亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎について
この記事の要点
亜急性甲状腺炎とは? — 甲状腺の風邪のような病気
亜急性甲状腺炎は『甲状腺の風邪』のような病気で、多くは2–8週間前の上気道炎(のどの痛み・発熱・咳)をきっかけに、強い前頸部(甲状腺)の痛みで発症します。炎症で壊れた甲状腺から貯蔵ホルモンが一気に漏れ出すため、最初は“甲状腺中毒症状”が出現し、その後一時的に甲状腺機能低下に移行してから自然回復するのが典型です。
亜急性甲状腺炎の症状 — 首の痛み・微熱・動悸・痩せる
首の前側の痛みが最も特徴的な症状です。つばを飲み込むと痛む、上を向くと痛む、触るだけで飛び上がるほど痛い、という訴えになります。片側から始まり、数日から数週間で反対側へ移っていくことがあり、これは他の病気ではあまり見られない動き方です。
炎症で壊れた甲状腺からホルモンが一気に漏れ出すため、はじめは甲状腺ホルモンが多すぎる状態(甲状腺中毒症)になります。動悸、汗をかきやすい、手のふるえ、食べているのに体重が減るといった症状が出ます。「亜急性甲状腺炎で痩せる」のはこのためで、炎症が治まれば体重は戻ります。
微熱から38度台の発熱と、強い倦怠感をともないます。頭痛を訴える方も多く、熱と炎症にともなうもので、経過とともに軽くなります。
のどの痛みや発熱から始まるため、かぜとして経過を見られていることが少なくありません。「かぜのあと、首の痛みだけが残って強くなった」というときは、この病気を考えます。
甲状腺が痛いと咳が出る? — 咳との関係
「甲状腺 咳」と調べて来られる方が多くいらっしゃいます。順序を分けてご説明します。
亜急性甲状腺炎は、かぜのあとに起こることが多い病気です。発症の2〜8週間前にのどの痛み・発熱・咳があった、という経過をたどります。つまり咳が先にあって、そのあとに首の痛みが出るのが典型で、咳そのものは甲状腺の症状ではありません。
ただし炎症が強いときは、のどの違和感や、咳払いをしたくなる感じが出ることがあります。甲状腺は気管のすぐ前にあるため、腫れが刺激になるためです。
甲状腺の腫れが大きいと、気管が圧迫されて咳や息苦しさが出ることがあります。これは亜急性甲状腺炎よりも、大きな甲状腺腫や結節でみられる状況です。
甲状腺機能低下症でも、声のかすれや咳払いが増えることがあります。咳が長引いていて、首の腫れや痛み、動悸、体重の変化をともなうときは、甲状腺の検査を行います。
甲状腺中毒症状への対症療法
β遮断薬(プロプラノロール等):動悸・手のふるえが強いときに短期追加。
治療経過を観察するために2〜4週間ごとに通院フォローを行います。
甲状腺ホルモンは、はじめは高くなりますが、経過とともに正常に戻ります。一部は正常までしない場合もあります。

こんなときは早めに受診してください
次のような症状があるときは、様子を見ずにご相談ください。当院の診療時間外の場合は、救急外来の受診もご検討ください。
検査
亜急性甲状腺炎の診断 — 触診・エコー・血液検査
診察でその部位を押すと強く痛むことと、エコーで特徴的な所見があることが揃えば、亜急性甲状腺炎と判断してその場で治療を始められます。血液検査は診断を確かめるためのもので、結果を待たずに治療を開始します。
触診。甲状腺を押したときの痛みと、どちら側が痛むかを確認します。この病気では痛む場所がはっきりしています。
頸部エコー。痛みのある部位が黒く(低エコーに)見えるのが特徴です。ベッドサイドで行い、所見はその場でご説明できます。
血液検査。炎症反応(CRP・赤沈)が高くなり、甲状腺ホルモン(FT4)が高く、TSHが低くなります。甲状腺の血液検査は外部の検査会社で行うため、結果は数日〜1週間後にご説明します。
バセドウ病と紛らわしいことがありますが、痛みがあるかどうか、エコーで血流が増えているかどうかで見分けます。判断に迷う場合はTRAbという抗体も調べます。
当院で行う検査
首の痛みと発熱で受診されることが多い病気です。血液検査とエコーで診断します。
| 検査 | 何を見るか | いつ行うか | 窓口負担の目安(3割) |
|---|---|---|---|
| 甲状腺機能(TSH・FT4・FT3) | 一時的にホルモンが漏れ出て高くなります | 診断時と経過中 | 約1,300円〜
(項目数により変わります)
|
| 炎症の検査(CRP・赤沈) | 炎症の強さ。亜急性甲状腺炎では高くなります | 診断時 | 約1,300円〜
(項目数により変わります)
|
| 甲状腺エコー | 痛いところに一致する低エコー域。診断の決め手になります | 診断時 | 約1,590円 |
横にスクロールできます。金額は3割負担の方の目安で、採血を伴う検査は調べる項目数によって変わります。
経過中に一時的な甲状腺機能低下を経て、多くは数か月で自然に治ります。
診察料の目安
上の検査費用に加えて、診察料がかかります。3割負担の方の目安です。
初診:約870円/再診:約230円/処方箋料:約180円
このほか、慢性の病気で計画的に管理する場合は特定疾患療養管理料や生活習慣病管理料が加わることがあります。薬代は別に薬局でお支払いいただきます。
