。
| ロキソニン(NSAIDs) | カロナール(アセトアミノフェン) | |
|---|---|---|
| 効き方 | 痛みと炎症の両方を抑えます。やけどの痛みには効きやすい | 痛みと熱を抑えます。炎症を抑える力は弱い |
| 向いている方 | 胃腸が丈夫で、腎臓に問題のない大人 | お子さん・妊娠中・授乳中の方、胃が弱い方、腎臓が心配な方 |
| 市販薬 | ロキソニンS、イブ、バファリンEXなど | タイレノールA、小児用バファリンなど |
| 避けたほうがよい方 | 胃潰瘍・腎機能低下・喘息(アスピリン喘息)のある方、血液をさらさらにする薬を飲んでいる方 | 飲みすぎに注意(1日の上限があります)。市販のかぜ薬と重なりやすい成分です |
| 飲むタイミング | 痛みが出てからで十分です。受傷当日〜2、3日がいちばん痛みます | 同じく、痛いときに。お子さんは体重で量が決まります |
やけどが冷やしてないと痛いとき — ロキソニンやカロナールで抑えて構いません
「冷やしているあいだは楽なのに、やめるとまた痛む」——よくいただくご相談です。これは悪い兆候ではありません。むしろ良いしるしです。
痛みを感じるということは、皮膚の神経が生きているということです。つまり神経が残っている=浅いやけどです。深いやけどでは神経ごと傷んでしまうため、かえって痛みません。
冷やすと楽になるのは、冷却が炎症と痛みの信号を一時的に抑えるためで、効果は冷やしているあいだだけです。そのため冷やし続けるのではなく、痛み止めを飲むほうが理にかなっています。
冷却は受傷直後の15〜30分がもっとも大切で、ここで深くなるのを防ぎます。それ以降の長時間の冷却は、血のめぐりを悪くして治りを妨げることがあります。氷・氷水・保冷剤を直接あてるのは避けてください。流水か、ぬれタオルで包んだ保冷剤にしてください。
やけど・火傷の深さと見分け方(I度・II度熱傷・III度)
痛みの強さと重症度は逆です。「痛くてたまらない」より「痛くない」ほうが深いやけどです。また受傷直後は深さを決められません。2〜3日かけて深くなることがあるため、広いやけどや水ぶくれのあるやけどは、経過を見せていただきます。
やけどは深さで4段階に分けます。治るまでの日数と、跡が残るかどうかが変わります。
| 深さ | 見た目 | 痛み | 経過 |
|---|---|---|---|
| I度 | 赤くなるだけ。水ぶくれはできません(日焼けと同じ状態) | あり | 数日で治り、跡は残りません |
| 浅達性II度 | 赤くなり、水ぶくれができます。水ぶくれの底を押すと赤みが白く抜けます | 強い | 1〜2週間で治ります。跡はほとんど残りません |
| 深達性II度 | 赤みが強く、紫色〜白っぽくなります。水ぶくれができることもあります。押しても赤みが白く抜けません | 鈍い・少ない | 3〜4週間かかり、跡が残ることがあります |
| III度 | 白色・褐色・黒色。かたく乾いた感じ。水ぶくれはできません | ない | 自然には治らず、植皮が必要になります |
やけど・火傷が紫色になった/白くなったとき
やけどしたところが紫色や白っぽくなり、しかも痛くない——このときは深達性II度以上を考えます。
見分け方のひとつが「押して赤みが戻るか」です。指で軽く押して離したときにすっと赤みが戻れば、その下の血流は生きています(浅い)。白く抜けたまま戻らない、あるいは押しても色が変わらないときは、血流が途絶えているサインです。
紫〜白色、押しても色が変わらない、痛みがない。このいずれかがあるときは、その日のうちに受診してください。深いやけどは自然には上皮化せず、壊死した組織を取り除く処置や、範囲によっては植皮が必要になります。
水ぶくれは破っていい? 破れてしまったときは
破らないでください。水ぶくれの中の液には、皮膚が再生するために必要な成分が含まれています。そして水ぶくれの皮そのものが、いちばん良い「ふた」になり、細菌の侵入と痛みを防いでいます。
すでに破れてしまった場合も、皮をはがさないでください。めくれた皮をそのまま元の位置に戻し、ワセリンを塗って、清潔なガーゼや食品用ラップで覆って受診してください。乾かすと痛みが強くなり、治りも遅くなります。
服を脱ぐときに水ぶくれを破ってしまうことがあります。服の上から流水をかけて冷やし、脱がせずに来ていただいて構いません。
なお大きな水ぶくれや、関節にかかる水ぶくれは、診察のうえであえて中身だけ抜いて皮を残すことがあります。これは処置として行うもので、ご自身で針を刺すのとは違います。
舌のやけど — ヒリヒリはいつまで続く?
