甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症について
この記事の要点
甲状腺機能低下症(甲状腺低下症)とは?
甲状腺機能低下症とは、血中の甲状腺ホルモン作用が必要よりも低下した病気です。
抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体を下げるには? TSHを下げるには?
検査結果に「抗TPO抗体 高値」「抗サイログロブリン抗体 高値」と書かれていて、この数値を下げる方法を探して来られる方がとても多くいらっしゃいます。まず結論をお伝えします。
これらの抗体は、下げる対象ではありません。抗体の値を下げる薬はなく、下げたところで治療になりません。食事やサプリメントで下がるという確かな根拠もありません。
この2つの抗体は、「甲状腺に慢性の炎症がある(橋本病である)」ことを示す目印です。体温計のようなもので、数字そのものを動かすことに意味はありません。抗体が高くても、甲状腺ホルモンが正常なら治療は不要です。橋本病の方の多くはこの状態で、一生ホルモンが下がらない方もいらっしゃいます。
実際に見ているのはTSHとFT4です。治療が必要かどうかも、薬の量も、この2つで決めます。抗体の値は、診断がついた後は繰り返し測る必要すらありません。
「TSHを下げるには」という調べ方も同じく多いのですが、こちらは意味があります。TSHが高いのは甲状腺ホルモンが足りていないサインで、チラーヂンS(レボチロキシン)を補うとTSHは下がります。自分で下げる方法はありません。
| 検査項目 | 何を示すか | 下げる対象か |
|---|---|---|
| 抗TPO抗体 | 甲状腺に慢性の炎症があること(橋本病の目印) | いいえ |
| 抗サイログロブリン抗体(抗Tg抗体) | 同上 | いいえ |
| TSH | 甲状腺ホルモンが足りているか。高いほど足りていない | はい(薬で調整します) |
| FT4 | 甲状腺ホルモンそのものの量 | 補う対象 |
抗体が陽性でもTSH・FT4が正常であれば、経過をみるだけで治療はしません。半年〜1年ごとの採血で、ホルモンが下がってこないかを確認します。
甲状腺低下症の症状 — 男性・不正出血・皮膚のかゆみ
甲状腺ホルモンが少なくなることで、全身の臓器の働き・代謝が低下することでさまざまな症状が出現します。
寒がりになる
汗をかきづらくなり、皮膚が乾燥する
体重が増える
便秘
抜け毛が増える
足や顔がむくむ
だるさ、気力がない
男性にも起こります。橋本病は女性に多い病気ですが(男女比はおよそ1対10)、男性がならないわけではありません。男性では「疲れが取れない」「体重が増えた」「気力が出ない」といった訴えになりやすく、年齢のせい・働きすぎと解釈されて見過ごされがちです。男性では性欲の低下や勃起の問題として現れることもあります。
皮膚のかゆみ・乾燥。甲状腺ホルモンが不足すると皮膚が乾燥し、かゆみが出ることがあります。汗をかきにくくなるためです。保湿しても改善しない乾燥や、髪が抜ける・眉の外側が薄くなる、爪がもろくなるといった変化をともなうときは、甲状腺の検査を考えます。
不正出血・月経の乱れ。甲状腺ホルモンは月経周期に関わっており、低下症では月経が長く続く、量が多い、周期が乱れることがあります。不妊や流産のリスクとも関係します。ただし不正出血を甲状腺のせいと決めつけないでください。子宮や腟の病気が原因のことがあります。出血が続くときは婦人科での確認が必要です。
甲状腺機能低下症の原因は?
