降圧薬
まず最初に選択される降圧薬の種類は?
降圧薬には大きく分けて、血管を拡げる薬と体内を循環する血液の量を減らす薬があります。前者にはカルシウム拮抗薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)などがあり、後者には利尿薬があります。
《積極的適応》
特定の病気や病状がある場合には優先して選択される種類の降圧薬があります。たとえば心不全、頻脈、狭心症、心筋梗塞後ではβ遮断薬が最初に投与を考慮されます。
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カルシウム拮抗薬 |
ARB/ACE阻害薬 |
サイアザイド系 |
β遮断薬 |
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左室肥大 |
● |
● |
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左室収縮力の低下した心不全 |
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● |
● |
● |
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頻脈 |
● |
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● |
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狭心症 |
● |
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● |
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心筋梗塞後 |
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● |
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● |
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蛋白尿 |
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● |
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《積極的適応がない場合の降圧薬》
特に合併症がない場合にはグループⅠの降圧薬(カルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド利尿薬、β遮断薬)から選びます。
第一選択薬で効果が不十分な場合は以下のように降圧薬を併用することでステップアップします。
カルシウム拮抗薬(CCB)
カルシウム拮抗薬は血管の筋肉に対するカルシウムの働きを抑えることで、血管を拡張して血圧を下げる効果があります。
《カルシウム拮抗薬が適した病態》
- 高齢者
- 妊娠の可能性がある女性
- 腎機能障害や電解質異常の高リスク例、二次性高血圧疑いなど、血液検査の必要性が高いがすぐに確認できない場合
《カルシウム拮抗薬の種類》
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成分名 |
一般名 |
特徴 |
|---|---|---|
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アムロジン |
アムロジピン |
1日1回で長時間降圧効果も得られる |
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アダラート |
ニフェジピン |
アダラートCRは降圧作用が強くが安定してえられる |
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アテレック |
シルニジピン |
交感神経を抑制したり、蛋白尿を減少効果が優れている |
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カルブロック |
アゼルニジピン |
ナトリウム排泄作用 |
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コニール |
ベニジピン |
冠攣縮性狭心症の治療薬として用いられる |
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ヘルベッサー |
ジルチアゼム |
冠攣縮性狭心症の治療薬として用いられる |
《カルシウム拮抗薬の副作用》
カルシウム拮抗薬は副作用が少ないために高齢者や臓器障害のある方にも使いやすい薬です。
副作用として見られるのはカルシウム拮抗薬の血管を拡張する作用によります。
☑︎ 低血圧
☑︎ 動悸
☑︎ 頭痛
☑︎ ほてりや顔の紅潮
☑︎ 歯肉の腫れ
☑︎ 便秘
ARB (アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
血管収縮や塩分、水分の貯留を促す物質をブロックすることで血圧を下げる効果があります。
《ARBが適した病態》
- 若年者や中壮年者(妊娠可能な女性は除く)
《ARBの種類》
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商品名 |
一般名 |
特徴 |
|---|---|---|
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ニューロタン |
ロサルタン |
エンレストマイルド |
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ブロプレス |
カンデサルタン |
心不全にも適応 |
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オルメテック |
オルメサルタン |
早く強い降圧効果 |
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ミカルディス |
テルミサルタン |
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ディオバン |
バルサルタン |
エンレストにも含まれる成分 |
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アバプロ |
イルベサルタン |
尿酸を下げる効果もある |
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アジルバ |
アジルサルタン |
ARBで最も効果が強い |
《ARBの副作用》
自覚される副作用が少ないことが特徴ですが高カリウム血症などを起こすことがあるため定期的に血液検査を行う必要があります。
☑︎ 高カリウム血症
☑︎ 腎機能低下
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
血管収縮や塩分、水分の貯留を促す物質の産生を抑えることで血圧を下げる効果があります。
《ACE阻害薬が適した病態》
- 心不全や冠動脈疾患があるかた
- 糖尿病を合併するかた
- メタボリックシンドロームがあるかた
《ACE阻害薬の種類》
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商品名 |
一般名 |
特徴 |
|---|---|---|
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レニベース |
エナラプリル |
心不全による死亡率低下 |
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ロンゲス |
リシノプリル |
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コバシル |
ペリンドプリル |
脳梗塞後の肺炎予防 |
《ACE阻害薬の副作用》
自覚される副作用が少ないことが特徴ですが高カリウム血症などを起こすことがあるため定期的に血液検査を行う必要があります。
