高血圧症
高血圧はわが国で患者数がもっとも多い病気で、現在約4300万人の患者さんがいると推計されています 。その中でも血圧が適切にコントロールされているのはわずか1200万人程度といわれています。
高血圧とは?
血圧とは、心臓が全身に血液を送り出す際に、血管にかかる圧力のことを指します。
高血圧症の症状は?
高血圧には、ほとんど自覚症状がありません。しかし、症状がないからといって放置すると、さまざまな合併症を引き起こします。このように、気づかぬうちに身体を蝕んでいくことから、高血圧は「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」と呼ばれています。
血圧が正常値(120/80mmHg)より高くなるほど、脳や心臓の血管疾患による死亡リスクが高まります。特に重度高血圧(180/110mmHg以上)では、正常な人と比べて死亡リスクが9倍以上に上昇します。適切な治療を行うことで、脳血管疾患の約60%を予防できるとされています。
高血圧症の診断は?
高血圧とは、正常値よりも高い血圧が持続している状態を指します。血圧の測定には以下の3つの方法があります。
- 診察室血圧(病院やクリニックで測定)
- 家庭血圧(自宅で測定)
- 24時間血圧(専用機器を装着して測定)
特に家庭血圧は、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクを予測するうえで重要とされており、診察室血圧よりも優先して治療の目安とされます。
また、診察時は正常でも家庭や職場で血圧が高い「仮面高血圧」は、通常の高血圧以上にリスクが高いため注意が必要です。自宅での定期的な測定が、仮面高血圧の診断に有用です。
正しい血圧の測定方法は?
起床時と就寝前(寝る前)の毎日決まった時間帯に測定することが推奨されています。
朝の血圧測定のタイミング
☑︎ 起床後1時間以内に測定しましょう
☑︎トイレを済ませ、朝食・服用前に測定しましょう。
夜の血圧測定のタイミング
☑︎ 就寝直前に測定しましょう
☑︎ 飲酒後や入浴の直後はさけて測定しましょう
血圧は日内変動があり、睡眠中は10〜20%低下し、起床とともに上昇します。日中は高く、夕方から夜にかけて再び低下します。
「夜間高血圧(Riser型)」は、脳卒中の発症リスクが高く、睡眠時無呼吸症候群、心不全、腎不全などとの関連が指摘されています。また、朝の血圧急上昇(モーニング・サージ)も脳卒中の重要な危険因子とされています。
高血圧症の原因は?
高血圧の約90%は「本態性高血圧」と呼ばれ、明確な原因がないタイプです。遺伝的体質に加え、塩分の過剰摂取、肥満、運動不足、ストレス、喫煙などが関与します。
残り約10%は「二次性高血圧」で、特定の病気が原因で血圧が上昇するタイプです。以下は代表的な二次性高血圧の原因です。
|
年齢 |
二次性高血圧の割合 |
よくある原因 |
|---|---|---|
|
19-39歳 |
5% |
線維筋性異形成、腎実質性高血圧、甲状腺機能異常 |
|
40-64歳 |
8-12% |
原発性アルドステロン症、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能異常、Cushing症候群、褐色細胞腫 |
|
65歳以上 |
17% |
腎血管性高血圧、腎不全、甲状腺機能異常 |
以下のようなケースでは、血液検査や超音波、睡眠検査などを行い、二次性高血圧の可能性を精査します。
- 難治性高血圧
- 急激な血圧上昇
- 重度高血圧
- 若年発症
- 臓器障害の進行が早い
- 診察や病歴から二次性高血圧が疑われる場合
高血圧症の治療
高血圧と診断され治療が必要となった場合、血圧をどこまで下げるかの目標値を降圧目標といいます。降圧目標は、年齢や過去にかかった病気、現在かかっている病気によって異なります。
生活習慣の改善方法
高血圧の主な原因として、塩分の摂りすぎ、肥満、過度の飲酒など、生活習慣に関わる要素が多く含まれます。以下のような改善が有効です。
- 減塩(1日6g未満を目標に)
- バランスの取れた食事
- 適度な運動
- 節酒、禁煙
- 質の良い睡眠
薬による高血圧治療
血圧を下げる薬は併存する病気などを考慮して適切に選択をしていきます。
|
種類 |
作用 |
|---|---|
|
カルシウム拮抗薬 |
血管収縮を抑え、血圧を下げます |
|
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) |
血圧を上げるホルモンの作用を抑制し、血圧を下げます |
|
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬) |
アンジオテンシンⅡの産生を抑え、血圧を下げます |
|
ARNI |
心不全治療で用いられ、血圧を下げる作用もあります |
|
利尿薬 |
体内の余分な水分・塩分を排出し、血圧を下げます |
|
アルドステロン拮抗薬 |
アルドステロンの働きを抑え、体内のナトリウム保持を防ぎます |
|
β(ベータ)遮断薬 |
心拍数を抑え、心臓の負担を軽減し血圧を下げます |
|
α(アルファ)1遮断薬 |
交感神経の働きを抑え、血管の収縮を防いで血圧を下げます |
|
直接的レニン阻害薬 |
血圧上昇の原因となるアルドステロンをブロックすることでナトリウムを排出を促すことで血圧を下げます。 |
当院の高血圧症に対する治療方針
豊洲イーウェルクリニックでは、最新のガイドラインに基づき、科学的根拠のある治療を心がけています。高血圧治療では「生活習慣の改善」と「薬物療法」を並行して行うことが重要です。
とはいえ、生活背景や価値観は人それぞれ。「できるだけ薬に頼りたくない」「通院回数を減らしたい」「副作用が心配」など、患者さん一人ひとりのご希望を大切にしています。
当院では「Shared Decision Making(共同意思決定)」を重視し、複数の治療選択肢の中から、納得のいく方法を一緒に選んでいきます。必要なときに薬を使い、改善すれば減薬する。押し付けではなく「続けられる治療」を目指します。
ご不安な点があれば、どんな些細なことでも遠慮なくご相談ください。
よくある質問
血圧はどこまで下げればいいですか?
一般的には診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満が推奨されています。ただし、年齢や既往歴により目標は異なるため、主治医と相談して設定しましょう。
血圧の変動が大きいのですが大丈夫ですか?
血圧は日中変動しますが、極端な変動や不規則な値が続く場合は要注意です。「血圧変動性が高い」とされ、心血管リスクが高まるため、医師の診察を受けましょう。
拡張期血圧(下の血圧)が高いのが気になります。
拡張期血圧90mmHg以上は高血圧に分類されます。若年層や喫煙者、運動不足、肥満の方に多く見られ、心臓や腎臓への負担となります。定期的な測定と生活改善が重要です。
血圧150/90は高血圧ですか?
はい、日本高血圧学会の基準では、収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上が高血圧とされます。
高血圧が引き起こす病気は?
脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全、網膜症(眼底出血)など、重大な疾患のリスクが高まります。
高血圧の症状にはどんなものがありますか?
多くは無症状ですが、頭痛・めまい・肩こり・耳鳴り・動悸などを感じる方もいます。
原因として最も多いものは?
食塩の摂りすぎ、肥満、ストレス、運動不足、遺伝、加齢などが主な要因です。
高血圧は治りますか?
完全に治るとは言い切れませんが、生活習慣改善や薬物治療により、長期的なコントロールは可能です。
予防するにはどうすればよいですか?
減塩・運動・禁煙・節酒・十分な睡眠・ストレス管理など、健康的な生活習慣を維持することが予防につながります。