橋本病
バセドウ病は甲状腺機能亢進症のもっともよくある原因で約65%を占めます。1000人中2~6人いると言われており、女性患者が男性患者より5倍と多いのも特徴としてあげられます。
ヨードの過剰摂取
昆布・とろろ昆布・昆布だし、ヨウ素含うがい薬等の摂りすぎ。
薬剤性甲状腺機能低下症
アミオダロン、リチウム、インターフェロン、免疫チェックポイント阻害薬など
手術・放射性ヨウ素治療後
産後甲状腺炎
中枢性(下垂体・視床下部性)
チラーヂンSの飲み方とTSHの目標値
チラージンSを内服して不足した甲状腺ホルモンを補います。
TSHの目標値は、多くの方で0.5〜2.5μIU/mL程度を目安にします。基準範囲の上限ぎりぎりではなく、やや低めに保つ考え方です。高齢の方ではもう少し高め(4〜6程度)で構わないこともあり、年齢と持病によって変わります。
妊娠を希望される方・妊娠中は、目標が変わります。2.5未満を目安に、より厳密に調整します。妊娠が分かった時点で薬の量を増やす必要があることが多いため、早めにお知らせください。
飲み方。朝の空腹時に、コップ1杯の水で飲みます。食事や、鉄剤・カルシウム・胃薬(制酸剤)・大豆製品と一緒だと吸収が落ちるため、30分〜1時間はあけてください。
量を調整したあとは、4〜6週間あけて採血で確認します。効果が数値に出るまで時間がかかるためで、早く測っても正しく判断できません。
甲状腺ホルモン正常(fT4正常、TSH正常)の橋本病
甲状腺ホルモンの異常を伴わない初期や軽度の橋本病であれば補充療法は必要ありません。
橋本病による潜在性甲状腺機能低下症(fT4正常、TSH上昇)
ヨードの過剰摂取を避け1-3ヶ月後に再検査を行いTSHが10μU/ml以上であれば治療を開始します。
妊娠前の注意点
妊娠前にもTSHを2.5µU/mL未満とすることを目標にチラージンの内服を行います。
不妊症治療をされている方は卵管造影で使用する造影剤や不妊治療薬によりTSHは変動をするため適宜調整が必要となります。
妊娠中の注意点
甲状腺機能低下症の女性(潜在性甲状腺機能低下症の方を含めて)は流産、早産や妊娠高血圧症候群のリスクが高いことがわかっています。妊娠中は甲状腺ホルモンの必要量が約1.3~1.5倍必要であるためTSHを以下の目標にチラージン内服を行います。
チラージンSは非常に安全な薬剤で、妊娠中、授乳中も安全に服用することができます。
Tg抗体が陽性の方は妊娠中期まで4週間ごとにTSHを含めた血液検査を測定します。
| 妊娠0週0日~13週6日まで | TSH<2.5µU/mL |
|---|---|
| 妊娠14週0日~27週6日まで | TSH<3.0µU/mL |
| 妊娠28週0日以降 | TSH<3.0µU/mL |
出産後の注意点
出産後に発症する無痛性甲状腺炎を産後甲状腺炎といい、出産後7-8%程度の頻度で生じるとされます。産後2-3か月での甲状腺機能検査をお勧めしています。
チラージンSは非常に安全な薬剤で、妊娠中、授乳中も安全に服用することができます。
こんなときは早めに受診してください
次のような症状があるときは、様子を見ずにご相談ください。当院の診療時間外の場合は、救急外来の受診もご検討ください。
検査
橋本病はどのように診断しますか?
診察
甲状腺が全体的に大きくなっているのか、押して痛みはないか、結節、腫瘍はないか等を確認します。
甲状腺ホルモン(fT4)と甲状腺ホルモン刺激ホルモン(TSH)の測定
甲状腺ホルモンにはT3(トリヨードサイロニン)とT3(ヨードサイロニン)に分けられます。甲状腺ホルモンの分泌量は脳からのTSH(甲状腺刺激ホルモン)によって分泌量が一定に保たれるように調整を受けています。
甲状腺機能亢進症では、fT4が低くなり、分泌を促すためにTSHが高くなります。
fT4は正常にも関わらずTSHが上昇している状態を潜在性甲状腺機低下症といいます。
抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺マイクロゾーム抗体(抗TPO抗体)の測定
自己抗体が陽性となることで橋本病と診断できます。
超音波検査
甲状腺の表面がデコボコし、全体的に腫れて大きくなります。
甲状腺の内部が黒っぽくなり、むらがでて内部が不均質となります。
当院で行う検査
血液検査だけで診断できます。むくみ・だるさ・体重増加・便秘の背景にあることがあります。
| 検査 | 何を見るか | いつ行うか | 窓口負担の目安(3割) |
|---|---|---|---|
| 甲状腺機能(TSH・FT4) | 甲状腺ホルモンが足りているか | 診断時と2〜3か月ごと(安定後は6〜12か月ごと) | 約1,300円〜
(項目数により変わります)
|
| 甲状腺自己抗体(TPO抗体・Tg抗体) | 橋本病かどうか | 診断時 | 診察時にご案内します |
| 甲状腺エコー | 甲状腺の腫れ、しこりの有無 | 診断時 | 約1,590円 |
| 血液検査(脂質・貧血) | LDLコレステロールの上昇、貧血の合併 | 診断時 | 約1,300円〜
(項目数により変わります)
|
横にスクロールできます。金額は3割負担の方の目安で、採血を伴う検査は調べる項目数によって変わります。
薬の量を変えたあとは、2〜3か月あけてから採血します。早く測っても正しく評価できません。
治療
不妊との関連と妊娠中の治療は?
