慢性心不全
慢性心不全について
すぐに受診・救急が必要なサイン
慢性心不全は、ふだんは落ち着いていても、短い期間で急に悪くなること(急性増悪)があります。次のような変化は、体に水がたまってきたサインです。次の受診を待たずにご相談ください。
救急車を呼ぶことをためらわないでください
次の場合は、当院ではなく救急外来の受診、または救急要請をご検討ください。夜間・休日も同じです。
慢性心不全とはどんな病気ですか?
慢性心不全(まんせいしんふぜん)とは、心臓が血液を送り出す力が落ちたり、心臓に血液が戻りにくくなったりして、体に必要な血液を十分に送れなくなった状態が続いているものをいいます。ひとつの病名というより、さまざまな心臓の病気の結果として現れる状態です。
わかりやすくいうと、心臓というポンプの力が落ちて、体のすみずみに血液が届きにくくなり、届かなかったぶんの血液が肺や足にたまってしまう状態です。肺にたまれば息切れ、足にたまればむくみになります。
「慢性心疾患」「慢性心臓病」という言い方をされることもありますが、これらは心臓の慢性的な病気全体をさす広い言葉で、慢性心不全はその結果として起こる状態をさします。
専門的には、心臓のポンプ機能が低下したり、心臓に血液が戻りにくくなったりしたために、全身に必要な血液を送り出せなくなった病態と定義されます。心不全は診断名の終着点ではなく、その奥にある心臓の病気を探すための入り口でもあります。
急性心不全との違いは?
急性心不全は、数時間から数日という短い時間で症状が急に強くなり、入院での治療が必要になる状態です。慢性心不全は、その状態が落ち着いたあとも心臓の働きの低下が続いているものをさします。
別の病気ではなく、同じ心不全の違う場面と考えると分かりやすくなります。慢性心不全の方が急に悪くなったときを「慢性心不全の急性増悪」と呼びます。
左心不全と右心不全では症状が違います
心臓の左側(左心)の働きが落ちると、行き場をなくした血液が肺にたまり、息切れ・夜間の息苦しさ・咳といった症状が中心になります。これを左心不全と呼びます。
心臓の右側(右心)の働きが落ちると、血液が全身の静脈側にたまり、足のむくみ・おなかの張り・食欲低下・首の静脈の張りが目立ちます。これを右心不全と呼びます。
実際には、左心不全が進んで右心にも負担がかかり、両方の症状があわさっていることが多くみられます。どちらの症状が強いかは、原因や進み方によって変わります。
どんな症状が出ますか?
はじめは「年のせい」「体力が落ちた」と思われがちで、坂道や階段で息が切れる、靴下のあとが残る、といった変化から気づかれることがあります。
息切れやむくみが代表的ですが、心不全の症状はそれだけではありません。おなかや消化器の症状として現れることもあり、心臓の病気だと気づかれにくいことがあります。
息切れやむくみは、心不全とはかぎりません
息切れやむくみは心不全でよくみられる症状ですが、原因は心臓だけではありません。内科では、まず心臓以外の原因も含めて考えます。
当院ができるのは、この「入り口の見極め」です。心不全が疑われる場合は、循環器を専門とする医療機関へおつなぎします。
原因は?
さまざまな心臓の病気が心不全の原因になります。高血圧や糖尿病が長く続くと、心臓に負担がかかって発症につながることもあります。
背景の病気を管理することは、心不全の予防にも、悪化を防ぐことにもつながります。
どのように経過しますか?治るのですか?