熱いコーヒーやスープ、ピザのチーズ。口の中のやけどは、皮膚のやけどより早く治ります。口の粘膜は血のめぐりが良く、細胞の入れ替わりも速いためです。
目安は3日〜1週間です。ヒリヒリは1〜2日でいちばん強く、そこから薄らいでいきます。一時的に味が分かりにくくなることもありますが、多くは粘膜が新しくなるとともに戻ります。
やっていただきたいこと。すぐに冷たい水を含む(飲み込まず、口に含んで冷やす)。熱いもの・辛いもの・酸っぱいもの・炭酸・お酒・喫煙を数日避ける。歯みがき粉のミントがしみるときは、しみないものに替えてください。
受診をおすすめするのは次のときです。2週間たっても治らない、白い膜が残る・こすると取れる(口腔カンジダを考えます)、しこりや潰瘍が固い、広い範囲に水ぶくれができた、飲み込めない・声がかすれる(のどまで及んでいる可能性があります)。
低温やけど — カイロ・湯たんぽ・電気毛布
「熱い」と感じない温度でも、やけどは起こります。皮膚は44℃で6時間、50℃で3分ほどで傷み始めます。カイロ、湯たんぽ、電気毛布、ノートパソコン、こたつ。眠っているあいだに同じ場所が温められ続けるのが典型です。
低温やけどのやっかいなところは、見た目より深いことです。表面は赤いだけに見えても、深いところまで傷んでいて、深達性II度〜III度のことがあります。治るまでに数週間〜数か月かかり、跡が残ることもあります。
とくに注意が必要な方は、糖尿病で足の感覚が鈍い方、ご高齢の方、お酒を飲んで眠ってしまった方、睡眠薬を使っている方です。熱さに気づけないことが原因なので、カイロは肌に直接貼らない、湯たんぽは布団を温めたら出すのが確実です。
低温やけどを疑ったら、軽く見えても一度お見せください。
こんなときは早めに受診してください
次のようなときは、様子を見ずにご相談ください。広い範囲・特別な部位のやけどは、高度な設備のある医療機関へご紹介します。
応急処置と診察
やけどをしたときの応急処置
やってはいけないこと。アロエ・味噌・油・アルコールなどを塗る(感染と刺激の原因になります)。氷を直接あてる。消毒薬を繰り返し塗る(再生しかけた細胞を傷めます)。
やることは3つだけです。冷やす・覆う・診せる。
当院で行うこと
広範囲のやけど、顔・手・足・関節・陰部のやけど、化学薬品や電気によるやけどは、専門的な治療が必要になることがあります。その場合は連携する医療機関へご紹介します。
やけどの診療は検査というより、深さの見きわめと経過の確認が中心です。
費用の目安
3割負担の方の目安です。処置の内容によって変わります。
初診:約870円(再診 約230円)/処置料:数百円〜/処方箋料:約180円
このほかにお薬代が薬局でかかります。
2026年8月時点の診療報酬にもとづく目安です。
治療
やけど・火傷の薬 — 皮膚科で処方される軟膏と市販の塗り薬
市販のやけど用軟膏でも、浅いやけどなら対応できます。ただし水ぶくれができている、範囲が広い、2〜3日でよくならないときは一度お見せください。ワセリンで覆うだけでも、何も塗らずに乾かすよりずっと良いことは知っておいてください。
やけどの治療の基本は「乾かさないこと(湿潤療法)」です。傷が乾くと、再生しようとする細胞が死んでしまいます。適度に湿った環境を保つと、痛みが減り、治りが早く、跡も残りにくくなります。
深さと部位、感染の有無によって次のように使い分けます。
処方薬と市販薬の違いは、深さと感染の有無に合わせて選べるかどうかです。浅いやけどなら市販の塗り薬でも足りますが、フィブラストスプレーやブロメライン軟膏は処方薬で、市販では手に入りません。
| 薬 | はたらき | 使う場面 |
|---|---|---|
| 白色ワセリン | 傷を覆って乾燥を防ぎます。刺激がありません | いちばん基本。I度〜浅達性II度に |
| ステロイド外用薬 | 受傷直後の強い炎症と赤みを抑えます | 受傷直後のI度〜II度に短期間 |
| 抗菌薬入りの軟膏 | 細菌の感染を防ぐ・抑えます | じくじくしているとき、感染が疑われるとき |