☑︎ 高カリウム血症
☑︎ 腎機能低下
☑︎ 空咳(2〜3割の方に空咳が見られます)
☑︎ 血管浮腫(急にまぶたや唇が腫れることがあります。)
ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)
ARB (アンジオテンシンII受容体拮抗薬)であるバルサルタンとサクビトリルの合剤です。
※サクビトリルはナトリウム利尿ペプチドの分解酵素阻害薬
《ARNIが適した病態》
❶ 収縮力が低下した心不全
❷ ACE阻害薬やARBなどの従来の降圧薬で効果が不十分なかた
《ARNIの種類》
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商品名 |
一般名 |
|---|---|
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エンレスト |
サクビトリルバルサルタン |
《ARNIの副作用》
☑︎ 低血圧(めまい、たちくらみ、ふらつき、倦怠感など)
☑︎ 腎機能障害(むくみ、尿量の減少)
☑︎ 高カリウム血症(手足や唇のしびれ、筋力の低下)
☑︎ 血管浮腫(唇やのどのはれ、呼吸困難)
☑︎ 脱水(のどが渇く、頭痛、ふらつき)
β遮断薬
β遮断薬は交感神経刺激が心筋に伝わるのを抑え、心臓の過剰な働きを抑えることで血圧を低げます。高血圧治療単独で用いられるより、心不全、不整脈、期外収縮などの心臓の疾患に対して主に用いられます。
《β遮断薬が適した病態》
- 交感神経活性亢進を反映している高血圧(若年者、頻脈傾向、ストレス関連高血圧)
- 高心拍出性高血圧(甲状線機能亢進症など)
- 心不全や冠動脈疾患があるかた
《β遮断薬の種類》
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商品名 |
一般名 |
特徴 |
|---|---|---|
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アーチスト |
カルベジロール |
血圧をさげやすい |
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メインテート |
ビソプロロール |
心拍数を下げやすく、血圧は下がりすぎない |
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インデラル |
プロプラノロール |
甲状線機能亢進症につかいやすい |
《β遮断薬の副作用》
☑︎ 徐脈
☑︎ うっ血性心不全の悪化
☑︎ 喘息発作
☑︎ 起立性低血圧
サイアザイド利尿薬
血管から食塩と水分を排泄して血管壁にかかる圧力を少なくし血圧を下げます。日本人は摂取する塩分の影響で血圧が上がりやすいといわれています。
血圧を下げる以外にも、体のむくみなどを軽減するためにも使われます。
《サイアザイド利尿薬が適した病態》
- 食塩摂取過多
- 食塩
《サイアザイド利尿薬の種類》
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商品名 |
一般名 |
特徴 |
|---|---|---|
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フルイトラン |
トリクロルメチアジド |
古くから使用されている降圧薬 |
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ヒドロクロロチアジド「トーワ」 |
ヒ ドロクロロチアジド |
合剤がメイン |
《サイアザイド利尿薬の副作用》
☑︎ 低カリウム血症
☑︎ 低ナトリウム血症
☑︎ 尿酸の上昇
☑︎ 血糖の上昇
☑︎ 日光過敏症(光線過敏症)
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)
血圧上昇の原因となるアルドステロンをブロックすることでナトリウムを排出を促すことで血圧を下げます。
《サイアザイド利尿薬が適した病態》
- 原発性アルドステロン症
- 治療抵抗性の高血圧
- 肥満
- 睡眠時無呼吸症候群
《サイアザイド利尿薬の種類》
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商品名 |
一般名 |
特徴 |
|---|---|---|
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アルダクトン |
スピロノラクトン |
古くから使用経験がある 女性ホルモンの働きが女性化乳房、月経不順などに注意が必要 |
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セララ |
エプレレノン |
心不全発症後の再発予防に効果 |
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ミネブロ |
エサキセレノン |
最新のMRAで、ホルモン戸関連する副作用が少ない |
《サイアザイド利尿薬の副作用》
☑︎ 低カリウム血症(手や唇のしびれ感、筋力の低下、吐き気など)
☑︎ 尿酸上昇
よくある質問
高血圧の薬は一生飲み続けるものですか?
- 降圧薬を使って血圧が下がっても根本治療ではないため中止すれば多くの場合は血圧が再度上がってしまいます。減塩、運動、減量、禁煙などの生活習慣を改善することで数mmHg血圧下がると言われており降圧薬を徐々に減量することも可能です。
- 家庭血圧が十分に低ければ減量をすることが可能です。たとえば目標とする血圧より10/5mmHg以上低い場合には減量や中止を考えます。
- 標準用量の場合は減量を行い、最低量の場合は中止をします。
- 心疾患や腎疾患の合併症がある場合は血圧が低くても薬を継続すべきです。
- 夏に血圧が下がる経口にある方は一時的に減らすこともあります。
血圧の副作用は?
- 降圧薬の種類によって特徴的な副作用が出ることがあります。
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カルシウム拮抗薬 |
低血圧、動悸、頭痛、ほてり、歯肉の腫れ、便秘 |
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ARB |
高カリウム血症、腎機能低下 |
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ACE阻害薬 |
高カリウム血症、空咳、血管浮腫 |
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ARNI |
低血圧、腎機能障害、高カリウム血症、血管浮腫、脱水 |
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β遮断薬 |
徐脈、喘息の悪化、起立性低血圧 |
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サイアザイド利尿薬 |
低カリウム血症、血糖の上昇、尿酸の上昇、日光過敏症(光線過敏症) |
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MRA |
低カリウム血症、尿酸上昇 |
薬を飲みわすれた時はどうすれば良いですか?
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薬のタイプ |
いつ飲みわすれ? |
対応の目安 |
|---|---|---|
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1日1回服用 |
朝食後の飲みわすれ |
寝るまでに気付いたら服用 |
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1日2回服用
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朝食後飲みわすれ |
昼から夕方までに気付いたら服用、夕食後の分は就寝前に |
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夕食後飲みわすれ |
寝るまでに気付いたら服用 |