慢性心不全は、悪化と回復をくり返しながら少しずつ進むことが知られています。一度低下した心臓の働きを完全に元へ戻すことは、多くの場合むずかしいとされています。
一方で、原因が弁膜症や不整脈、甲状腺の病気などで、その原因の治療によって心臓の働きが改善する場合もあります。原因を確かめることに意味があるのはこのためです。
治療の目的は、症状をやわらげることと、悪化の波をできるだけ減らすことです。毎日の体重測定と薬の継続が、その一番の手立てになります。
経過は原因や心臓の働きの程度、年齢、ほかの持病によって大きく異なります。ご自身の見通しについては、診療している医師にご確認ください。
検査でわかること
問診と診察
いつからどんなときに息が切れるか、むくみの出かた、体重の変化、夜間の症状などをうかがいます。初診の方には、持病・服薬・飲酒や喫煙・ご家族の病歴も確認します。
診察では、むくみの程度、呼吸の音、首の静脈の張り具合、脈の乱れなどを診ます。
心電図・胸部レントゲン
不整脈や心筋梗塞の跡がないか、心臓が大きくなっていないか、肺に水がたまっていないかを確認します。どちらも当院で当日行い、その場で結果をご説明します。
健診で心電図や胸部レントゲンの異常を指摘された方の再検査にも対応しています。
血液検査
心不全の評価では、BNPやNT-proBNPという、心臓に負担がかかると血液中に増えるホルモンが用いられます。数値が高いほど心臓への負担が大きいことを示す指標とされ、診断や経過の目安になります。
あわせて、貧血・腎機能・電解質・甲状腺の働きなど、息切れやむくみの原因になりうる項目も確認します。
血液検査は外部の検査会社で行うため、結果は当日には出ません。後日の受診またはオンライン診療でご説明します。
心エコー(心臓超音波検査)は当院では行っていません
心臓の動きや弁の状態、心臓の働きの程度(駆出率)を正確に評価するには心エコーが必要です。心エコーは当院では行っていないため、必要な場合は連携する医療機関へご紹介します。
心不全の確定診断と治療方針の決定には、この検査が欠かせません。当院での検査だけで心不全を否定することはできない点をご理解ください。
その先の検査
原因を特定するために、冠動脈CT、心臓MRI、心臓カテーテル検査、ホルター心電図などが行われることがあります。疑う病気に応じて、専門の医療機関で実施されます。
当院で行う検査
心不全は「良くなったり悪くなったり」を繰り返します。悪化の兆しを早くつかむための検査です。
| 検査 | 何を見るか | いつ行うか | 窓口負担の目安(3割) |
|---|---|---|---|
| BNP(またはNT-proBNP) | 心臓にかかっている負担の強さ。悪化をいちばん早くとらえます | 受診のたび、または1〜3か月ごと | 約1,300円〜
(項目数により変わります)
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| 胸部X線 | 心臓の大きさ、肺のうっ血 | 定期的に、悪化が疑われるとき | 約630円
(210点)
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| 心電図 | 不整脈、心筋虚血 | 定期的に | 約390円
(130点)
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| 心エコー | 心臓の壁の動き、弁の状態、駆出率(EF) | 診断時と年1回程度 | 連携医療機関へご紹介 |
| 血液検査(腎機能・電解質・貧血) | 利尿薬の影響、腎機能、貧血の合併 | 1〜3か月ごと | 約1,300円〜
(項目数により変わります)
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横にスクロールできます。金額は3割負担の方の目安で、採血を伴う検査は調べる項目数によって変わります。
毎日の体重測定がもっとも大切な「検査」です。3日で2kg以上増えたらご連絡ください。
診察料の目安
上の検査費用に加えて、診察料がかかります。3割負担の方の目安です。
初診:約870円(291点)/再診:約230円(76点)/処方箋料:約180円(60点)
このほか、慢性の病気で計画的に管理する場合は特定疾患療養管理料や生活習慣病管理料が加わることがあります。薬代は別に薬局でお支払いいただきます。
2026年8月時点の診療報酬にもとづく目安です。実際の金額は行った検査と加算によって変わります。
治療と当院の役割
治療の目的
慢性心不全の治療は、症状をやわらげることと、悪化して入院することを減らすことを目的に行われます。心臓を保護する薬を続けること、うっ血(体にたまった水)を管理すること、背景の病気を治療することの3つが柱になります。
治療方針は、心臓の働きの程度や原因、ほかの持病によって一人ひとり異なります。以下は一般的な内容で、実際の処方は主治医の判断によります。
心臓を保護する薬
心機能が低下した心不全では、次の4種類の薬が治療の柱とされ、あわせて「fantastic four」と呼ばれています。症状をとる薬ではなく、心臓を守り、悪化や入院を減らすための薬です。
うっ血をやわらげる薬(利尿薬)