| フィブラストスプレー | 皮膚の再生を促す成長因子の薬です | 浅達性II度の早期に使うと上皮化が早まり、跡が残りにくくなるとされています |
| ブロメライン軟膏 | 壊死した組織をやわらかくして取り除きます | 小範囲熱傷(範囲の狭い深いやけど)に |
コレクチム軟膏・モイゼルト軟膏をやけどに塗らないでください
アトピー性皮膚炎で処方されている塗り薬が家にある——それをやけどに塗ってしまう方がいらっしゃいます。
コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)とモイゼルト軟膏(ジファミラスト)は、皮膚の免疫のはたらきを抑える薬です。アトピー性皮膚炎の炎症には効きますが、やけどには適応がありません。
問題は感染です。やけどの傷は皮膚のバリアが壊れて細菌が入りやすい状態です。そこに免疫を抑える薬を塗ると、細菌が増えやすくなり、治りが遅れます。どちらの薬も「感染を伴う皮膚には使わない」と決められています。
やけどに塗ってよいのは、ワセリンです。手元に何もなければワセリンで覆って受診してください。ステロイドを使うかどうかは、深さと感染の有無を見てから医師が判断します。
深さ別の治療(熱傷の軟膏の使い分け)
| 深さ | 治療 |
|---|---|
| I度 | ワセリンで保護します。炎症が強ければステロイド外用薬を短期間使います。数日で治ります |
| 浅達性II度 | 湿潤環境を保ちます(ワセリン+被覆材)。フィブラストスプレーを早期から使うと上皮化が早まります。感染が疑われるときは抗菌薬入りの軟膏に切り替えます |
| 深達性II度・III度 | 壊死した組織を取り除くことが先になります。範囲が狭ければブロメライン軟膏などを使い、一定以上の範囲では植皮が必要です。この場合は専門の医療機関へご紹介します |
自宅での処置
通院のあいだ、ご自宅では次のようにしてください。
当院でのやけどの診療
豊洲イーウェルクリニックでは、次のように診療しています。
費用の目安
健康保険3割負担の場合の目安です。診察の内容や検査の項目によって変わります。
記載は3割負担の場合の目安です。このほかに処方箋料(約180円)とお薬代がかかります。
よくある質問
やけどの痛み止めは市販薬でもいいですか?+
やけどしたらまず何をすればいいですか?+
やけどをするとヒリヒリしますが、いつまで冷やせばいいですか?+
冷やしていないと痛いのですが、悪化しているのでしょうか?+
やけどに保冷剤は使っていいですか?+
やけどで水ぶくれができたときはどうすればいいですか?+
舌のやけどのヒリヒリはいつまで続きますか?+
やけどの跡は残りますか?+
低温やけどは軽いのですか?+
痛みは我慢しなくて大丈夫です。深さは数日で変わることがありますので、軽く見えても一度お見せください。土日も診療しています。
本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断と治療方針は診察のうえで判断します。症状が強いときや長引くときは、記載にかかわらず受診してください。
監修医師 石川 浩雅(豊洲イーウェルクリニック)
本ページの内容は、上記の医師が監修しています。
2006年 国立国際医療センター 初期研修、2008年 同センター 後期研修。2011年 東京医科歯科大学 医療経営政策学。第一生命保険株式会社、株式会社Linc'well/クリニックフォア、医療法人社団シンシアエージェンシーを経て、2025年11月 東京都江東区豊洲に「豊洲イーウェルクリニック」開院。内科・皮膚科・アレルギー科を中心に、小児から泌尿器科領域まで幅広く診療しています。渡航ワクチンの接種にも対応しています。日本渡航医学会、日本旅行医学会、日本内科学会、日本アレルギー学会、日本産業衛生学会 所属。
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内科・皮膚科・アレルギー科・泌尿器科を中心に、健康診断や予防接種、オンライン診療まで対応しています。