2026年8月時点の診療報酬にもとづく目安です。実際の金額は行った検査と加算によって変わります。
治療
亜急性甲状腺炎過ごし方 — 安静・入浴・運動・仕事
このページで最もよくお読みいただいている項目です。具体的にご説明します。
安静。炎症が強い時期(痛みと熱がある1〜2週間)は、できるだけ横になって休んでください。甲状腺ホルモンが多く出ている状態では、じっとしていても心臓が働きすぎているため、そこに運動を重ねると負担が大きくなります。
運動。痛みと熱があるあいだは中止してください。ジョギングや筋トレなど脈が上がる運動は、動悸が治まるまで避けます。散歩程度から少しずつ戻していきます。
入浴。炎症が強く熱があるあいだは、シャワーで済ませてください。長い入浴やサウナは脈を上げ、体力も消耗します。熱が下がって痛みが軽くなれば、ふつうに入浴して構いません。
飲酒。炎症が強い時期と、痛み止めやステロイドを飲んでいるあいだは控えてください。ステロイドと一緒だと胃を荒らしやすくなります。
仕事。デスクワークであれば、痛みと熱が落ち着けば復帰できます。ただしだるさは思ったより長く残ります。立ち仕事や体を使う仕事は、動悸が治まってからにしてください。診断書が必要な場合はご相談ください。
食事。とくに制限はありません。ヨードを避ける必要もありません。発熱があるあいだは水分をしっかりとってください。
首を冷やすと痛みが楽になる方が多くいらっしゃいます。タオルで包んだ保冷剤を当ててください。温めると痛みが強くなることがあります。
治るまでの期間と、再発(繰り返す)ことはあるか
多くは2〜4か月で自然に治ります。ただし一本調子ではなく、次のような段階をたどります。
第1段階(数週間)。甲状腺が壊れてホルモンが漏れ出し、動悸・発汗・体重減少といった中毒症状が出ます。痛みと熱もこの時期です。
第2段階(数週間〜数か月)。漏れ出すホルモンが尽き、今度は一時的に甲状腺機能低下になります。だるい、寒い、むくむ、体重が戻る、という時期です。「良くなってきたのに今度はだるい」のはこのためで、悪化ではありません。
第3段階。甲状腺が回復し、ホルモンが正常に戻ります。
この経過をみるために、治ったあとも数か月ごとの採血をお願いしています。1割前後の方では、甲状腺機能低下症が残ることが知られており、その場合は補充の薬が必要になります。
再発(繰り返す)ことはあまりありません。報告では数%程度とされています。ただしステロイドを早く減らしすぎると、痛みがぶり返すことがあり、これは再発ではなく、減らし方の問題です。自己判断で中止せず、決められた減らし方を守ってください。
首の痛みをくり返す場合は、亜急性甲状腺炎ではない別の原因(慢性甲状腺炎の急性増悪、嚢胞内出血など)も考えます。
亜急性甲状腺炎の治療 — 痛みと炎症を抑えます
甲状腺そのものを治す薬はありません。炎症は時間とともに治まるため、その間の痛みと熱を抑えることが治療の目的です。抗菌薬は効きません(細菌の感染ではないためです)。
ステロイドはよく効くため、飲み始めると数日で痛みが消えます。そこで自己判断でやめてしまい、ぶり返すというのがいちばん多いつまずき方です。減らし方は必ずご相談ください。
豊洲で甲状腺の痛みを相談するには
豊洲イーウェルクリニックでは、次のように診療しています。ご不安な点は診察時にお聞かせください。
費用の目安
健康保険3割負担の場合の目安です。診察の内容や検査の項目によって変わります。
記載は3割負担の場合の目安です。このほかに処方箋料(約180円)とお薬代がかかります。診療内容により変わります。
よくある質問
亜急性甲状腺炎になりやすい人は?+
亜急性甲状腺炎は完治するまでにどれくらいの期間がかかります?+
亜急性甲状腺炎は完治しますか?+
ほかの人にうつりますか?+
仕事は休んだほうがよいですか?+
治るまでどのくらいかかりますか?+
甲状腺の検査(採血・エコー)は当日行えます。血液検査の結果は数日〜1週間後にご説明します。土日も診療しています。WEB・LINEから24時間ご予約いただけます。
本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断と治療方針は診察のうえで判断します。症状が強いときや長引くときは、記載にかかわらず受診してください。
監修医師 石川 浩雅(豊洲イーウェルクリニック)
本ページの内容は、上記の医師が監修しています。
2006年 国立国際医療センター 初期研修、2008年 同センター 後期研修。2011年 東京医科歯科大学 医療経営政策学。第一生命保険株式会社、株式会社Linc'well/クリニックフォア、医療法人社団シンシアエージェンシーを経て、2025年11月 東京都江東区豊洲に「豊洲イーウェルクリニック」開院。内科・皮膚科・アレルギー科を中心に、小児から泌尿器科領域まで幅広く診療しています。渡航ワクチンの接種にも対応しています。日本渡航医学会、日本旅行医学会、日本内科学会、日本アレルギー学会、日本産業衛生学会 所属。
診療のご案内
内科・皮膚科・アレルギー科・泌尿器科を中心に、健康診断や予防接種、オンライン診療まで対応しています。