利尿薬は、余分な水分を尿として出すことで、むくみや息苦しさといったうっ血の症状を軽くします。症状をやわらげる薬で、心臓の働きそのものを改善する薬ではありません。
主な副作用は、効きすぎによる脱水、腎機能の悪化、電解質(ナトリウム・カリウム)の異常、立ちくらみ、こむら返りです。心臓を保護する薬にも、β遮断薬では脈が遅くなる・だるさ、ARNIでは血圧低下やめまい、MRAではカリウムの上昇、SGLT2阻害薬では尿路や性器の感染・脱水といった副作用が知られています。
いずれも体重・血圧・採血をみながら量を調整する必要があるため、自己判断での増減は避け、気になる症状が出たときは処方を受けている医療機関にご相談ください。
薬を自己判断でやめないでください
症状が落ち着いていても、心臓を保護する薬をやめると再び悪化することが多いことが知られています。飲み忘れが続いたとき、体調が悪くて飲めないとき、市販薬を飲みたいときは、自己判断せず医師または薬剤師にご相談ください。
とくに解熱鎮痛薬(NSAIDs)、ステロイド(副腎皮質ステロイド)、漢方薬の一部(甘草を含むもの)は、体に水分やナトリウムをためて心不全を悪くすることがあります。ほかの病気でこれらを処方されるときや、市販薬を使う前にご確認ください。
手術・カテーテル治療・デバイス治療
弁膜症や虚血性心疾患など原因によっては、手術やカテーテル治療、ペースメーカーや植込み型除細動器などのデバイス治療が必要になります。その場合は連携する専門施設へご紹介します。
毎日の記録と生活の管理
体重は、むくみや息苦しさより早く変化が出ます。毎朝、起きてトイレを済ませたあと、同じ服装で測って記録すると、悪化に早く気づけます。
血圧・脈拍もあわせて記録しておくと、受診時の判断に役立ちます。記録は受診の際にお持ちください。
当院がお役に立てる範囲
慢性心不全の診断と治療方針の決定は、循環器を専門とする医療機関が担う領域です。当院は内科として、その手前と、その後の日常を支える役割を担っています。
下記のうちご自身の状況にあてはまるかどうか、また継続的な管理をお引き受けできるかは、症状や治療内容によって異なります。診察時にご相談ください。
すでに他院で治療を受けている方へ
すでに循環器の医療機関で心不全の診断と治療を受けている方について、当院で内服の継続や生活の相談をお引き受けできるかどうかは、治療内容によって異なります。まずは診察時にご相談ください。
ご相談の際は、お薬手帳、直近の検査結果、紹介状(お持ちの場合)をご持参いただくと判断しやすくなります。心臓の働きの程度や、現在の治療方針が分かる資料があると助かります。
なお、心エコーによる定期評価は当院では行えません。専門の医療機関での定期受診は続けてください。
費用の目安
健康保険3割負担の場合の目安です。診察の内容や検査の項目によって変わります。
記載は3割負担の場合の目安で、診療報酬点数から算出しています。このほかに処方箋料(約180円)とお薬代がかかります。血液検査は項目数によって費用が変わるため、診察時にご説明します。心エコーは当院では行っておらず、連携先での実施となるため費用は受診先によって異なります。
よくある質問
慢性心不全は治りますか?+
「慢性心不全」の読み方を教えてください。+
急性心不全と慢性心不全はどう違いますか?+
心不全で吐き気や食欲低下が出ることはありますか?+
心不全でかゆみや皮膚のトラブルが出ることはありますか?+
息切れやむくみがあります。まず何科を受診すればよいですか?+
他院で心不全と診断され通院中です。こちらで診てもらえますか?+
毎日体重を測る意味はありますか?+
塩分はどのくらい控えますか?+
市販のかぜ薬や痛み止めを飲んでも大丈夫ですか?+
息切れやむくみは、心臓以外の原因でも起こります。まず内科で原因を絞り込むところからご相談ください。心電図・胸部レントゲンは受診したその日に行えます。豊洲駅から徒歩3分、土日も診療しています。
本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断と治療方針は診察のうえで判断します。症状が強いときや急に悪化したときは、記載にかかわらず受診してください。慢性心不全の確定診断と治療方針の決定は、心エコーなどの検査が可能な医療機関で行われます。
監修医師 石川 浩雅(豊洲イーウェルクリニック)
本ページの内容は、上記の医師が監修しています。
2006年 国立国際医療センター 初期研修、2008年 同センター 後期研修。2011年 東京医科歯科大学 医療経営政策学。第一生命保険株式会社、株式会社Linc'well/クリニックフォア、医療法人社団シンシアエージェンシーを経て、2025年11月 東京都江東区豊洲に「豊洲イーウェルクリニック」開院。内科・皮膚科・アレルギー科を中心に、小児から泌尿器科領域まで幅広く診療しています。渡航ワクチンの接種にも対応しています。日本渡航医学会、日本旅行医学会、日本内科学会、日本アレルギー学会、日本産業衛生学会 所属。
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内科・皮膚科・アレルギー科・泌尿器科を中心に、健康診断や予防接種、オンライン診療まで対応しています。