わずかな甲状腺機能低下であったとしても、プロラクチンが上昇したり、LHやFSHが低下することで不妊や流産などに繋がることがわかっています。多くの不妊治療を行うクリニックでは甲状腺の血液検査を実施していますが、妊娠を予定されている方や不妊にお悩みの方で甲状腺の血液検査を受けていない方は、お受けになることをおすすめします。
生活上の注意点は?
ストレスを避けて十分な睡眠をとり規則正しい生活をしましょう
精神的なストレスが橋本病の発症や再発に関連することが報告されています。
昆布食品、わかめ、ひじきなどの海藻類の過剰摂取には注意しましょう
甲状腺機能に関わらずヨード(ヨウ素)過剰摂取制限を続けてください。
すでに破壊された甲状腺組織が元に戻るわけではないため、チラーヂンSの服用は終生になります。
| 食品 | 食品の量(g) | 含有ヨード |
|---|---|---|
| 昆布・とろろこんぶ | 5 | 10-20mg |
| 昆布出し汁 | 昆布5-10 | 1-2mg |
| ひじき | 5-7 | 1.5-2mg |
| 乾燥ワカメ | 1-2 | 0.8-1.5mg |
| 海苔 | 2 | 0.12ng |
| 寒天 | 10 | 0.20mg |
| いわし | 100 | 0.3mg |
| ぶり | 100 | 0.2mg |
| 塩さけ | 100 | 0.15mg |
| 大豆 | 20 | 0.02mg |
| 白米 | 160 | 0.06mg |
| イソジンうがい液 | 2ml | 14mg |
豊洲で甲状腺の検査を受けるには
豊洲イーウェルクリニックでは、次のように診療しています。ご不安な点は診察時にお聞かせください。
費用の目安
健康保険3割負担の場合の目安です。診察の内容や検査の項目によって変わります。
記載は3割負担の場合の目安です。このほかに処方箋料(約180円)とお薬代がかかります。診療内容により変わります。
よくある質問
橋本病は完治しますか?+
コーヒーはだめ?+
不妊との関係は?+
抗TPO抗体は下げられますか?+
薬は一生飲み続けますか?+
妊娠を希望していますが治療は必要ですか?+
本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断と治療方針は診察のうえで判断します。症状が強いときや長引くときは、記載にかかわらず受診してください。
監修医師 石川 浩雅(豊洲イーウェルクリニック)
本ページの内容は、上記の医師が監修しています。
2006年 国立国際医療センター 初期研修、2008年 同センター 後期研修。2011年 東京医科歯科大学 医療経営政策学。第一生命保険株式会社、株式会社Linc'well/クリニックフォア、医療法人社団シンシアエージェンシーを経て、2025年11月 東京都江東区豊洲に「豊洲イーウェルクリニック」開院。内科・皮膚科・アレルギー科を中心に、小児から泌尿器科領域まで幅広く診療しています。渡航ワクチンの接種にも対応しています。日本渡航医学会、日本旅行医学会、日本内科学会、日本アレルギー学会、日本産業衛生学会 所属。
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